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看護現場の「合理的配慮」実践Q&A:カスハラとの違いや性的マイノリティの人への配慮
「合理的配慮」について、看護師がおさえておきたいポイントを解説。看護現場から寄せられた合理的配慮に関する疑問に答えています。 前回の記事はこちら 〈見出し〉●患者さんの申し出に、ナースとして対応できる範囲は?●合理的配慮とクレーム・カスハラとの違いは?●個人ではなくチームで合理的配慮を進めるには?●ナースどうしでの合理的配慮の提供は必要?●性的マイノリティの人への合理的配慮とは? 患者さんの申し出に、ナースとして対応できる範囲は? ――合理的配慮について、基本的なことは理解できたと思います。ただ、自分が実際にそのような場面に遭遇したとき、うまく対応できるかはまだ自信がないです。他の医療従事者は現場でうまくできているのでしょうか? 喜多 じつは、僕は医療従事者と合理的配慮の話をすることがほとんどありません。おそらく、多くの医療従事者が「合理的配慮って何?」や「聞いたことはあるけど……」という状態なのだと思います。 ――そうだったのですね。医療現場で合理的配慮が浸透するのは、まだこれからですね。 喜多 そうですね。一方で、当事者の「対応してもらえなかった」という話を耳にすることは少なくないです。例えば、精神障害のある友人がはじめての医療機関に入院する際、治療方法や入院後の生活に見通しが立たなくて不安を感じていたんです。そこで「教えてほしい」と申し出たのですが、医療従事者からは「入院しないとわからない」ばかりで、満足のいく回答をしてもらえないとつらい思いをされていました。 ――たしかに、実際に入院して検査をしないと今後の方針が決められないこともよくありますし……。ナースだと医師のように病状を説明できないこともあるから、私も聞かれたら困っちゃうかもしれません。 喜多 たしかに、すべてを伝えることは難しいかもしれません。しかし、部分的にでも伝えられることはあるのではないでしょうか? ――う~ん……。考えてみると、あるかもしれませんね。例えば、まだ詳しい治療方針は決まっていないけれど、「〇日に〇〇という検査をして調べた結果が翌日にわかるので、AかBで治療を続けるのか決まります。具体的な話は〇日に医師からあります」みたいなことは伝えられるかもしれないです。 喜多 そういうことですね。大事なのは「負担が重すぎない範囲」と「対話」という原則に立ち戻ることです(第1回の記事参照)。ナースとして対応できる範囲を明確にして、現時点で説明できることを伝えて、「他にも不安なことはありませんか?」と対話してほしいんです。無理に医師から指示出しをしてもらったり、無理に治療方針を立ててもらったり、過度に対応する必要はないんですよ。 合理的配慮とクレーム・カスハラとの違いは? ――実際に働いている場面のことを考えると、クレームやカスタマーハラスメントとの違いがわかりにくいとも感じました。例えば、患者さんから「ちょっとした要求が多い」とか「細かなことを指摘してくる」というのは、ナースとして働いているとわりと経験すると思うんです。 喜多 例えば、「他の患者さんよりも優遇した対応をしなさい」や「あなたの態度が気に入らないので改めなさい」というものについては、合理的配慮の申し出と考えることは難しいですね。違いを考えるときには、「社会モデル」という考え方に立ち戻ってもらいたいのです(第1回の記事参照)。社会モデルでは、障害のない人を中心としてつくられたさまざまな環境によって、障害のある方が困難を生じると説明しました。合理的配慮が図ろうとしているのは、この環境のあり方を調整していこうという取り組みなんです。 ――少し難しいですね……。どういうことでしょうか。 喜多 例えば、病院受付の呼び出しシステムが音声のみだったときには、聴覚障害のある方には情報が届きませんよね。これだけでも、聴覚障害のある方とない方には格差が生じてしまいます。この格差を埋めるのが合理的配慮になるんです。患者さんからの過度な要求や細かな指摘は、この格差を埋めるために必要なものかを考えてみることがヒントになると思います。 ――なるほど。そう考えると、合理的配慮は患者さんを特別扱いするわけではないということですね。合理的配慮の提供をすることで「あの患者さんにはしているのに、私には何でしてくれないんだ!」という声が聞こえてきそうだな……、なんてことも思っていました。 喜多 合理的配慮は医療機関だけではなく、教育機関や一般企業にも周知が広がってきています。そこでは「特別扱い」や「わがまま」といった言葉で、障害のある方ががまんや努力を強いられてしまう状況もあると聞きます。合理的配慮には、社会モデルの考え方をセットで考えていくことで、より理解が深まると思います。 ――看護師としては働くなかで耳にすることがほとんどなかったけど、これからは知っておくべき言葉になっていきそうですね。 個人ではなくチームで合理的配慮を進めるには? ――合理的配慮について、私にもできそうなことがわかってきました。でも、私1人が一生懸命がんばったとしても、限界はあると思うんですよね。同じチームや部署、関係する他職種でも同じように理解が進めばいいなと思うんですけど……。 喜多 とても大切な視点だと思います。例えば、小さなクリニックで患者さんが多い時間帯にスタッフ数も少なくて手が回らないとき、「ちょっと外まで迎えに来てほしい」と患者さんから申し出があったとします。それに対して個人の裁量で「合理的配慮で必要だから行ってきます!」と外に出て行ってしまったら、どうでしょうか? 他のスタッフに負担がかかってしまうし、他の患者さんにも迷惑がかかってしまいますよね。もしかしたら医療事故につながるかもしれません。 ――あると思います。よかれと思って、やさしい看護師さんがそういう行動をすることはありそうです。私がそれをやったら、先輩からめちゃくちゃ怒られそうです。「1人がやりだしたら、みんな対応しなきゃいけないじゃん」とか「チームのことちゃんと考えて、勝手な行動をしないで」とか言われそうです。 喜多 そうなんです。なので、個々人で提供できるような合理的配慮も、他のスタッフたちの理解や協力を必要とするものだと思います。患者さんから申し出があったときには個人で勝手に判断せず、チームで話し合っていくことも大切だと思います。 ――なるほど! でも具体的に、チームではどんなふうに話し合えばいいでしょうか。 喜多 「スタッフが外まで迎えに行くことは合理的配慮として必要だと思うんですけど、今の状況だとなかなか難しいです。どうしたらいいですか?」と。こういうところから話し合うとよいかもしれませんね。 ――そうか、そのまま投げかけてよいのですね。こうやって1つ1つ話題にしてみんなで考えていくことが、合理的配慮を考えるきっかけにもなりますよね。 喜多 そうですね。どのような合理的配慮が提供できるのか……。合理的配慮を提供できるようにするための基礎的環境整備をみんなで考えるなかで見えてくる部分があると思います。 ナースどうしでの合理的配慮の提供は必要? ――これまで患者さんに対する話が多かったのですが、同じナースどうしでも合理的配慮って必要なんでしょうか。例えば、障害という診断がついていなくても発達特性がある後輩ナースがいて、指導するときに口頭でメモをとってもらうのが難しそうなので、書面にしてあらかじめ渡すとか……。そういうことも必要なのかなって。 喜多 ナースどうしでも合理的配慮は必要となりますね。でも、現場のナースが忙しい業務のなかで同じナースのことを考える余裕なんかない……というのが実情ではないでしょうか。僕も病院で働いていたことがあるので、ナースの大変さもわかります。ただ、だからこそ合理的配慮の提供が意義あるものになると思うんです。 ――どういうことでしょうか? 喜多 ナースが合理的配慮を必要としているときは、何かしらの業務がうまくいっていないときだと思うんです。なので、そのままではそのナースは仕事をうまく進めることができず、結果的に他のナースに負担がかかっている状態になっていることが多いはずです。そこで適切に合理的配慮が提供されれば、業務が円滑に進むようになって、どのナースも楽になるのではないかと思うんです。 ――たしかに。合理的配慮と聞いて、「また新しい業務が増えるのか……」という気持ちになっていました。