20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

どんなにしばしば死に
立ち会う機会を体験しても
いつでも一人のひとの

人生の終焉を悲しみ
生命をいとおしむ心を

忘れてはならない

 強調したいことは、現代の人間の世界において、“よき生”はあっても、“よき死”はないのではないだろうかということである。観念的な世界では、“よき死”“望ましい死”はあるのかもしれない。だが、“死”はやはり生身の人間にとって、不安なことであり、肉親や身近な人の死は悲しくつらいものであると思う。

 死をおそれ、死を嘆くことそのことが、“生命を守る”という看護や医療の強い動機ともなるのではないか。したがって、どんなにしばしば死に立ち会う機会を体験しても、いつでも一人のひとの人生の終焉を悲しみ、生命をいとおしむ心を忘れてはならないのである。

(出典:『救命と看護 急変 ・ 悪化事例の看護過程』7ページ、医学書院)

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