白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など、血液がんの最新の治療・ケアについて解説。今回は血液がん患者の治療終了後の社会生活を支えるために大切な、がんサバイバーシップについて紹介します。

「治せる病気」となった現在におけるがん治療の“成功”の変化

 がんの診断・治療を受けた人々(がんサバイバー)は、がんを乗り越えたあと、「患者さん」から「社会の一員」に戻らなくてはなりません。

 血液がんが「治せる病気」となった現在、患者さんへのサポートは診断~治療終了まででなく、治療終了後の社会生活面も重視する必要があります。 がん治療の成功の定義は、「生きているかどうか・病気が再発しているかどうか」から「QOL を維持して生きているかどうか」に変わっています。

社会全体でがんサバイバーを支えるがんサバイバーシップという考え方

 がんサバイバーはがんを乗り越えたあと、さまざまな課題に直面します。がんが治ったかどうか(再発)、がん治療の長期的な合併症が出るのではないかという不安や恐怖はもちろんのこと、がん患者への偏見や治療による合併症・体力の低下などから、周囲との人間関係やライフスタイルに変化が生じることもあります。

 若年者では、元の学校にどうやって復帰するか(復学)、次のステップにどうやって進学するか(就学)、現役世代では元の仕事にどうやって復帰するか(復職)、元の仕事に戻れない場合はどうやって新しい自分に合った仕事をみつけていくか(就労)、治療だけでなく生活していく費用をどのように捻出していくか(経済的問題)など、個々の患者さんごとに社会に戻るための障壁は異なります。

 がんサバイバーもふつうの成人と同じように、恋愛や結婚、性生活、挙児(きょじ)・育児などの悩みを抱きます。 このようながんサバイバーが、治療後の生活で抱える身体的・心理的・社会的なさまざまな課題を、社会全体が協力して乗り越えていくという概念がんサバイバーシップといいます。

治療の進歩に伴い、増してきている多職種ケアの重要性

 血液がん患者の治療法の進歩に伴って、治療前・治療中からの多職種ケアで治療を受ける患者さんを支えて安全に治療を完遂することで、治療効果を高めるだけでなく、治療後のQOLも高く維持することができます。

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