でも、結果的に他のナースも自分自身も楽になるのであれば、考え方が変わりますね。 喜多 診断がなされていなくとも困りごとを抱えているナースは少なくないと感じています。他の例としては、勉強会の資料をちょっと変更することで、効率のよい学びができるナースは一定数いるのではないでしょうか。合理的配慮の考え方が広がっていくと、業務や学習など広い側面からよい方向に向うナースが増えていくと思います。あと、部下・後輩指導をがんばっているナースのなかに、「自分の教え方が悪くて……」と、悩んで落ち込んでしまう方もいると思うんです。合理的配慮の視点をもつことで「こういうふうに伝えればいいんだ!」と気づくことがあるかもしれません。 性的マイノリティの人への合理的配慮とは? ――これまで障害のある方の話がメインでしたけど、障害のない人にも合理的配慮の提供をすべきなのでしょうか? 喜多 僕は必要だと感じています。先ほどの社会モデルの考え方を思い出してください。合理的配慮は環境のあり方によって生じた格差を埋めるために行うとお話ししましたが、それに該当する場合が少なくないからです。 ――最近よくメディアでも取り上げられる、性的マイノリティに対してはどのようなことに気をつければよいのでしょうか? 喜多 例えば、同性パートナーでは病状の説明や同意書へのサインができないという問題があります。10年、20年と一緒に暮らしているにもかかわらず、「大切な署名ですのでご家族さんでなければ……」と戸籍上の家族でないことで断られてしまうことは少なくありません。 ――その方の気持ちになると、なかなかつらいものがありますね。同性パートナーであってもなくても、同じように円滑に入院生活を進められるようにしたいですね。 喜多 他にもナースの身近なところでは、外来や受付などで保険証で記載されているフルネームで「呼ばない」ということが挙げられます。名前から想定される性別と見た目から想定される性別が異なっていた場合には、それだけで周囲からの視線がつらいものになってしまいます。最近では増えてきていますが、受付番号で呼ぶといった対応が必要です。 ――え~! ナースだと患者間違いをしてはいけないから、フルネームで確認することが身についているので驚きです。でも、外来でいろんな人がいるなかで呼ばれるのと、病室で名前を確認するのとでは、ちょっと話が違いますよね。 喜多 そうなんです。あらためて考えてみると慣習的に行われているだけで、じつは改善の余地のあることがたくさんあるはずです。「こういうところって見直せるんじゃないかな?」と日々の業務や患者さんとのかかわりを見直してみるのもよいですね! 最後に 合理的配慮と聞くと「また新しい仕事が増えるのか……」と負担に感じてしまうかもしれません。しかし、患者さんが安心して医療を受けられることにもつながり、それによってナースの業務が楽になる場面も増えてくるはずです。ナースにとってよい循環を生み出すきっかけになると考えています。 合理的配慮……社会モデル……。難しい言葉がたくさん出てきましたが、大切な考え方は「患者さんと丁寧に話をしよう!」です。患者さんが困っていることがあれば、しっかりと話を聞いてできることを検討し、それで十分かを一緒に考える、話し合うことがあたりまえの医療現場になっていけばうれしいです。 本稿を執筆するにあたり、臨床心理士・公認心理師の初川久美子様に有益な助言をいただきました。心より感謝申し上げます。 編集協力をしてみて 医療従事者として個人の症状や障害に目を向けがちでしたが、対話や社会環境を整えることの大切さに気づきました。また、誰もが安心して医療を受けられる環境づくりは、誰もが働きやすい職場づくりにもつながるかもしれないと思いました。1人ひとりの困りごとに耳を傾け、チームで知恵を出し合いながら、できることから始めていきたいです。(白石弓夏) 参考文献1.内閣府ホームページ:障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針.https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/honbun.html(2026.3.2アクセス)2.