褥瘡・創傷の看護ケアのコツを豊富な症例写真とともに解説。今回は浮腫がとても強いときの、洗浄と保湿による皮膚のケアについて紹介します。
この記事は『エキスパートナース』2018年6月号特集を再構成したものです。
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浮腫のある皮膚の保湿ケア方法は?
〈症例〉
●足部(足首~足先)にみられる浮腫。皮膚が伸展して引き伸ばされている。
●浮腫の程度は、触るとやわらかく、指で押すと後が残り、すぐにはもとに戻らない。
●皮膚は乾燥しており、足を動かすと膜が張ったように皮膚表面が突っ張って見える。
●自分で足を動かすことができず、接するものによる跡が残りやすい。
●踵は、短時間で接触部に圧迫による丸みの変形がみられる。

皮脂を取り過ぎないように洗い、伸びのよいクリームで保湿
浮腫のある皮膚は、菲薄(ひはく)で乾燥しやすく、圧迫や摩擦で亀裂などが生じやすくなります。 亀裂による炎症や感染を予防するために清潔にするとともに、保湿ケアで皮膚の弾力性を維持して亀裂を予防する必要があります。
褥瘡・創傷ケア:洗浄のポイント
皮脂を取り過ぎないように熱い湯を避け、低刺激性の洗浄剤を泡立てて、皮膚を擦らずに泡のクッションで洗浄します。水分を取る際には、吸水性がよくやわらかい不織布で押さえ拭きします(図1)。
また、皮膚の負担軽減のために、保湿成分が含まれた洗い流さないタイプの洗浄剤を活用するのもよいでしょう(図2)。
図1 水分の押さえ拭きに適した製品(医療用不織布)の例

図2 保湿性絵分が含まれる、洗い流さないタイプの洗浄剤の例


褥瘡・創傷ケア:保湿のポイント
皮膚が乾燥していると摩擦係数が増えるため、保湿して皮膚障害を予防します。乾燥しやすい人は、角質層の水分保持機能とバリア機能が低下しています。
角質層の水分保持を補うために、角質層に浸透しやすい角質細胞間脂質や NMF(natural moisturizing factor:天然保湿因子)を含む保湿剤(モイスチャライザー効果)を使用しましょう。
また、水分がすぐに蒸発しないよう、皮脂膜と同じような油脂性の保湿剤(エモリエント効果)を使用すると持続時間が長くなり、効果的です。
また、伸びのよいクリームを使用することで、クリームをなじませるときに生じる摩擦などの負担を軽減することができます。乾燥が強い時期は1日2~3回塗布し、症状が軽減したら回数を減らしていきましょう1。
今回は、やわらかく伸びのよいクリームで、刺激の少ない弱酸性、ヒアルロン酸ナトリウムを含み保湿力が高いリモイス®バリアを使用しました。皮膚になじみ、塗布した後にべとつきません。擦らずに塗ることがポイントです(図3)。
なお、皮膚どうしが密着する部位では、滑りのよい撥水クリームやオイルを使用します。
図3 保湿のしかたとその効果

図4 やわらかく伸びのよいクリームの例

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