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頭蓋内圧亢進で注意すべき脳ヘルニアの症状と対応ポイント
頭蓋内圧亢進が進むと起こる脳ヘルニアについて、症状やメカニズムを紹介。意識障害、瞳孔所見、バイタルサインなどの観察ポイントや、適切な対応方法もわかりやすく解説します。 観察のポイント脳ヘルニア●脳ヘルニアの種類と発生部位●意識レベル(JCS/GCS)●異常肢位の種類●瞳孔所見●バイタルサインの変動↓気づきたいポイント●急激に意識レベルが低下している●刺激を与えるとのけぞるような姿勢をする●瞳孔不同や、対光反射の消失を認める●不規則な呼吸をしている●血圧が高くなっている 脳ヘルニアの症状・徴候は? 私たちヒトの脳は頭蓋骨という硬い骨で囲まれており、外部からの衝撃に対して守られています。それに対して、頭蓋骨の中は「脳実質」「脳血管」「脳脊髄液」などで満たされ、一定の圧で納められている閉鎖空間となっています(図1-①)。 ここに、頭蓋内に出血や腫瘍などの新たな病変が出現すると、頭蓋内の圧力は逃げ場がなく、上昇していきます。頭蓋内圧が亢進すると、初めは静脈血液や脳脊髄液が頭蓋内から排除されたり、頭蓋内への流入が抑制されたりすることで、急激な頭蓋内圧の上昇を防ごうとする代償作用が生じます。しかし、病変がさらに拡大すると代償作用が限界に達し、脳組織の萎縮が生じたり、頭蓋内圧の低い部分へ脳組織が押し出されたりします(図1-②)。このような、脳組織が本来あるべき場所から押し出された状態を「脳ヘルニア」といいます。 図1 脳ヘルニアのイメージ 脳ヘルニアの事例 ●転倒後、意識レベルが低下している●痛み刺激を与えると、のけぞるような姿勢をとる●右眼の瞳孔が散大しており、対光反射が消失している●バイタルサインに過呼吸、血圧上昇、徐脈を認める 事例が起こったのはなぜ? ■「外傷性硬膜下血腫」を原因とした“テント切痕ヘルニア ①意識レベル:JCS「Ⅲ-100」②異常肢位:痛み刺激を与えたときにのけぞるような姿勢(=除脳硬直)③瞳孔所見:瞳孔不同、右の対光反射消失④バイタルサイン:(呼吸)中枢性過呼吸、(血圧)上昇、(脈拍)除脈●これらの情報から、脳幹を圧迫する脳ヘルニアが疑われる●CT画像により、血腫により脳組織が圧迫され、増大に伴い、圧迫を受けた組織が押し出され、脳ヘルニアに移行(テント切痕ヘルニア)したことが確認された●転倒時の頭部打撲により頭蓋内で出血(硬膜下血腫)が起こったことが推察された こちらもチェック!●脳ヘルニアを疑って画像を見るポイントmidline shiftがないかを画像で見る際のポイントを紹介しています。 脳ヘルニアのメカニズムと鑑別のポイント 1)脳ヘルニアの生じやすい部位 脳ヘルニアは、頭蓋内の脳組織が押し出されやすい「①大脳鎌下」「②テント切痕部」「③大後頭孔」の3か所で生じます(図2)。 2)脳ヘルニアの分類 押し出される部位や偏位する方向(図3)によって5種類に分類され(表1)、発生する部位や進行度によって症状や予後が大きく異なります。 3)脳ヘルニアの症状 さらに、脳ヘルニアの進行度によってバイタルサインに変化が生じます(表2)1。脳ヘルニアの症状を観察するうえでのポイントとして、圧迫される部位による症状の把握とバイタルサインの時系列変化を理解しておくことが重要です。 図2 脳ヘルニアが起こりやすい部位 図3 脳ヘルニアの部位 表1 脳ヘルニアの分類と症状 脳ヘルニアの例 ■脳梗塞・脳浮腫による脳ヘルニアの例 ●梗塞像や脳浮腫が拡大することで頭蓋内圧が亢進し、中脳が圧迫される危険性がある●中脳が圧迫されると鉤ヘルニア(③)へ移行する。