外務省ホームページ:人権外交 障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(Convention on the Rights of Persons with Disabilities).https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html(2026.3.2アクセス)3.内閣府ホームページ:リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」.https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html(2026.3.2アクセス) この記事を読んだ方におすすめ●【連載まとめ】ナースが共有したい看護介入・ケア実践事例●【連載まとめ】看護研究からわかる患者さんのこころの中●そのほかの連載記事はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2025年4月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
特集記事
くも膜下出血合併症としての水頭症の画像の見方
くも膜下出血合併症として起こる「水頭症」の原因や画像の見方、画像を見てケアで予測すべきことなどを紹介します。 目次●水頭症とは?●水頭症の画像診断●水頭症の画像の見方1)くも膜下出血と水頭症(急性水頭症)2)くも膜下出血と水頭症(正常圧水頭症)●水頭症の画像からケアで予測すべきことは?1)急性水頭症とケア2)正常圧水頭症とケア●水頭症の治療の進み方1)急性期の治療:ドレナージ術と管理2)慢性期の治療:髄液シャント術と管理 水頭症とは? ●水頭症は、髄液の「通過障害」「吸収障害」「生産過剰」の3つが原因で、脳室やくも膜下腔が拡大することで起こります。●通過障害による水頭症は、閉塞する部位によって「交通性水頭症」と「非交通性水頭症」に分けられます。●脳室やくも膜下腔が拡大していても頭蓋内圧が正常な場合に生じる「正常圧水頭症」は、原因が明確な場合と不明な場合があります。 水頭症の原因は? ①髄液の通過障害 ●髄液の通り道である脳室やくも膜下腔が、血腫や腫瘍、奇形などにより閉塞または狭窄を認め、通過障害が起こる●閉塞する部位によって「交通性水頭症」と「非交通性水頭症」に分けられる交通性水頭症・くも膜下腔が炎症や血腫などにより閉塞することで生じる・脳室やくも膜下腔が拡大する非交通性水頭症・脳室やその出口で腫瘍や血腫、奇形により閉塞が生じる・閉塞部位により上部の脳室が拡大する ②髄液の吸収障害 ●髄液を吸収する部位(くも膜顆粒)に血腫などが付着することで吸収障害が起こる ③髄液の生産過剰 ●脈絡叢での炎症や腫瘍が原因で髄液が過剰に生産される 水頭症の画像診断 水頭症の画像所見では、髄液が貯留している脳室やくも膜下腔が拡大しているかを評価します。その評価方法として、水頭症の有無を評価するにはCTが用いられることが多いでしょう。 1)CTでの水頭症の鑑別 CTでは髄液は低吸収域で(=黒く)描写されます。正常な頭部CTでは図1-1のように描写されますが、それに対して、水頭症のある場合には図1-2のように脳室が拡大している画像が得られます。 図1-1 正常な頭部CT ●赤い点線は側脳室を示している 図1-2 正常圧水頭症の頭部CT ●側脳室が通常より拡大している 2)MRIでの水頭症の鑑別 MRIで撮影すると、T1強調像では図1-3のように描写され、CTと比較してより鮮明に脳室やくも膜下腔が拡大していることがわかります。T2強調像では図1-4のように描写され、脳室周辺の脳浮腫を認めています。 また、MRIをさまざまな方法で撮影することで、より詳細な水頭症の原因検索を行うことができます。 このようにCTやMRIで脳室やくも膜下腔が通常より拡大している場合には水頭症を疑います。 