20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら
現れている症状が一見フィジカルな場合でも
その背景に社会的な問題や
人間関係が影響していることはよくある
現れている症状が、一見フィジカルな場合でも、その背景に社会的な問題や人間関係が影響していることはよくある。
パーキンソン病で在宅療養中のO夫人の場合をみよう。10日間も便秘が続き、通院先の神経内科で緩下剤の処方を受けたとの、介護者の夫からの情報を得た。痩せが目立ち体重も減少しているため、看護師らは食事摂取に問題があると推測して、夫に確かめたが「毎日食べている」との答えであった。
夫人は、やや見当識レベルが低下しているため、訪問して生活状態を観察したところ、次のような事情が判明した。経済的な事情と、夫の介護疲れも加わって、1日1食だけ弁当を購入し、 2人で分け合って食していたのである。本来、パーキンソン病には便秘はつきものであるとして、フィジカルな面のみに集中していたら、問題は解決しなかっただろう。
(出典:『看護実践 経験知から創造へ 健和会臨床看護学研究所20年の歩み』12ページ、看護の科学社)
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