徴候として、意識障害や異常呼吸、異常肢位(除脳硬直)、病側の対光反射消失・散大が出現する ■脳腫瘍による脳ヘルニアの例 ●腫瘍が増大することで、慢性頭蓋内圧亢進症状である頭痛・嘔吐が出現した●腫瘍が中脳を圧迫することで鉤ヘルニア(③)へ移行が進み、右の瞳孔径が散大、意識障害が出現した●血圧が上昇し、クッシング現象が出現しはじめた ■脳出血による脳ヘルニアの例 ●橋出血により血腫が橋を圧迫し、意識障害や呼吸障害、眼症状が出現した●血腫が増大し、圧排が上方へ進行する場合には上行性ヘルニア(④)へ、下方へ進行する場合には大後頭孔ヘルニア(⑤)へ移行し、生命の危機になる危険性がある こちらもチェック!●頭蓋内圧亢進で注意すべき嘔吐・めまいの症状と正しい対応 脳ヘルニアの観察ポイント 脳ヘルニアは急激に症状が増悪することが多く、早期発見のポイントとして神経症状やバイタルサインの変化に気づくことが重要です。 1)意識障害 脳ヘルニアによる意識障害は脳幹の障害によって生じます。そのため覚醒の維持(目を覚まし続けること)が困難になります。障害部位により、Japan Coma Scale(JCS)において表1のような特徴がみられます。 なお、意識障害が生じると舌根沈下によりいびき様呼吸を呈することがあります。夜間など睡眠時にいびきをかく患者では、意識障害による異常呼吸との鑑別が重要です。 2)異常肢位(除皮質硬直・除脳硬直) 痛み刺激を与えたときに除皮質硬直や除脳硬直といった異常肢位を認めます(図4)。除皮質硬直は大脳半球広範の障害により、除脳硬直は中脳・橋の障害により認めます。 これらの異常肢位は、意識レベルの評価スケールであるGlasgow Coma Scale(GCS)の「最良運動反応(M、best motor response)」における「3点(除皮質硬直)」「2点(除脳硬直)」に相当します。 このブロック以降のコンテンツは非表示になります 図4 異常肢位(除皮質硬直・除脳硬直) なお、過去に脳梗塞などの脳障害で寝たきりとなった患者で異常肢位のような肢位を示していることがあります。これは、筋緊張や関節拘縮などの原因により生じているため、意識障害によるものとは異なります。 3)瞳孔所見 脳ヘルニアにより中脳が圧迫されると、中脳から発生している動眼神経も圧迫を受け、「瞳孔径」および「対光反射の有無」に変化が生じます。そのため、瞳孔径と対光反射の観察方法を理解する必要があります。 ①瞳孔径 瞳孔の直径は、周囲の明るさによって大きさが2~7mm程度で変化します。自然光(部屋の明かりや床頭台の明かり)の下で、正常では 3~5mmとなりますが、2mm以下を「縮瞳」、5mm以上を「散瞳」といいます。また、左右の瞳孔径が1mm以上異なる場合を「瞳孔不同」といい、病的と診断されます(表3)。 表3 瞳孔所見 脳ヘルニアでは、圧迫される部位によって病側または両側の瞳孔が「収縮」または「散大」します。そのため、瞳孔径を観察する際には「大きさ」と「左右差」を測定します。 測定するときの注意点として、下記の対光反射を観察する前、ペンライトの光を当てていない状態で観察します。また脳幹を圧迫する脳ヘルニアの例外として、橋出血では交感神経線維の障害により交感神経と副交感神経(動眼神経)のバランスが崩れ、動眼神経が著しく機能することにより両側の縮瞳が生じます。 ②対光反射 対光反射はメカニズムを理解しておくことが重要です。 眼に光を当てると光の情報は視神経を通り中脳に入ります(図5-A-①)。その後、動眼神経に情報が伝えられ、動眼神経のはたらき(図5-A-②)により、瞳孔は収縮します。これを対光反射といいます。 このときに、光を当てている側(直接反射)と当てていない側(間接反射)を見ますが、正常の場合は両方とも収縮が起こります。しかし脳ヘルニア(例として鉤ヘルニア)により“右の動眼神経”が障害されると(図5-B-③)、左眼の動眼神経には情報が伝えられ“左眼の瞳孔は収縮”しますが、右眼の動眼神経は情報を伝えることができず、“右眼の瞳孔は収縮しない”ことになります。そのため右眼の直接反射と間接反射がともに消失します。 なお、白内障や緑内障などの眼疾患では、視神経の障害を原因とした瞳孔不同が出現していることがあるので、既往歴に眼疾患があるかを把握しておくことも重要です。 