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腎不全の終末期ケア:告知・臨死期・死亡時の看護のポイントを解説
腎疾患(CKD)の終末期ケアのポイントは?告知から死亡退院時の各時期における、看護師に求められる役割を解説します。 患者設定 ●Cさん 83歳男性●原疾患は慢性糸球体腎炎で、末期腎不全(ESKD)の状態。●10年以上前からCKDと診断されて以来、食事管理、水分管理、服薬管理、血圧測定などの自己管理を徹底し、1日も欠かさず記録をつけてきた。●妻も「透析をしなくても済むように」と言い、療養生活にとても協力的であった。●昨年に妻が急逝した後、Cさんの腎機能の悪化が、著明に検査データに現れるようになった。その後の自己管理の支援は長女が行っている。●ある日、心不全悪化のため救急搬送され、一時的に利尿薬と血液濾過透析(HDF:hemodiafiltration)の治療を受けることによって呼吸困難は改善したが、尿毒症による倦怠感、食欲不振、全身のかゆみの症状は継続している。●病院ではACPが何度も行われ、腎代替療法についての説明が本人と長女に行われたが、長年にわたって透析治療に入らないように努力し続けたこともあり、今後は透析をすることなく過ごしたいという希望があった。 腎不全の終末期の概要 腎不全は2011年の日本腎臓病学会の調査によると、全国に約1330万人存在し、成人の8人に1人が慢性腎臓病(CKD*1)患者とされ、国民病とも言われています1。今日ではさらに増加していることが予想されます。 CKDは無症状で進行することが特徴であり、症状とeGFR*2(推算糸球体濾過量)の数値によってステージ1~5に分類され、自覚症状が出現したときにはかなりの腎機能の悪化が認められます。進行性に腎機能の低下がみられ、eGFRがおおよそ15mL/min/1.73m2未満に至った時点でCKDステージ5となり、末期腎不全(ESKD*3)となります。 *1【CKD】chronic kidney disease*2【eGFR】estimated glomerular filtration rate*3【ESKD】end stage kidney disease こちらもチェック!●3学会合同の『腎不全患者のための緩和ケアガイダンス』が公表 腎不全の余命告知時における看護師の役割は? ポイント●看護師が患者さん、家族、医療チームをつなげるコーディネーターとなる。●今後の方針、特に患者さんが腎代替療法を望まない場合などについて十分に説明を行う。 腎不全患者へ腎代替療法を導入するか見合わせるかなどの治療方針の話し合いは、CKDステージ5の時点から開始することが多いです。看護師が医療チーム(担当医師、看護師、臨床工学技士など)のコーディネーターとして、患者さんとその家族への意思決定支援・情報提供、患者さんと医療チーム間・患者さんと家族間のコーディネーション技術を発揮する必要があります。 Cさんと家族には、その選択に応じて説明を行います。Cさんと家族には、その選択に応じて説明を行います。 まず延命を目的とする場合には、治療方法を血液透析・腹膜透析・腎移植から選択し、治療を継続する必要があることを説明します(図1・『透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言』p.214「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」参照」)3。 そして、腎代替療法を開始した場合と見合わせた場合、それぞれの利益や不利益について説明を行います。 図1 末期腎不全時の治療法選択と保存的療法 また、腎代替療法を選択しない場合の患者さんには、透析の見合わせ後に出現が予測される症状と予後について、十分説明を行います(表1)。 表1 CKD患者が保存的療法を選択した場合に起こりうる症状(尿毒症状) ●意識障害 ●全身倦怠感 ●呼吸困難●肺水腫 ●不整脈 ●心不全●嘔気 ●食欲不振 ●皮膚掻痒感●レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群) ●うつ ●不眠 ●不安 腎不全の余命告知時~看取り期における看護師の役割は? ポイント● 透析開始時の必要な支援について、わかりやすく説明する。● 透析を中止した場合のリスク説明を行い、患者さんが望む治療とケアができるように支援する。 