20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
医師にとって良い看護師は
素直に命令を黙って実行する看護師であり
それは必ずしも患者にとって
よい看護師であるとは言えない
「食欲のない患者がやっとお箸をとったと思ったら、“点滴しよう、時聞がない”と言って医師が来るのです。〈ちょっと待って下さい。今お食事中ですから〉と言いたいのだけど、このチャンスを逃したら、もう医師をつかまえるのは並大抵ではありません。仕方なしに点滴の準備をして、悪いと知りつつ患者のもとにいきます。患者の方も心得ていて、お箸をおき、お膳を横におしやるのです」
そして食事の時間を中断された患者は二度と箸を取ろうとはせず、そのまま膳は下げられて、看護記録には摂取量ゼロと書かれる。そして食欲のない患者として点滴の指示は半永久的に続くのである。(中略)
医師にとって良い看護師は、素直に命令を黙って実行する看護師であり、それは必ずしも患者にとって良い看護師であるとは言えない。
(出典:『看護の自立 現代医療と看護婦』98ページ、勁草書房)
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