図5 対光反射 4)バイタルサイン ①呼吸 通常、人は無意識に呼吸をしています。これは、呼気・吸気を交互にリズミカルに行うはたらきを担う延髄の呼吸中枢と、呼吸の回数や大きさを調節するはたらきを担う橋の呼吸調節中枢があるためです。 脳ヘルニアが生じると、これらの中枢が障害され、さまざまな異常呼吸を認めます(表4)。 表4 障害部位における異常呼吸 間脳チェーンストークス呼吸 ・呼吸の深さや回数がリズミカルに増加・減少し、続いて無呼吸となる 中脳中枢神経性過呼吸 ・呼吸数、深さともに増加する 橋持続性休息呼吸 ・深く長い吸息のあとに2~3秒の呼吸停止となる。呼息の停止と交互に現れる 延髄 ・完全に不規則で呼吸のパターンの予測がつかない呼吸 ②血圧・脈拍 病変により急激に頭蓋内圧が上昇すると、通常の血圧では頭蓋内に血液を送ることができず、頭蓋内の血流が弱くなります。そのため、脳血流を維持しようと全身の血圧は上昇します。 それに対して、一定の心拍出量を維持しようとするはたらきが生じ、脈拍数が低下し、徐脈となります(図6)2。これをクッシング現象といいます。 図6 クッシング現象 (文献2より引用) 脳ヘルニアの対応ポイント 1)すぐに報告が必要な状況 急性頭蓋内圧亢進症状が認められた場合は、脳ヘルニアに移行する可能性があります。 脳ヘルニアは一刻を争う病態であるため、場合によっては救命処置が必要となります。脳ヘルニアを診断する検査として画像(CT・MRI)、聴覚脳幹反応、頭蓋内圧モニタがあります。しかし、脳ヘルニアに気づくためには神経症状やバイタルサインの変化を発見することが何よりも重要なポイントです。 そのため、意識障害やバイタルサインの異常(異常呼吸、クッシング現象)、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気・嘔吐)、神経症状(運動麻痺、瞳孔不同、対光反射異常)が出現した場合には、すみやかに医師へ報告し対応することが重要です。 2)呼吸・循環の安定 まずは全身状態を安定させることが重要です。 全身状態を観察し、医師の指示のもと、呼吸・循環を安定させます。その間に、患者にとって苦痛(痛みなどの刺激)を除去することも大切です。 3)頭部挙上 頭部を30°挙上することで、頸静脈の流出がよくなり、頭蓋内圧を低下させます。 また、頸部の過度な前屈位や腹圧のかかる体位(腹臥位や、股関節の過度な屈曲位)は頭蓋内圧を亢進させるため、枕を低くしたり、体位を適宜整えたりする必要があります。 4)人工呼吸管理 脳ヘルニアによる異常呼吸が出現すると、ガス交換が不十分となり、動脈血の炭酸ガス濃度(PaCO2)が上昇し、その代償として脳血管は拡張され、脳血流量が増加します。その結果、頭蓋内圧はさらに上昇します。 これを防ぐために、必要に応じて気管挿管および人工呼吸器管理を行い、人為的に過呼吸の状態にします。過呼吸にすることで、動脈血の炭酸ガス濃度(PaCO2)が低下し、脳血管を収縮させ頭蓋内圧を低下させることができます。PaCO2は25~30mmHg(基準値:35~45mmHg)でコントロールします。 よって呼吸状態を観察して、医師の指示のもと、気管挿管や人工呼吸器をあらかじめ準備しておくことも重要です。 5)治療 脳ヘルニアの原因となる疾患や全身状態によって、内科的治療や外科的治療が検討されます(表5)。 表5 脳ヘルニアにおける治療内容 内科的治療●抗浮腫薬(浸透圧利尿薬/利尿薬/ステロイド)→脳浮腫を改善し、頭蓋内圧を低下させる●バルビツレート療法→バルビツレートで脳代謝低下と脳血管収縮を図る●低体温療法→低体温(32~34℃)にして脳代謝を低下させ脳血流量を減少させる 外科的治療●血腫除去術●腫瘍摘出術→血腫や腫瘍を摘出し頭蓋内圧を減少させる●脳室ドレナージ●水頭症シャント術→頭蓋内に貯留した髄液を排出させる●外減圧術→頭蓋骨を外して、圧を外部へ逃す (第9回) 引用文献1.水谷映美子,松葉章子,水谷泰子:バイタルサイン観察の疑問②脈拍.