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発症まもない頸髄損傷患者さん[後編]研究結果からみる実践したいケア【看護研究からわかる患者さんのこころの中:第30回】
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発症まもない頸髄損傷患者さん[後編]研究結果からみる実践したいケア【看護研究からわかる患者さんのこころの中:第30回】
【第29回】発症まもない頸髄損傷患者さん[前編]研究から明らかになったこと 患者さんの「生きようとする力」を信じ、それを支える看護を行う ケアのポイント●看護師の観察やケアが苦痛となっている場合もあり、テクニカルスキル・内容・タイミングが最適になるように看護する●日常生活のささいなことでも自分自身でできるように援助し、ふだんの生活に近づけるように看護する●患者さんにとって精神的な支えとなる家族の思いが、患者さんに伝わるように支援する 発症まもない頸髄損傷患者さんの「生きようとする力」を支援するためには、「生きようとする力」に影響する要因を理解するとともに、失わせている要因である身体的苦痛を体位、ケア、薬剤などで軽減する看護が重要です(下記参照、文献1を参考に作成)。 このブロック以降のコンテンツは非表示になります 「生きようとする力」を失わせている要因に対する看護 ①障害の回復が困難であることの自覚 ●発症まもない時期は、回復する可能性が少ないことは伝えなかった●患者さんから動けるようになるか尋ねられたときは、「今は治療中なので、もう少し経過を見ましょう」と答えた●患者さんが、回復する可能性は少ないことを理解しても、「治るかもしれない」と言われたときは「私もそうなってほしいと思う」と答えた 看護支援のポイント●発症まもない時期で、死をも考えるときに回復が困難であることをそのまま伝えることはよい結果にならないことがある●励ますために安易に「治りますよ」と言ってはいけない●患者さんによって受け止め方や望みは違うので、そのつどどのように患者さんに説明するのがよいのか、チームで検討する●患者さんの回復への希望は、単純に受容できていないと捉えるのではなく、支えとなっている希望である場合もあるので否定はしない ②身体的苦痛 ●痛み・しびれについては、医師と薬剤の調整を行い、積極的に使用した●患者さんによっては「触られるだけで痛い方」「マッサージすると軽減する方」「手浴が効果がある方」「手袋がよい方」などさまざまで、それぞれの患者さんが効果があると言われた方法を実施した●全身状態の観察、体位変換、清潔援助、呼吸器合併症予防の援助など、看護ケアの必要性の説明を行った●苦痛が強いときは観察やケアを拒否されることもあったため、タイミングや方法を変更した 看護支援のポイント●痛み・しびれは医師と調整し、少しでも効果のある薬剤を使用する●患者さんにとって効果のある看護ケアを患者さんとともに模索し、実施する●患者さんにとって苦痛となる看護ケアを行うときは、必要性を十分に説明する●苦痛を伴う看護は、最小限の苦痛で行えるようにテクニカルスキルを向上させる●苦痛を伴う看護ケアを過剰に実施しすぎていないか、方法は適切か、常に検討する 「生きようとする力」を引き出している要因に対する看護 ①食事 ●誤嚥に気をつけながら、可能な限り早期から開始した●臥位姿勢でも、食べるものを見てもらう、重湯であってもお椀に入れる介助を行った●可能な場合は、好きなものを家族に差し入れしてもらうようにお願いした 看護支援のポイント●病態的に可能な限り、早期から経口摂取を開始する●可能な限り患者さんの要望を取り入れ、入院前の食事に近い内容にする●食事場面を楽しんでもらえるように、工夫して介助する ②睡眠 ●熟睡感が得られるように、主治医と眠剤・鎮痛剤・鎮静剤などの薬剤の調整を行い、積極的に使用した●熟睡感が確保できるように、看護師の観察やケアのタイミングを可能な範囲で調整した 看護支援のポイント●熟睡感が得られるように、薬剤の調整や看護師の観察やケアのタイミングを検討する●不眠の原因をアセスメントし、可能な限り解決できるように看護する ③視界が広がる ●主治医の許可が出たらすぐにギャッチアップ座位を行った●臥位時に家族の写真が見えるようにした●ベッドに臥床した状態や車椅子で、病院の外に出て空や木を見せた 看護支援のポイント●病態的に可能な限り、早期から座位姿勢にする●患者さんの病態で可能な、視界を広げられる方法を検討する ④自分でできる ●ナースコールが自分で鳴らせるように、ブレスコールやタッチコールなど患者さんに可能な方法を採り入れた●チューブを使って自力で水分がとれるようにセッティングした●可能な範囲で、自分でパンを持って食べてもらったり、スプーンを持てるように工夫をした 