最新の診療報酬と介護報酬の動向をチェック!2024年度(令和6年度)診療報酬改定について、病棟の看護師が知っておきたいポイントをまとめています。

※この記事は『エキスパートナース』2025年11月臨時増刊号「入退院支援&社会資源の最新ポイント」の内容を抜粋したものです。

 2024年度(令和6年度)診療報酬改定は、診療報酬と介護報酬の同時改定の年でした。改定の概要は医療・介護サービス連携を推進するために、特に生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取り組みとして、入退院支援体制に関する評価が見直されました
 ポイントを以下で解説します。

充実した支援、地域との協働に対する取り組みへの加算

 患者が安心して退院し、地域での生活や療養にスムーズに移行できるよう、医療機関にはよりいっそうの支援が求められています。
 
 生活に配慮した支援の強化を目的として、多職種による包括的な支援と退院支援計画の充実が評価対象となりました。これにより、退院支援計画の内容に、リハビリテーションや栄養管理および口腔管理などを含む、退院に向けて入院中に必要な療養支援の内容ならびに栄養サポートチーム等の多職種チームとの役割分担を盛り込むと明記することが示されています。そのため、入院中に栄養指導やリハビリテーションが計画され、実施された患者が退院する場合には、退院先の医療機関や介護施設、在宅サービス事業所などへ指導内容などの情報提供を文書で行うことが定められました。

 また、入退院支援加算の対象となる「退院困難な要因を有している患者」に、特別なコミュニケーション支援を要する患者強度行動障害の状態の患者が追加されました。これらの患者に対して、入院前に医療機関と本人・家族や障害福祉サービス事業所等と入院中の支援について情報を共有し、事前に調整を行った場合に、入院事前調整加算として200点の評価が新設されました。

入退院支援加算1の要件:地域連携する方向へ誘導する要件の強化

 改定前では、入退院支援加算1の施設基準で求める連携機関数について、急性期病棟を有する医療機関では病院・診療所との連携機関数が25以上と定められていました。

 改定後は、退院後の生活を見すえた支援体制の構築が求められ、連携機関の数は同じものの、特定の条件が追加されました。連携機関について、専門病院入院基本料(13対1入院基本料を除く)を算定する病棟を有する場合は、当該連携機関の数のうち、1以上は保険医療機関であることが求められます。また地域包括ケア病棟を有する医療機関では、連携機関の数のうち5以上は表1の事業者であることが求められています。

表1 入退院支援加算1の施設基準(地域包括ケア病棟を有する医療機関)
入退院支援加算1の施設基準(地域包括ケア病棟を有する医療機関)の表

 現在、早期の退院・円滑な在宅復帰をめざして【入退院支援加算】や【入院時支援加算】が設けられており、右記のような結果が報告されています1

●入院時支援加算を取得している病棟のほうが、そうでない病棟に比べて「平均在院日数が短い」
●「退院困難な要因」に該当する加算算定患者は、急性期病棟では「緊急入院」の患者が、包括期病棟では「入院前に比べてADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要」な患者が多い

 これらをふまえて病棟の種類別にみると入院患者の抱える「退院が困難な要因」などは相当程度異なっており、入退院支援のあり方や入退院支援加算のあり方(算定要件など)も異なります。さらに、今後も高齢救急患者の増加とともに緊急入院患者の増加が見込まれるといった各データをもとに、2026年度の診療報酬改定では、「病棟種類別の入退院支援のあり方」などを検討していくことが予測されます。

入退院支援加算1の人員配置:専従・専任・兼務の配置ミスによる返還リスクに注意!

 入退院支援加算1を算定するにあたっては、各病棟に専従の退院支援を担う専任者を配置する要件があります。ここでの注意点は、「病棟専任担当者」は原則当該病棟での退院支援・地域連携業務に専従する必要があります。1人で2病棟(合計120床)まで担当可能(1病棟あたり60床を想定)です。

 病棟に専任で配置されている者は、入退院支援部門の専従職員とは兼務できませんが、入退院支援部門の専任職員を兼ねることは可能です。例えば、「入退院支援部門の専任者Bさん」がそのまま「病棟担当の専任者」を兼務することは許容されますが、「専従者Aさん」が病棟担当をかけもつことはできません。また、専従者および病棟担当の専任者のいずれも「病棟夜勤の業務」を兼ねることは認められないことが多いようです。

●「入退院支援及び地域連携業務に専従する看護師」が、「入退院支援加算1を算定する病棟に配置する専任の看護師」と「精神科入退院支援加算を算定する病棟に配置する専任の看護師」を兼ねることは可能
●「社会福祉士と精神保健福祉士の両方の資格を有しており、入退院支援及び地域連携業務に専従する職員」が、「入退院支援加算1を算定する病棟に配置される専任の社会福祉士」と「精神科入退院支援加算を算定する病棟に配置される専任の精神保健福祉士」を兼ねることは可能
※ただし、いずれの場合も、配置される病棟は1人につき2病棟、合計120床までに限る

(文献2より引用)

1.厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要.
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001252073.pdf(2025.10.31アクセス)
2. 厚生労働省:事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その27)」.
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001496680.pdf(2025.10.31アクセス)

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202511増刊号表紙

エキスパートナース2025年11月臨時増刊号
入退院支援&社会資源の最新ポイント

宮本千恵美 著、行田菜穂美 著
B5・132ページ
定価:1,980円(税込)
照林社

本書は、さまざまな社会資源(制度・サービス)から看護師向けに情報を抜粋して作成したものです。情報は2025年9月現在のものです。最新の情報、市区町村ごとの制度については担当窓口でご確認ください。
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