たくさんの種類がある看護書。「どの本を買えばいいんだろう?」と迷うこともあるかと思います。そんな悩みをもつ人に向けたトークイベントが、紀伊國屋書店新宿本店で開催されました。登壇したのは、本好きの現役看護師たち。当日の様子をレポートします!

看護師のかげさんのつぶやきがイベント開催のきっかけに

 9月28日、紀伊國屋書店新宿本店3階アカデミック・ラウンジで行われたのが「『看護師さんと本屋に行こう』トークイベント~自分に合った看護書の探し方~」。約40人の参加者の前に、看護師のかげ(@877_727)さん、看護師のおとも(@99emergencycall)さん、ヨっちゃん@看護師(@yochan_desuyo)さん、まつなが(@matsunaga_nasu)さんの、本好き看護師4人が登壇しました。

 約20人の現役看護師がメンバーとなって企画したこのイベント。きっかけは、看護師のかげさんのXでのつぶやきがだったのだとか。
 「看護師が本選びを学べる機会があればと考えていたところ、たまたま紀伊國屋書店さんからイベントの話題を出していただいたんです。ではこういうことをしたいな、とXでつぶやいたら、20人近くの有志の看護師の方が集まってくださいました」(看護師のかげさん)

電子書籍ではなく、紙の本を買う理由は?

 ここからは4人のトークを抜粋してご紹介します。最初のテーマは「なぜ電子書籍ではなく、紙の本を買うのか」。まつながさんとヨっちゃん@看護師さんが答えてくれました。

まつなが

高校時代、電子辞書が普及しているなかで学校の先生は紙の辞書を推していたんです。英語辞典、英和辞典、国語辞典など重い荷物を毎日背負っていたのですが…(笑)紙だとページを開いたときに周辺の情報も目に入り、新しい情報を知られるんですよね。なので、調べたいことはなるべく紙の本で、というのが文化として染みついている気がします。

ヨっちゃん@看護師

電子書籍にも頼っていますが、紙の本はコレクター精神を大いに刺激してくれる良さが根本にありますね。あとよく見るページは癖になってすぐに開くことができる、そうした物理的な速さも魅力だと思います。

本を買うのはどんなとき?

 続いては、「どんなときに本を買う?」とのクエスチョン。看護書以外の本についても話が広がりました。

看護師のかげさん

私は臨床と知識を結びつけたいという思いがあって、いつも夜勤明けにフラフラ本屋さんに寄って帰ります。仕事中に臨床で学びたいと感じたことを、その思いが温まっているうちに本を買うといいよ、と後輩にも言っていますね。

看護師のおとも

確かにほしいな、これが必要だなと考えたときに本を買うのは大事ですよね。では逆に、勉強ではなく医療に関係のない本を買うときはいかがですか。

まつなが

ふらっと寄ったときに衝動買いすることが多いです。日中仕事をしているとなかなか買いに行けないこともあり、これはこのタイミングじゃないと買えないのではと思ってしまって…

同じテーマの本がたくさん…どう選べばよい?

  褥瘡、急変対応、フィジカルアセスメントなど、同じテーマの本が多数あるとどれを買うか悩むことも。絞り込むコツはあるのでしょうか。

看護師のかげさん

私はまず目次を見るんです。看護書だとたいていは内容が小項目になっているので、自分が学びたいことが載っているかを確認します。知りたい単語を索引で探してみるのもいいですよ。本文を見がちだと思うんですが、最初と最後を見るのはおすすめです。

ヨっちゃん@看護師

知りたい情報が載っているか、自分にとって読みやすいかなどは気にしていますね。でもそれだけではなく、知りたいこと以外の情報もたくさんあって、知識を深め、視野を広げてくれるような本というのが選ぶ基準になっています。

看護師のおとも

僕はかげさんと似ていて、前書きや後書きを見ますね。その本がどういう人に向けてどんな思いで、何を重点的に書かれたのかが記されていると、初学者向け、少しアドバンス、超エキスパート向けといったことがわかるんです。あとは参考文献の数。どのくらいエビデンスを引っ張ってきているのかなというのはチェックしたりします。

どんなときに書店に行く?