看護支援のポイント●上肢の運動能力は個人差があるため、それぞれの患者さんのできる能力に合わせて可能なことは自分でできるように支援する ⑤家族や看護師の生きようとしてほしいとの思いを感じる ●患者さんにとって精神的な支えとなる家族に対して、患者さんに思いを伝えられるように支援した●家族から患者さんへの思いを聞き出し、患者さんに家族が言っていたことを伝えた●死を考えてもしかたがない状況であることを共感しながらも、過去に立ち直っていった患者さんの話などをして、乗り越えてほしいとの思いを伝えた 看護支援のポイント●家族の患者さんへの思いが伝わるように、家族の言葉を引き出し、伝える●看護師が、楽になってほしい、生きようと思えるようになってほしいという思いで、看護ケアを行う * 私たち看護師のケアによって患者さんの「生きようとする力」を引き出すこともできれば、失わせることもあります。看護師は発症まもない頸髄損傷患者さんの苦悩を理解できるように努め、少しでも楽になってほしい、生きようと思えるようになってほしいと思い、看護ケアをすることです。 また、生きようと思うことが不可能であると考えられる場合でも、看護師はその人に「生きようとする力」があることを信じて待ちつづけることも大切です。 引用文献1.日坂ゆかり:急性期の頸髄損傷患者の体験と生きようとする力に影響を及ぼす看護ケア.日本クリティカル看護学会誌 2010;6(3):46-54. 小児がんの患者さん[前編]研究から明らかになったこと【看護研究からわかる患者さんのこころの中:第31回】(2月28日配信予定) この記事は『エキスパートナース』2017年7月号連載を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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腹痛の患者での画像を見るポイント⑧異所性妊娠破裂、上腸間膜動脈塞栓症の鑑別【最終回】
ワケがあって医師がオーダーしている画像検査。でも、医師は何を想定してどこを見ているの?白黒でなんだかよくわからないけれど、看護にはどう役立つの? 臨床場面でナースがとりたい画像からの情報をわかりやすく示します。 【第1回】医師が画像をチェックする理由は?【第47回】腹痛の患者での画像を見るポイント①前提となる知識「画像」の関連記事はこちら 【最終回】腹痛の患者での画像を見るポイント⑧異所性妊娠破裂、上腸間膜動脈塞栓症の鑑別 異所性妊娠破裂 HCG(human chorionic gonadotropin:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)陽性の腹痛でショックを疑うような場合には積極的に疑います。 エコーなどで腹水があれば破裂をさらに積極的に疑い、造影CTなど画像検査で確定診断を行います。 破裂した部位からの出血で出血性ショックとなるため、早急な止血術が必要です。 ここをチェック●出血性ショックでは末梢血管が締まっていて、点滴の滴下速度が遅くなることがある。また、輸血や昇圧剤の使用も考えられ、点滴ルートは2本以上が必要●針は太い針で、肘正中皮静脈など太い血管を狙うようにする このブロック以降のコンテンツは非表示になります 上腸間膜動脈塞栓症 心房細動があったり血栓リスクの高い高齢者の腹痛で考えます。 この場合、圧痛はないのにやたらと痛みが強い腹痛が特徴となります。痛みは間欠痛ではなく持続痛のはずです。「痛みが今より強いときがあったか」「今より痛みが和らいだことがあったか」のどちらかがYesなら間欠痛を疑います。 ここで「ずっと痛いですか?」と聞くと、患者さんは「(昨日から痛みがあったから間欠的だけど)ずっと痛いです!!」と答えます。これは必ずしも持続痛ではありません。間欠痛かどうかを聞くにはコツがあるのです。 なお、上腸間膜動脈は細い動脈のため、疑っていないと見逃しやすいかもしれません。見逃しやすいものは、読影の専門医に見てもらう、複数人でチェックするなどの対策が必要です。 ここをチェック●血栓ができやすいかどうかのリスクをチェックする●心房細動、長期臥床、精神疾患、ピルを飲んでいる、過去の血栓症などはリスクファクターになる この記事は『エキスパートナース』2019年5月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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血液透析(HD)③帰室後に行いたいケア【検査・治療の帰室後注意!:第9回】