石山光枝 監修,今さら聞けない脳神経外科看護の疑問Q&A,ブレインナーシング 2011;354(春季増刊):71.2.林祥史 編著:意識障害がわかるBOOK.エキスパートナース 2013;29(5):特別付録19. 参考文献1.尾上尚志 監修:脳ヘルニア.医療情報科学研究所 編,病気がみえるvol.7 脳・神経,メディックメディア,東京,2011:133-135.2.鳥羽清治:意識障害と脳ヘルニア、脳死.松谷雅生,田村晃,藤巻高光,他 編,脳神経外科 周術期管理のすべて 第5版,メジカルビュー社,東京,2019:642-648.3.馬場元毅:脳ヘルニア.JJNブックス 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版,医学書院,東京,2009:77-94. この記事を読んだ方におすすめ●頭痛の診療ガイドライン2021のポイントと頭痛の基礎知識●【連載まとめ】見逃せない救急症候―頭痛、胸痛、腹痛、呼吸困難に注意!●【連載まとめ】脳から起こる症状・徴候の見抜き方●そのほかの連載はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2014年10月号特別付録を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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脳疾患をCT・MRIで見る理由とは?看護師が脳画像を理解するメリット
脳画像を読めるようになると、日々の看護ケアに役立ちます。全身管理や日常生活援助への活かし方、脳疾患をCT・MRIを見る理由についてわかりやすく解説しています。 脳神経疾患で全身管理が必要となる時期は? 脳神経疾患患者の管理を行ううえで、特に全身状態の管理が必要になってくる時期が「発症~急性期」です。 このとき最も注意したい点は頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアであり、死に至ってしまう危険性があり、脳ヘルニアの部位によっては救命できたとしても重篤な後遺症が残ったりします。特に急性発症では、急激な病変の出現に伴い周囲の脳組織が浮腫性の変化を認めるため、さらに頭蓋内圧の亢進を助長させます。 よって突然の意識障害やバイタルサインの急激な変化、瞳孔の異常所見、麻痺などの神経症状が出現した際は、全身状態の観察や気道確保、循環動態の管理などの必要な処置を行い、他の原因疾患の鑑別を行うとともに、迅速に“画像による評価”で疾患を特定していく必要があります。 脳画像を読めると看護にどう役立つ? このとき、脳の画像をナースが見ることができると「全身状態を管理するうえで危険を予測する」ことや、「日常生活ケアを行ううえで患者さんに適した援助を計画する」ことができるようになります。以下にその具体例を示します。 ①血圧管理が適切かどうかが検証できる 脳梗塞急性期では、頭蓋内の脳血流を一定に保つ自動調節能が破綻することで、血圧の低下に伴い脳血流量が低下し、虚血状態に陥りやすくなります。 逆に出血性病変の場合、血圧が高いと再出血の危険性が高くなります。特に未処置のくも膜下出血では、降圧・鎮静・鎮痛を行い、再出血を起こさないよう注意を払う必要があります。 このとき、血圧の管理などが疾患によって異なってくるため、“血圧を下げればよい”という判断ではなく、画像や検査所見から疾患を特定し、適切な血圧管理も含めた全身状態の管理が必要になってきます。 ②麻痺の進行・改善を評価できる 同様に、麻痺などの症状から、麻痺の程度が進行したのか改善したのか判断することも大切ですが、同じ半身麻痺でも、前頭葉の運動野だけでなく錐体路の障害で起こるため、症状だけでは部位の細かい特定は困難です。付随する症状も含め症状が進行したかどうか判断が必要になるため、画像を確認することが重要になります。 