図1-3 正常圧水頭症の頭部CT ●T1強調像では、髄液は黒く映る( 低信号域) 図1-4 正常圧水頭症の頭部MRI(T2強調像) ●T2強調像では、髄液は白く映る(高信号域)●脳室周辺に淡い高信号域が描写され、脳室拡大による脳浮腫が生じている こちらもチェック!●頭蓋内圧亢進の基礎知識水頭症が原因にもなる頭蓋内圧亢進について解説しています。 水頭症の画像の見方 水頭症を合併する疾患にくも膜下出血があります。くも膜下出血は発症直後に生じる急性水頭症と、発症後約3週間~数か月に生じる正常圧水頭症を合併する可能性があります。 そのため、くも膜下出血発症後の水頭症は一般病棟においても長期的に関連があります。本項では、くも膜下出血の合併症として生じる水頭症を中心に記載します。 1)くも膜下出血と水頭症(急性水頭症) 図2において、脳室は拡大し、側脳室とくも膜下腔に血液を示す高吸収域(=白い)を認めており、急性水頭症を起こしています。 図2 くも膜下出血発生直後の頭部CT 本症例は椎骨動脈の解離性動脈瘤破裂によるくも膜下出血発症直後の状態です(Hunt&Hess分類のGradeⅡ、くも膜下出血の画像の見方とケアでの活用ポイント参照)。 くも膜下出血によりくも膜下腔に流出した血液は、脳溝に血液が貯留し、さらにくも膜下腔から側脳室へと血液が流れ、側脳室に血液が貯留していることがわかります。 くも膜下腔に貯留した血液が髄液を吸収する部位に付着することで生じる吸収障害を認め、急性水頭症を合併しています。 急性水頭症は、くも膜下出血のみでなく脳室内穿破を伴う脳出血でも生じる可能性があります。また、出血による水頭症は吸収障害による交通性水頭症のほかに、血液が脳室の出入口で固まることで循環障害を認め、非交通性水頭症を起こすこともあります。 関連する脳機能 くも膜下出血によりくも膜下腔や脳室内に血液が流れ込み、脳室内の内容量(髄液や血液)が急激に増え、頭蓋内圧を亢進させます。頭蓋内圧が亢進すると、意識障害や頭痛、嘔気 ・ 嘔吐といった急性頭蓋内圧亢進症状が出現します。さらに、頭蓋内圧亢進が進むと脳は頭蓋骨内で押され、脳ヘルニアを起こす可能性があります。脳ヘルニアをきたすと死に至る危険性もあります。 図2の症例では急性水頭症により頭蓋内圧が亢進し、急性頭蓋内圧亢進症状として意識障害と瞳孔不同が出現していました。 2)くも膜下出血と水頭症(正常圧水頭症) 図3において側脳室が通常より拡大しており、正常圧水頭症を起こしています。 くも膜下出血慢性期に生じる水頭症は脳室の拡大を認めますが、急性水頭症のときに描写されていた血液は頭蓋内からなくなり、画像上では描写されません。 図3 くも膜下出血発症1年後の頭部CT 本症例は前交通動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血(Hunt&Hess分類GradeⅤ)の、発症1年後の状態です。 くも膜下出血の慢性期で生じる正常圧水頭症は、急性水頭症の「交通性水頭症」の病態が緩徐に進行し、慢性的な髄液の循環障害が起こることで引き起こされます。 くも膜下出血慢性期の正常圧水頭症は交通性水頭症に分類され、通常、頭蓋内圧が亢進しないのが特徴です。そのため、くも膜下出血急性期の合併症の急性水頭症とは違い頭蓋内圧亢進症状はみられません。 くも膜下出血慢性期の正常圧水頭症の症状として、歩行障害、尿失禁、認知障害の3徴候が10~37%出現します1(表1)。これらが出現する原因はいまだ解明されていませんが、この3徴候の特徴を理解し観察することは正常圧水頭症を疑うきっかけにつながります。 表1 脳室拡大による水頭症の3徴候 歩行障害●歩幅の減少●足の挙上低下●両足を開いて歩く●不安定な歩行など 尿失禁●頻尿●切迫性尿失禁●尿意に関する意識の低下で生じる尿失禁など 認知障害●前頭葉障害(無関心、集中力低下、作業時間の延長) しかし、くも膜下出血慢性期の水頭症はくも膜下出血発症時に意識障害を伴うことや患者本人が症状を自覚していないことも多いため、日々の状態から変化が生じているか継続的に観察することが大切です。 図3の症例ではくも膜下出血により意識障害が残り、その後正常圧水頭症により、歩行障害と尿失禁が出現していました。 こちらもチェック!●意識障害の患者での画像を見る際の前提となる知識意識と「ABC」の関係とそれぞれの異常のチェックポイントなどを紹介しています。 