他疾患と比較した、腎疾患の終末期の特徴 看護師は、Cさん家族に各治療がどのようなものであるか理解できるよう、図3のように、写真や図で視覚化したものでわかりやすく説明します。特に高齢者の場合、透析のための通院手段の確保が必要なこと、透析生活を送るためのセルフケアは医療従事者や家族の支援が必要になることを伝える必要があります。 高齢者は加齢変化や慢性病と身体障害を併せもつことが多いため2、若年者に比べて安定した透析治療を継続することが困難な場合も多くみられます。腹膜透析(CAPD*4)は、カテーテル管理やバッグ交換などセルフケア能力を高く求められる治療であり、家族や訪問看護師の協力が必要です。 また維持透析中であっても、シャントのトラブルやさまざまな合併症の出現により、毎回の透析治療で患者さんにとって苦痛が生じるようになり、余儀なく治療を中止する場合があります。なお、「CKM(保存的腎臓療法)を選択して透析を見合わせた場合、数日から数週で死亡する可能性が高い」3と言われています。 透析を中止した場合、おおよそ1週間~10日前後で死に至るといわれており、尿毒症状が進行し、尿毒症状が強く出た際に、再度腎代替療法を行う患者さんも多く存在します。そのため、他疾患と比較して意思決定の変更が多いといわれています。 これらのことを看護師は十分理解したうえで、患者さんとその家族の意思決定支援を行っていきます。腎代替療法の選択や透析治療の非導入については、患者さんがもつ価値観と、「どのように生きていきたいか」という想いを最大限に尊重します。また、意思決定には気持ちの揺らぎがつきものであり、どのような結果になってもその揺らぎの気持ちに最大限寄り添い、緩和ケアを含めて本人が望む治療とケアができるように支援する必要があります。 終末期を自宅で過ごすことを望んだ場合は、病院の地域連携室を通じて在宅医および往診医、地域の訪問看護ステーション、ケアマネジャー、訪問薬剤師などと連携を確保し、本人と家族が安心して療養生活を送ることができるように支援します。 このブロック以降のコンテンツは非表示になります 保存的療法を選択した場合の援助ポイント CKMを選択した場合は、Cさんの価値観を本人や家族と共有し、希望に沿った生き方ができるように支援していきます。 会いたい人に会う、体調に合わせて行きたいところに行くなど、入院している状態であっても、訪問看護ステーションと連携し、一時退院して自宅で過ごすことができるなど、さまざまな本人の願いを、可能な範囲で支援することがポイントとなります。自宅で過ごす場合は、地域連携室やケアマネジャー、地域の福祉サービスに相談し利用することも考慮します。 腎不全の臨死期における看護師の役割は? ポイント●透析中止後の身体症状をよく観察し、適切な処置を行う。●繰り返し意思決定支援を行い、患者さん・家族間で意思のズレがないか確認する。 腎不全症状の緩和 腎不全で尿量が減少すると、体液量の貯留により胸水や心嚢水、浮腫などの溢水状態になり、強い呼吸困難が生じます。過剰な体液量によって生じる呼吸困難は、患者さんにとって耐えがたい苦痛を感じる症状であるため、点滴は使用せず、下記-①が主な治療法となります。腎機能が低下しているため、腎排泄であるオピオイドの使用が難しい現状があります。 尿毒症による食欲低下や嘔気に対しては、下記-②のようにします。そのために、制吐薬や胃薬が処方される場合もあります。 かゆみに対しては、下記-③、倦怠感に対しては下記-④、痛みやしびれに対しては下記-⑤のように対応します。 腎不全の症状への対応①呼吸困難●過剰な水分摂取や塩分摂取を避ける●酸素投与や利尿薬を使用する ②食欲低下、嘔気●カリウムの多い食べ物を避ける●患者さんが好む喉ごしがよいものを少量ずつ摂取できるようにする ③かゆみ●外用薬(保湿剤やステロイドの軟膏など)、抗アレルギー薬、ステロイドの内服薬を使用する ④倦怠感●原因となる腎貧血を改善する ⑤痛み・しびれ●NSAIDs*5を使用する *5【NSAIDs】non-steroidal anti-inflammatory drugs:非ステロイド性抗炎症薬 揺らぐ気持ちに寄り添う 透析はしないと決めた患者さんであっても、苦痛症状に耐えることができずに透析導入を希望することもあります。看護師が患者さんの揺らぐ気持ちに寄り添いながら、繰り返し意思決定支援を行い、治療方針の変更となった場合に対応できるように、医療チームで話し合っておく必要があります。 また、本人の意思決定と家族との意思決定に方向性のずれが生じていないかを確認します。