特に急性期は意識障害を伴うこともあり、症状からの適切な評価が困難なことがあります。画像所見と、血管の支配領域、機能局在から判断して、どのような症状が起こりうるのか視野に入れて観察することも必要です。 ③症状の変化を予測してケアに活かせる 麻痺など“今ある症状”にだけ目を向けて看護を行い、できないことに対して手を差し伸べて看護をしていては、患者さんの自立した生活は遠のいてしまいます。 画像所見から脳の機能局在と照らし合わせ、患者さんの変化に少しでも気づき対処していくことが大切です。 ④起こりうるリスクに対処できる 病変によっては運動麻痺や言語障害だけではなく、嚥下障害などのさまざまな障害を起こします。 ●四肢の運動麻痺がなく、意識清明だから食事摂取は可能”と判断し、誤嚥してから嚥下障害に気づく●運動麻痺がないから1人で歩ける”と判断し、転倒転落の事故を起こしてしまってから障害に気づく のではなく、画像所見から予測し、身体所見のアセスメント、適切なスクリーニング評価を行うことで、「起こりうるリスク」に気づき、対処できるようになります。 こちらもチェック!●頭部打撲後に嘔吐がある場合の頭部CT画像を見るポイント外傷性くも膜下出血や脳挫傷を疑った場合の画像検査について解説しています。 脳の疾患をCT、MRIで見る理由は? 突然に脳神経系の症状が出た場合はどうする? 患者さんに「突然、右半身に運動麻痺が出て、言葉が出てこない」などの症状が現れたときに、私たちはまず、「頭に何かしらの異常が出たのでは?」と考えると思います。 その際、バイタルサインや麻痺の程度、瞳孔の大きさなどを観察すると思います。さらに、脳神経系病棟の看護師であれば、“右上下肢の麻痺+失語”といった症状から、左脳になんらかの病巣があり、さまざまな症状や既往歴から、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)ではないかと予測できるかもしれません。 しかしながらこれらはあくまでも“予測”であり、脳梗塞なのか脳出血なのか、そもそも本当に脳卒中なのかは、画像撮影をしないと判断できません。 緊急時にCTを撮る理由は? ●病巣・範囲を確認するため●疾患を特定するため●頭蓋内圧亢進の状態を確認するため CTでおおまかな異変をつかむ 通常、緊急時の画像撮影はCT(コンピュータ断層撮影)が選択されます。 なぜ緊急時にCTを撮影するのかというと、CTでは検査前に「妊娠の有無」以外に確認が必要な項目がなく、迅速に検査を受けることができ、検査自体も数分で終了するためです。 また、脳卒中や頭部外傷など、緊急に対処しなければいけない疾患の評価や頭蓋内圧亢進の有無なども把握できます。さらに、画像所見と全身状態から、外科的治療、保存的治療の判断、原因検索のためにほかにどの検査が必要か、悪化させないための血圧管理や鎮静の必要性などの判断にもつながります。 CTで医師が見ているポイント 画像診断の重要なポイントとしては、疾患の特定だけでなく、どこに病巣があるか、その程度に関しても確認を行います。 例えば、患者さんに突然の半身の運動麻痺が出現した場合や頭部外傷後意識障害を伴った場合、画像所見で「高吸収域(脳出血やくも膜下出血などの出血性病変の有無)」、もしくは「低吸収域(脳梗塞などの虚血性病変の有無)」があるかどうかによって疾患を特定し、病変の範囲や頭蓋内圧亢進を起こしていないかも判断します。 さらに麻痺の症状と画像所見が一致しているか、他の随伴症状がないかも確認します。 そして、何らかの疾患があった場合に、MRIを撮影するなどして原因の検索を行います。 こちらもチェック!●医師が画像検査をオーダーする目的は?ドクターが画像を見るポイントを紹介しています。 MRIを撮る理由は? ●MRIにより、詳細な原因検索を行うため 次に原因検索のために、必要に応じてMRI(磁気共鳴画像)などが行われます。 MRIでは検査前に、「体内外の金属や貼付薬の確認」「適切な衣類の確認」「身長や体重の把握」などの確認事項が多くあります。