水頭症の画像からケアで予測すべきことは? 1)急性水頭症とケア くも膜下出血後の急性水頭症は、出血により急激に脳室やくも膜下腔の容積が増えることで頭蓋内圧が亢進し脳ヘルニア(図4)となり、死につながる危険性があります。 図4 くも膜下出血による急性水頭症と脳ヘルニア 画像上、出血量が多い場合や急性水頭症を起こしている場合には、急性頭蓋内圧亢進症状や表2の症状の出現がないかを観察することが大切です。 表2 脳ヘルニアのサイン ●急激な意識障害●瞳孔・対光反射異常●運動麻痺●異常肢位(除脳硬直・除皮質硬直)●呼吸障害●バイタルサインの異常(血圧上昇・除脈)●噴水様の嘔吐 など また、くも膜下出血で起こる急性水頭症は、頭蓋内圧を亢進させることで脳血流が低下し、脳血管れん縮を引き起こす要因にもなります(くも膜下出血の画像の見方とケアでの活用ポイント参照)。 急性水頭症による頭蓋内圧亢進を悪化させないために、脳室にドレーンを挿入し、体外に脳室に貯留した髄液・血液を排泄させるドレナージ術などの救命処置を行う場合もあります。 2)正常圧水頭症とケア くも膜下出血慢性期の正常圧水頭症は代表的な3徴候(歩行障害・尿失禁・認知障害)に加え、意識障害を伴っていることが多いです2。また、症状も水頭症が増悪することによりADLを著しく低下させるほか、転倒転落などの事故を起こすリスクが高くなります。 そのため、意識レベルや症状の変化(表3)、ADLの程度を評価しケアの内容を検討することが大切です。 このブロック以降のコンテンツは非表示になります 表3 3徴候の観察ポイント 歩行障害●歩幅や速さ、安定性、姿勢など尿失禁●尿意や排尿間隔、排尿・失禁回数、尿量など認知障害●認知機能検査▼Mini Mental State Examination(MMSE)▼長谷川式簡易知能評価(HDS-R)▼Trail Making Test(TMT) など 具体的なケア方法としては、歩行状態に合わせた補助具の使用や介助方法や排尿パターンから失禁しないための排泄介助、日中の活動を促すための援助(離床や院内デイケアへの参加など)を行います。 また、意識障害や認知障害により、転倒転落や点滴等の自己(事故)抜去などのリスクが高くなり、それを予防するために身体抑制がされることがありますが、可能な限り身体抑制を行わないように患者さんの日常生活パターンを把握し、患者個々に合った介入ができるようアセスメントすることが重要です。 * 水頭症患者は自己の症状に対して認識していないことがあります。症状の程度は画像所見とともに治療を検討する指標にもなるので、日々の生活のなかでどのような症状が出現しているのかを観察し、気づき、適宜医師へ報告する必要があります。 治療終了後は水頭症が再発する可能性もあるため、退院時には家族にも水頭症の症状や合併症などを指導することも大切です。 水頭症の治療の進み方 水頭症の治療は、脳室やくも膜下腔に過剰に貯留した髄液や血液を排泄させることを目的とした外科的処置を行います。 1)急性期の治療:ドレナージ術と管理 くも膜下出血の急性期では、急性水頭症が進行し、頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアが危惧される場合に、頭蓋内圧の低下や血液を排泄させることを目的にドレナージ術が行われます。 ドレナージ術の種類として一般的に「脳室ドレナージ」(図5)や「腰椎ドレナージ」が選択されます。 図5 脳室ドレーン挿入による脳室の変化 医師の指示のもとドレーン管理を行い、意識レベルや神経症状の変化やドレナージによる排液の状態(色・量・性状)を観察します。 過剰排泄による低髄圧症状(頭痛・めまい・嘔吐など)や脳挫傷、排泄不足による頭蓋内圧亢進に注意が必要です。 ドレーンからの感染やルートの破損や抜去にも注意が必要です。 2)慢性期の治療:髄液シャント術と管理 正常圧水頭症に対して、脳室やくも膜下腔に貯留した髄液を頭蓋外の体腔(腹腔や心房など)に短絡管(チューブ)をつないで排泄させる「髄液シャント術」が行われます。