 「コロナ禍以降、書店に行かなくなった」との風潮が、この企画が立ち上がった理由の1つだったといいます。あらためて、書店に行くのはどんなときなのかが話題となりました。

まつなが

このジャンルについて何か1冊ほしいなと思ったときに、本屋さんに足を運びます。漠然とこれについて知りたいなとか、ほかの用事のついでにちょっと寄ろうかなとか。30分のつもりが、気づいたら2時間経っていることもあります(笑)

ヨっちゃん@看護師

僕もふらっと立ち寄ることが多いですね。あと、例えば人工呼吸器の本を探しているとき、解剖や生理学が知りたくなって、関連した本をまた探し出すんですよ。すると、次は血液ガスとかも知っておきたいな…というような気持ちが次々関連図みたいに生まれてきて、同じようなコーナーでずっと本を漁っています。

看護師のかげさん

ネットで情報を得るということでは収まりきらない、臨床の醍醐味を結びつけてくれるきっかけは本だと思っています。文字が多い、ですます調、箇条書きなど、書籍によって特徴はいろいろ。多くの種類のなかから自分に合う本を探すために、書店に行っています。

看護師のおとも

こうしたイベントを目当てに書店を訪れる人もいると思います。どんな理由でも本屋さんにまず行って、ちょっと新しい世界、 普段読まない本を手に取ってみると楽しいですよ。

価格のハードルはどうやって越えている?

 ほしい本を見つけたものの、値段が高くて購入を迷うこともあります。そんなとき、気持ちに折り合いをつけるには?

看護師のかげさん

看護師をずっと続けようと思っているので、価格は考えずに買いがちです。迷ったら2冊買う。医学書と比べるとだいたい看護書は半分の値段で買えるので安いと思いつつ、一般書よりは高いし、後輩が高いと言っているのも聞きます。ただ、高いからこそ自分に合うものをしっかり選ぶことによって、価格のハードルを感じずに必要な出費だと思えるんじゃないでしょうか。

看護師のおとも

予算を大幅に超えるときは、この本は今買わないとなくなっちゃいそうだなとか、 今買ってちゃんと売れてることを証明しないと次の本が出ないかもしれないとか、いろいろと考えて買いますね。ちなみに僕のなかで一番価格のハードルを超えたのは、ジャスト1万円の看護書です。

新しい情報の集め方は?本を読み飛ばしてしまう場合は?

 最後は質疑応答の時間。参加者から質問が寄せられました。
 「新しい分野の情報はどのように集めていますか」との声には、「コロナ禍では、勤務先の病院の感染対策部門から出されている情報をまずはチェック。また、厚生労働省や大学などの発信源が確かな情報をネットで集めていました」と、看護師のかげさん。
 
 「あとは雑誌も活用しますね。看護雑誌だと最新の情報をかいつまんで学ぶことができるので、アップデートしたい分野があったら過去1年くらいのバックナンバーをさかのぼって買うようにしています。書籍はまだ出ていない、ネットだとちょっと不安、みたいなところを雑誌は解決してくれるんじゃないかなと思います」(看護師のかげさん)

 看護師のおともさんも「職場に詳しい先生がいたら聞いてみるのもいいですよね。また、SNSで医療系の出版社や書店のアカウントをフォローしていると、新刊情報にすぐ気がつけます」とアドバイス。

 また、「買った本を読み飛ばしてしまう」との悩みには、看護師のおともさんが「あっさりでも、本を手に取るだけでもいいのかなと思います。そのとき理解できなくても、何年か後にここに答えがあったんだとか、今ならこれが理解できるということも。そういう瞬間をお楽しみに残しておいてもいいんじゃないでしょうか」と答えていました。

看護師たちおすすめの本が紀伊國屋書店新宿本店に集合

 現在、紀伊國屋書店新宿本店の6階新宿医書センターでは「看護師と本屋さん選書フェア」を開催中。イベントに登壇した4人を含む看護師たちが選書した本が集合しています。看護書はもちろん、そのほかのジャンルの本も並んでいるので、チェックしてみては。