またMRIは、CTに比べ時間(20~40分ほど)や費用的な負担もかかりますが、さまざまな撮影条件から詳細な疾患の特定につなげていくことができます。 さらにMRIでは撮影に造影剤(ガドリニウム造影剤)を用いることで、悪性や良性の脳腫瘍の判断や脳膿瘍などの詳細な評価が可能になります(ただし、CTでもヨード造影剤を用いれば脳血管病変などの評価が行えるため、検査の目的によっては「造影CT」を行うこともあります)。 なお造影剤は、腎機能障害、喘息の既往のある患者、造影剤に対するアレルギーがある場合には注意が必要です。特に造影CTの場合、ビグアナイド系の糖尿病薬を内服している患者さんでは、造影剤との併用で乳酸アシドーシスを起こすことがあるため注意が必要です。 いずれにしても、抽出したい画像によってMRIかCTか、また造影剤使用の有無を判断します。 また、患者側の要因でどちらの画像検査を選択するかを判断することもあります。例えば、「閉所恐怖症や体内金属がある場合は、MRIはできないのでCTを実施する」「腎機能障害がある場合は、造影剤は使用しない」などを判断します。 脳疾患で登場するその他の画像検査 脳疾患は、基本的にCTやMRIを用いて画像診断を行っていきますが、さらに細かい確定診断やくわしい病態の判断をするために、“CTやMRI以外”の画像検査も行います。 脳神経外科領域で、CTやMRI以外のよく用いられる画像検査を表1に示します。 表1 CT・MRI以外の画像検査 脳血管造影●動脈瘤などの脳血管疾患のより詳細な血管の状態を見ることができる●動脈にカテーテルを挿入し造影剤を用いて撮影するため、身体への侵襲はCTやMRIに比べると強くなる●脳血管造影は診断によってはそのまま血管内治療が可能 核医学検査(SPECT、PET)●放射性同位元素を静脈より投与し、体内から放出される放射線を画像として取り込み、脳血流などの循環動態やエネルギー代謝動態を描出。その偏りの有無などから診断に役立てる●SPECTは脳の循環動態を評価するのに適しており、脳血流障害、てんかんやアルツハイマー型認知症などの診断に用いられる●PETは脳の代謝機能の評価に適しており、脳腫瘍の診断やパーキンソン病、脳血管疾患などの診断に役立てられる 頸動脈エコー●頸動脈や椎骨動脈は、脳へ酸素やエネルギーを送る重要な役割をもつ。それらの血管に狭窄・閉塞がないか、脳梗塞の原因となるプラーク(粥腫)の有無や状態、血流速度などを評価する (第1回) 参考文献1.曷川元 編:脳卒中急性期における看護ケアとリハビリテーション完全ガイド.慧文社,東京,2015.2.波多野武人 編著:まるごと図解 ケアにつながる脳の見かた.照林社,東京,2016.曷川元,永谷悦子 監修:看護・リハビリに活かす脳神経ケアと早期離床ポケットマニュアル.丸善プラネット,東京,2009.3.荒木信夫,高木誠,厚東篤生:脳卒中ビジュアルテキスト 第4版.医学書院,東京,2015.4.坂井建男,河田光博 監訳:プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖.医学書院,東京,2019.5.市川博雄:症状・経過観察に役立つ 脳卒中の画像のみかた.医学書院,東京,2014. この記事を読んだ方におすすめ●画像検査の情報を看護に活かすための見方と注目ポイント●X線画像やエコー画像の原理などを解説!観察とケアがつながる画像●そのほかの連載記事はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2017年2月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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創スワブ検査の検体採取方法:ガーゼ経由での採取がNGな理由は?
