患者さんの訴えから重大な疾患を見きわめて、すぐに対応するには?今回は胸痛を起こすキラーディジーズ「急性大動脈解離」の症状やメカニズム、初期対応について紹介します。

急性大動脈解離の症状

●突然の胸背部激痛
●痛みの部位が移動する
●血圧の左右差
●脈拍の欠損
●めまい、頭痛、意識障害
●対麻痺

急性大動脈解離のメカニズムと特徴的な所見

突然の胸背部の激痛、痛みの移動が特徴

 急性大動脈解離は、大動脈壁の内膜が裂けて中膜が内外2層に解離する病態です。本来の動脈内腔(真腔)と新たに生じた解離腔(偽腔)の2層の状態となります。特徴的な特徴は、「突然の胸背部の激痛」です。解離の進行によって、「痛みの部位が胸部から背部に移行する」経時的な変化を示します。

 そして、急性心筋梗塞の胸痛は数分かけてピークに達するのに対し、大動脈解離の胸痛は急激に(1分以内)にピークに達します1。同じ「突然の発症」という表現でも、進行の速度や部位、性質が異なるため、問診の際にこれらの特徴を確認することが大切です

急性大動脈解離に合併する危険な状態をアセスメント

 大動脈起始部の病変では心タンポナーデ大動脈弁閉鎖不全症の合併のリスクがあり、鎖骨下動脈病変の場合は血圧の左右差(20mmHg以上で左右の血流差があると判断)、脈拍の欠損を認める場合があります。

 また、急性心筋梗塞を合併する場合もあります。逆にいえば、急性心筋梗塞が疑われる場合も、大動脈解離の存在の可能性も念頭に置いたアセスメントを行いましょう1。特に右冠動脈への閉塞を合併する可能性が高いため、右冠動脈閉塞を疑う心電図所見(Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導でのST上昇)や、徐脈心窩部への放散痛を認める際には注意します。

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