CKD患者は腎排泄型の薬剤の使用ができない、または減量して使用する必要があり、保険上の(適用外使用になるという)問題もあります。そのため、がん患者のようにさまざまな緩和に対する治療薬を使用することが困難な現状があります。尿毒症で苦しんでいる患者さんを見て、本人は透析をしないと望んでいても、家族が耐えられないという思いを表出されることも考えられます。 本人の意思を十分に表現することが困難になったとき、家族に意思決定が委ねられる場合があります。看護師は、一番近くで家族の思いに寄り添って傾聴し、思いを理解し、ときには代弁者となることが求められます。このようなときに備え、本人がどのように生きていきたかったのかを医療チームで対話を重ねることができるよう、調整していく必要があります。家族とともにCさんの価値観を共有し、尊厳ある生き方ができるように支援していきます。 腎不全の死亡時における看護師の役割は? ポイント●長い闘病生活は、家族の支援があったからこそ続いてきたことを伝え、ねぎらう。 家族がお別れの言葉や感謝の言葉を伝えることができるように、十分時間をとるための環境調整を行います。Cさんの場合は、CKDと診断されてから数年が経過していました。妻との闘病生活、また妻が亡くなった後も娘がCさんの自己管理の支援を行い、ともに療養生活を歩んできた長い時間があります。どんな形であれ、家族の支援があったからこそ最期のときを迎えたということを伝え、ねぎらいます。 死亡が確認された後は、家族にともにエンゼルケアを行うことができることを伝えます。自宅で療養していた場合は、訪問看護師からすみやかに亡くなった旨を往診医に伝えます。 腎不全の死亡退院時における看護師の役割は? ポイント●退院までの時間が穏やかなものとなるよう、環境を整える。 家族が落ち着いた様子を見計らい、葬儀会社に連絡してもらうように伝えます。 葬儀会社が迎えに来るまで、故人と家族との穏やかな時間が保てるように環境調整を行います。自宅の場合はケアマネジャーに連絡し、介護サービスの停止を伝えます。 (第7回) 引用文献1.日本腎臓病協会ホームページ:慢性腎臓病について.https://j-ka.or.jp/ckd/(2026.3.19アクセス)2.日本腎不全看護学会編:腎不全看護 第5版.医学書院,東京,2016:213.3.透析開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会:透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言.日本透析医学会雑誌 2020;53(4):187,214.https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/2401/透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言(透析会誌53(4)173-217.2020).pdf(2026.3.19アクセス) 参考文献1.松田能宣,山口崇編:これからはじめる 非がん患者の緩和ケア 第2版.じほう,東京,2023.2.平原佐斗司編著:チャレンジ! 非がん疾患の緩和ケア.南山堂,東京,2011.3.日本透析医学会編:透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言.日本透析医学会雑誌 2020;53(4):173-217.4.日本腎不全看護学会編:腎不全看護 第5版.医学書院,東京,2016.5.在宅医療助成 勇美記念財団ホームページ:在宅医療テキスト(第3版)第5章 在宅緩和ケア.2015.http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/textbook/chapter/5(2026.3.19アクセス) この次に読まれている記事●3学会合同の『腎不全患者のための緩和ケアガイダンス』が公表●【連枝まとめ】ナースができる終末期ケア●【連載まとめ】非がん患者への緩和ケア●そのほかの連載はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2023年10月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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