思い込みで行ってしまった日常的な治療・ケアが症状の悪化や事故の原因になることも。今回は、腹痛時の温罨法の危険性について。温罨法が禁忌となる場合や、ブルク徴候、筋性防御がみられる場合、温罨法の効果などを解説します。

腹痛時、すぐに温罨法を行ってはいけない!

正しく理解

炎症時の温罨法はキケン
●腹膜刺激症状がある場合は、温罨法によって炎症反応が促進され、疼痛や病態の悪化を招くことがある
●温罨法は腸蠕動の促進や便秘の改善には効果的だが、腸管血流や疼痛への影響の程度は明らかになっていない

腹痛が起こる原因は?

 腹痛は、腹部に自覚される疼痛全般を意味します。腹部には消化器系、循環器系、生殖・泌尿器系など重要臓器があり、腹痛の種類や部位によって原因となる疾患や病態が異なります(図11。腹痛を起こす原因としては、以下が挙げられます。

①腹部管腔臓器の過度の収縮・伸展
②腹部臓器の虚血
③腹膜・粘膜の炎症
④肝臓など被膜の伸展
⑤腹壁の異常
⑥神経への直接浸潤
⑦代謝異常

図1 疼痛の部位と原因疾患

疼痛の部位と原因疾患
(疼痛部位は文献1より引用)

 腹痛は神経生理学的見地から、内臓痛体性痛関連痛の3つに分類されます(表1)。通常は、内臓痛が最初に起こり、進行するにつれて体性痛や関連痛を訴えるようになります。腹痛のなかには急性腹症のように緊急処置が必要な病態や、急性心筋梗塞のように腹部に原因がなくとも致命的となり得る疾患もあるので、症状の特徴をよく理解することが大切です。

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