創スワブ検査で正確な検査結果を得るための検体採取方法を解説。ガーゼに付着した分泌物の採取を避けるべき理由や、採取時の注意点、また検体を保存する冷暗所についても紹介します。 Q. 創スワブ検査はガーゼについた分泌物を取ってもよい?A.原因菌と皮膚常在菌の区別ができなくなり、診断価値が下がるため、避ける必要があります。 スワブ採取法の手順と注意点 手術、熱傷、外傷のあとに生じる創感染や褥瘡感染などの感染症治療のために細菌培養検査を用いた病原体診断が行われます。検体の採取法には表1などがあり、スワブ採取法が最も多く使われている方法です。 表1 主な検体採取の方法 ●スワブ採取法創表面の付着微生物を拭き取って捕捉する●創部清拭創面に圧力をかけて組織から圧出した液体を採取する●針穿刺吸引注射針を用いて直接病変部の組織を吸引して採取する●創部生検創部の一部を切り取って採取する(侵襲的な方法であり、すべての検査で用いられるものではない) スワブによる創部の検体採取は、創周囲を滅菌生理食塩水で十分洗浄したあとに行う方法が推奨されています(図1)1。それは、常在菌の混入を防ぎ、さらに感染組織に最も近い部位から検体を採取するためであり、これにより診断価値の高い検体を採取できます。 図1 スワブによる創部の検体採取法 このブロック以降のコンテンツは非表示になります 創がパジャマの中で“むき出し”になっている場合、検体採取前に創周囲の十分な洗浄が必要です。また、創部を覆っていたガーゼについた膿汁をスワブで採取することは極力避ける必要があります。ガーゼに皮膚表面の常在菌が混入してしまい、検出された菌が原因菌なのか、皮膚の常在菌の混入なのか、区別が困難となり診断価値が下がるためです。 スワブ採取による検体は乾燥しやすいため、保存には注意が必要となります。検体が乾燥することで菌が死滅してしまい、培養検査の結果に影響を与えます。 そのため、保存培地入り輸送容器(図2)を使用するか、検体をできるだけ多く採取したうえで容器内には少量の滅菌蒸留水を加えるなどして、乾燥を防ぐ必要があります。 図2 保存培地入り輸送容器 ●検体は乾燥に弱いため、湿潤した状態を保つよう注意する (執筆:成田和也) 引用文献1.Principles of best practice:wound infection in clinical practice:国際コンセンサス.London:MEP Ltd,2008. 検体の「冷暗所保存」とは? Q. 検体を保存する際の「冷暗所」ってどこ?A.直射日光に当たらない涼しいところです。正確な検査値を得るため重要です。 冷暗所保存とは直射日光の当たらない涼しい場所での保存のことであり、必ずしも“冷蔵庫保存”という意味ではありません。 ではなぜ、直射日光が当たらない場所での保存が重要なのでしょうか。それは、直射日光が当たる場所では、細菌の増殖や物質の変化により、検査値に影響を及ぼす恐れがあるからです。 尿を例に挙げて説明しましょう。採尿後2~3時間以内の尿であれば、ほとんどの尿検査(尿定性検査、尿化学定量検査、尿沈渣、尿細胞診)は冷蔵庫に入れず、冷暗所保存で十分です。しかし、このような冷暗所の環境がない場合には、冷蔵庫保存(4℃)でも可能です。また、24時間蓄尿も通常、冷暗所で保存します。 もし、これを直射日光の当たる場所で保存すると、尿の温度上昇による影響(細菌の増殖など)や直射日光によるビリルビン分解などによって正確な検査値が得られなくなります。 (執筆:石澤毅士) (第17回) この記事を読んだ方におすすめ●クロスマッチ用採血の必要量と緊急輸血の対応●「ベッドサイド検査手技の根拠」の記事一覧●そのほかの連載はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2014年8月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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