この治療は、くも膜下出血の正常圧水頭症のみでなく交通性水頭症や非交通性水頭症で幅広く行われます。 髄液シャント術の適応として、画像所見で水頭症を認め、髄液排除試験(タップテスト)を実施し、症状が改善される場合に適応が判断されます。 髄液シャント術には図6があり、一般的にはV-Pシャントを用いることが多いです。 図6 髄液シャント術(イメージ) (文献3を参考に作成) 髄液シャントを挿入後には、定期的に頭部CTやMRIを撮影し水頭症の改善の有無を評価します(図7)。 図7 V-Pシャント挿入による脳室の変化 手術直後は、穿刺部の出血(頭蓋内出血など)やけいれん、髄液の漏れを起こす可能性があります。また、シャントチューブという異物を体内に留置するため創部感染や髄膜炎、腹膜炎を起こすリスクがあります。 シャントチューブの閉塞は水頭症が悪化する場合があり、逆に過剰に流出すると低髄圧症状を引き起こす可能性があります。場合によっては、再度手術が必要となることもあるため、症状が悪化した場合はすぐに医師へ報告する必要があります。 MRI後、シャントの圧設定が変わっていないか確認を 現在使用されているシャントチューブには圧設定が可能な「圧可変式バルブ」がついているため、必要に応じて圧設定を変更することがあります。 この圧可変式バルブがついているシャントが挿入されている患者さんに対してMRIを撮影する際には、MRIの磁気で圧設定が変更される可能性があるため、MRI撮影前後で頭部レントゲンを撮影して設定が変わっていないかを必ず確認します。 (第7回) 引用文献1.日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2021.協和企画,東京,2021:169.2.石垣正恒:正常圧水頭症.太田富雄 総編集,脳神経外科学Ⅲ 改訂12版,金芳堂,京都,2016:2063.3.前掲書2;2069. 参考文献1.荒木芳生:特集5 水頭症.ブレインナーシング 2014;30(5):32.2.張家正:くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)続発性正常圧水頭症の画像診断.小川彰監修,中川原譲二,佐々木真理 編,見て診て学ぶ 脳卒中の画像診断 ─ 画像診断法の基礎から臨床応用まで─,永井書店,東京,2008:419-430.3.馬場元毅:脳血管障害、髄液循環障害(水頭症).馬場元毅,絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版,医学書院,東京,2009:209,231-235.4.医療情報科学研究所 編:病気がみえるVol.7脳・神経. メディックメディア,東京,2012:154. この記事を読んだ方におすすめ●画像検査の情報を看護に活かすための見方と注目ポイント●X線画像やエコー画像の原理などを解説!観察とケアがつながる画像●そのほかの連載記事はこちら ※この記事は『エキスパートナース』2017年2月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
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【連載まとめ】心電図波形の読み方の要点を解説
代表的な18種類の不整脈の波形が読めるように、波形の読み方の要点をコンパクトにまとめました。知っておきたいポイントがぎゅっと詰まった、全24回の連載です。 【第1回】洞調律の心電図波形の読み方 〈目次〉●洞調律の特徴は?●洞調律を理解するために重要な刺激伝導系 詳しくはこちら 【第2回】P波とは?QRS波とは?心電図波形の各部の名称 〈目次〉●心電図波形の各部の名称を紹介(P波/QRS波/ST部分/T波/PQ間隔/QRS時間(間隔)/QT時間/PP間隔/RR間隔) 詳しくはこちら 【第3回】サイナス(洞調律)の心電図波形の読み方 〈目次〉●サイナス(洞調律)の特徴は?●心拍数が変化するとサイナス(洞調律)はどうなる?・洞徐脈(sinus bradycardia)・洞頻脈(sinus tachycardia) 詳しくはこちら 【第4回】洞徐脈の心電図波形の読み方 〈目次〉●洞徐脈の特徴は?