がん終末期では、バイタルサインや心電図モニタの数値にとらわれず、臨死期の症状を見きわめることが重要です。臨死期の身体的徴候や看取りに向けた家族支援など、看護師が知っておきたいポイントを解説します。
「がん終末期ケアの“やってはいけない”」の連載まとめはこちら
数値にとらわれて、臨死期の症状を見逃してはいけない
〈理由〉バイタルサインだけでは予後を示す指標となる根拠が、現時点では見受けられないから
バイタルサインや心電図モニタの数値だけにとらわれるのは危険
現時点で、バイタルサインが患者さんの予後を示すパラメータとなるエビデンスはありません。
そのため、バイタルサイン・心電図モニタの数値にとらわれて、「意識混濁」「終末期低活動性せん妄」など臨死期の身体的徴候の症状を見逃してはいけないと考えます。
数値だけでなく日ごろから患者さんを看ている私たちの視点を大切にし、いつもとの違いを把握していく必要があるでしょう。
医療者間で現状を共有する
患者さんの死を予測したときは、多くの病院で習慣的に、頻回にバイタルサイン測定を実施し、心電図モニタやパルスオキシメータで常時観察していることも少なくないのではないでしょうか。
もちろん、夜勤帯など看護師の少ない現場において複数の患者さんを担当している現状からは、危機管理について言えば、一概にモニタ類をすべて排除することは難しいでしょう。
しかしいずれにしても、看護師が患者さんの臨死期の身体的徴候を見逃してしまっては話になりません。そこから読み取れる予後のめやすについて医療者間で現状を共有し、 死に向かう患者さんの苦痛を最小限にすることを考えていく努力が必要となります。
臨死期の身体的徴候とは?
終末期がん患者さんの臨死期(予後が1週間程度)における徴候について、看護師が身につけておきたい知識を表11に示します。
表1 亡くなる徴候と出現時間
死前喘鳴
出現率:35%
特徴:咽頭部でごろごろと音を立てながら呼吸をする
死亡前に徴候が現れた時間(平均±標準偏差/中央値):57±82/23時間前
下顎呼吸
出現率:95%
特徴:呼吸とともに下顎が動く呼吸の仕方
死亡前に徴候が現れた時間(平均±標準偏差/中央値):7.6±18/2.5時間前
四肢のチアノーゼ
出現率:80%
特徴:四肢末端から、循環不全を示す色調の変化が見られる
死亡前に徴候が現れた時間(平均±標準偏差/中央値):5.1±11/1.0時間前
橈骨動脈の脈拍が触知できない
出現率:100%
特徴:循環不全の結果、血圧が低下し、手関節部での脈を触知できなくなる
死亡前に徴候が現れた時間(平均±標準偏差/中央値):2.6±4.2/1.0時間前
(文献1より引用)
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