別部門での検査・治療から帰ったあとに起こる変化は意外と多い!担当ナースとしておさえておきたい、「帰室時の状態」や「異常への対応」をわかりやすく紹介します。 【第1回】心臓カテーテル検査①検査を受けるとき・帰室後の状態【第7回】血液透析(HD)①血液透析をうけるとき・帰室時の状態【第8回】血液透析(HD)②帰室後急変・急性合併症 透析中の負担を軽減する このブロック以降のコンテンツは非表示になります 健常人であれば、通常24時間休まない腎臓のはたらきによって緩徐に行われる血液の浄化を、透析患者は“週3日の4時間(個々で異なる)”で実施するため、その際の急激な内部環境の変化は想像を絶します(【第7回】・図1参照)。 ふだん何ごともなかったように週3回の透析治療をこなしている患者の内部環境は、じつは劇的に変化し、身体はそれに反応し、恒常性を保っていることを忘れてはいけません。 このことを認識して、透析中はもちろん透析後も患者への余分な負担は避けたいものです。看護師の役割は患者のエネルギーの消耗を最小にすることです。 体重増加を抑える(除水量を増やさない) 透析患者にとって透析による内部環境の変化は避けられないとはいえ、その変化を最小に留めることが、患者の身体の負担を減らすことにつながります。そのためには透析と透析の間の生活に最も重要なケアのポイントがあります。 透析による体液量の変化は循環動態に大きく影響します。除水量が多いと心負荷が増し、血圧低下により虚血性心疾患などを引き起こす危険性も増します。透析での除水量を少なくするために透析間の体液量の増加をできるだけ少なくすることが、透析中の血圧低下のリスク軽減につながります。 一般に透析間の体重増加のめやすは、「中1日で目標(基礎)体重の3%以内」「中2日で5%以内」とすることが望ましいと言われています。簡単に言ってしまうと“体重増加を抑えること”ですが、安易に体重増加を抑えようと食事量を減らしたりすることは、低栄養や脱水状態を招きかえって危険です。必要栄養量はしっかりと確保し、水分量を少なくする工夫が必要になります。 尿量のある患者であればその調節はしやすくなりますが、無尿の場合は水分や重量の少ない食品を選んだり、水分過多の要因の1つである塩分過剰を避けることも重要なポイントです。 また、入院中には血管確保をする必要があったり、食欲不振で補液する必要が生じることがよくあります。その際の補液量が過剰にならないように、医師と十分に相談する必要があります。 次の透析までの期間にも注意(心臓突然死や不整脈) 透析患者は、無尿・乏尿の場合、透析間で体液が増加します。透析により是正された電解質バランスも透析間に崩れ、特に中2日空く週の始めには、高いリスク状態にあると考えられます。心臓突然死は、透析開始後12時間と、前回の透析から36~48時間後に高頻度で発症するとされ1、透析間のリスクを念頭に置き観察することが重要になります。 透析間の体重増加、血圧の変化、採血結果など総合的にアセスメントすることが必要です。 透析患者さんの負担は想像以上 日本透析医学会統計調査2によれば、2022年の透析患者の平均年齢は69.87歳で、透析患者の高齢化が年々進んでいます。 高齢化に伴い、合併症や既往症などもあいまって、透析患者の病態は複雑化し、一見、透析を何事もなく慣れた仕事をしてきたようにこなす患者でも、その実、大変な仕事量をこなしてきたと思っていいでしょう。 本項で述べたように、透析中は劇的に内部環境が変化し、体外循環である治療中は、患者にとっても透析スタッフにとっても気を抜くことのできない、緊張の張りつめた数時間となります。 さらに透析間の生活では水分や食事に留意することが求められるわけですから、透析生活を一生涯継続する患者の苦労は並大抵のものではなく、本人でなければ理解できない苦労もあると思います。 患者の気持ちを完全に理解することができなくても、その大変な患者の苦労について想像しようとすれば、おのずと透析患者を看る目がやさしくなり、いたわりの感情が湧きます。 複雑な病態を敬遠することなく患者と患者の生活を見つめてみれば、透析患者への理解が深まります。 引用文献1. 社団法人 日本透析医学会:血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン.日本透析医学会雑誌 2011;44(5):383.2. 一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会:図説 わが国の慢性透析療法の現況.http://docs.jsdt.or.jp/overview/(2024.8.9アクセス) 参考文献1. 日髙寿美 編,小林修三 監修:まるごと図解 腎臓病と透析.照林社,東京,2017. 【第10回】脳アンギオ①脳アンギオを受けるとき・帰室時の状態(2月14日配信予定) この記事は『エキスパートナース』2017年12月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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