●無脈性電気活動(PEA)、房室接合部調律との違いは?・洞徐脈の場合はまず薬剤の影響を確認・房室接合部調律へ移行する可能性も 詳しくはこちら 【第5回】洞頻脈の心電図波形の読み方 〈目次〉●洞頻脈の特徴は?●心房細動(AF)、発作性上室頻拍との違いは?●洞頻脈の原因とは?・心房細動(AF)に移行している場合もある 詳しくはこちら 【第6回】洞不全症候群(SSS)の心電図波形の読み方 〈目次〉●洞不全症候群の特徴は?●Rubenstein分類 詳しくはこちら 【第7回】房室接合部調律の心電図波形の読み方 〈目次〉●房室接合部調律の特徴とは?●「P波が出ていない」とはどんな状態? 詳しくはこちら 【第8回】心房期外収縮(PAC)の心電図波形の読み方 〈目次〉●期外収縮と相対不応期の重なりに注意●心房期外収縮の特徴は?・心房期外収縮の二段脈がポイント・多発する場合は循環血漿量不足の疑いあり 詳しくはこちら 【第9回】心室期外収縮(PVC/VPC)の心電図波形の読み方 〈目次〉●心室期外収縮(PVC/VPC)の心電図波形の特徴は?●Lown分類で重症度を判断●心室期外収縮(PVC/VPC)とともに見るべき検査データは? 詳しくはこちら 【第10回】心電図波形の陰性化のメカニズム 〈目次〉●陰性化とは?・P波が陰性になる・QRS波が陰性になる・T波が陰性になる 詳しくはこちら 【第11回】心房細動(AF)の心電図波形の読み方 〈目次〉●心房細動の特徴は?●心房細動により心拍出量が下がり、血圧が低下・輸液を絞ったことでAFに移行する場合も 詳しくはこちら 【第12回】心房粗動(AFL)の心電図波形の読み方 〈目次〉●心房粗動(AFL)の特徴は?・心房粗動(AFL)では、ドクターコールと12誘導心電図は必須 詳しくはこちら 【第13回】発作性上室頻拍(PSVT)の心電図波形の読み方 〈目次〉●発作性上室頻拍の特徴とは?・PSVTが出現したらどうする? 詳しくはこちら 【第14回】心室頻拍(VT)の心電図波形の読み方 〈目次〉●心室頻拍の特徴は?・脈が触れなければ即CPR 詳しくはこちら 【第15回】心室細動(VF)の心電図波形の読み方 〈目次〉●心室細動の特徴とは?・心室細動(VF)は実質上の心停止、すぐにドクターコールを 詳しくはこちら 【第16回】房室ブロックの心電図波形の読み方 〈目次〉●房室ブロック(AVB)とは?・Ⅰ度房室ブロック・Ⅱ度房室ブロック・完全房室ブロック 詳しくはこちら 【第17回】Ⅰ度房室ブロック(Ⅰ°AVB)の心電図波形の読み方 〈目次〉●Ⅰ度房室ブロックの特徴とは?・通常は経過観察でOK 詳しくはこちら 【第18回】Ⅱ度房室ブロック(Ⅱ°AVB)の心電図波形の読み方 〈目次〉●ウェンケバッハ型(Wenckebach型)/モビッツⅠ型(MobitzⅠ型)の特徴とは?・基礎疾患がなければ予後は良好●モビッツⅡ型(MobitzⅡ型)の特徴とは?・モビッツⅡ型はペースメーカーの適応 詳しくはこちら 【第19回】完全房室ブロック(Ⅲ°AVB)の心電図波形の読み方 〈目次〉●完全房室ブロック(Ⅲ度房室ブロック)の特徴とは?・循環動態が保たれているかをアセスメント 詳しくはこちら 【第20回】房室解離の心電図波形の読み方 〈目次〉●房室解離の特徴は?●房室解離が起こる原因は? 詳しくはこちら 【第21回】右脚ブロック・左脚ブロックを見るために必要な「電気軸」とは? 〈目次〉●軸偏位とは?●軸偏位の原因となる疾患●12誘導心電図で確認すること 詳しくはこちら 【第22回】右脚ブロック(RBBB)の心電図波形の読み方 〈目次〉●右脚ブロックの特徴とは?●右脚ブロックとはどんな状態? 詳しくはこちら 【第23回】左脚ブロック(LBBB)の心電図波形の読み方 〈目次〉●左脚ブロックの特徴とは?●左脚ブロックとはどんな状態? 詳しくはこちら 【最終回】QT延長症候群の心電図波形の読み方 〈目次〉●QT延長症候群の特徴とは?●後天性QT延長症候群の原因とは? 詳しくはこちら そのほかの連載はこちら
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