③疫学
JBS2015の陽性率の全国調査が行われており、その結果からはニッケル、金、ウルシオール(ウルシやギンナンに含まれる)、パラフェニレンジアミン(毛染めの成分)の陽性率が高いことがわかりました1。 また患者の持参品を用いた検査では、化粧品、OTC医薬品に対する陽性率が高いという結果になっています1。
④パッチテストの方法
JBS2015は本邦での陽性率が1%以上の化学物質を組み合わせたもので、日本皮膚免疫アレルギー学会の接触皮膚炎班によって定期的に内容が吟味されています。主に接触皮膚炎の原因をつきとめるために患者の背部に貼付し、スクリーニングに用います。
JBS2015の概要を以下に示します。JBS以外にも、金属シリーズやレジンシリーズ、化粧品シリーズ、患者の持参品などを貼付することがあります。
JBS2015に含まれている接触皮膚炎を起こしやすい化学物質
金属
●硫酸ニッケル ● 重クロム酸カリウム
●塩化コバルト ●金チオ硫酸ナトリウム
●塩化第二水銀
防腐剤
●イソチアゾリノンミックス ●パラベンミックス
●チメロサール ●ホルムアルデヒド
化粧品・日用品
●ラノリンアルコール ●パラフェニレンジアミン
●香料ミックス ●ペルーバルサム
薬品
●カインミックス ●硫酸フラジオマイシン
樹脂
●ロジン ●エポキシ樹脂
● パラターシャリーブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂
ゴム関連物質
●チウラムミックス ●メルカプトベンゾチアゾール
●メルカプトミックス ●カルバミックス
●黒色ゴムミックス
植物
●ウルシオール
(文献1をもとに作成)
パッチテストは背部の傍脊柱部分に貼付し、48時間後に貼付した試薬をはがし、貼付72時間後、1週間後に判定を行います。
判定はICDRG基準*にのっとって行われます(図2)。
*【ICDRG基準】international contact dermatitis research group(国際接触皮膚炎研究班)によるアレルギー反応の判定基準。紅斑や浮腫、丘疹、水疱などによって判定する。
⑤アレルゲン(原因)の推定
症状から接触皮膚炎を疑った場合には、問診や部位から原因を推定します(文献1、p531参照)。
問診で大切なことはいつから・どのような状況で皮膚症状が出現したか、職業は何かなどの生活歴を聴取して、パッチテストにつなげていくことです。
⑥-1 治療
治療の基本は原因の除去のうえステロイド外用を行うこと、抗ヒスタミン薬を内服することですが、難治性の場合には紫外線照射を併用することや免疫抑制薬のシクロスポリンの使用を検討することもあります。
⑥-2 予防
化学物質の特徴で起こる刺激性皮膚炎の場合には、予防も大切です。コロナ流行下においては病院でも頻繁に手を洗い、マスクを長時間着用する必要があります。
手の洗浄に使う洗浄剤はもちろんですが、アルコール消毒薬も刺激性接触皮膚炎を起こします。マスクも擦れや蒸れが、刺激性皮膚炎、ざ瘡の原因になります。
手は予防的にバリアクリームを塗ること、保湿をすることが推奨されています。 マスクに関しては、口の動きに合わせて動かないように鼻にしっかり合わせること、立体的にマスクを広げることが重要です。また必要に応じたこまめな装着・着脱も大切です。
- 1.日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会:接触皮膚炎診療ガイドライン2020:523-567.
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf(2024.5.27アクセス)
この記事は『エキスパートナース』2022年7月号の記事を再構成したものです。
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