おさえておきたいこと

患者・市民参画(PPI)とは
●患者・市民が、医療者等とのパートナーシップによって、よりよい医療・研究開発に参加する動きのこと。 医療を提供する側に偏らず、 市民の視点・経験を活かすことで、 多様で個人の価値観を映した医療提供の可能性を高める

患者・市民と医療従事者、 研究者がパートナーシップのもとによりよい形をめざすこと

 患者やサバイバー、家族や支援に携わる人々(以後、患者・市民)が、医療従事者や研究者とのパートナーシップのもとに、よりよい医療と研究開発をめざす動きが広がりを見せています。

 このような動きは、「患者・市民参画(PPI)」「患者参加型」「ペイシェント・セントリシティ」などさまざまな名称で呼ばれ、日々の医療方針決めや病院運営、研究開発、医療政策など諸方面で進んでいます。

 一般社団法人PPI Japanは、国内の患者や医療従事者、研究者などさまざまな人々の相互理解と協働を推進し、“産患官学”の連携のもとに実効力のあるPPIをしています。

 同法人によると、PPIとは、患者・市民の「経験や知見・想いを積極的に将来の治療やケアの研究開発、医療の運営などのために活かしていこうとする取り組み」1です。

計画立案から実施、情報発信や社会実装まで意見交換

 研究開発の場合はイメージしづらいかもしれませんが、計画立案から実施、終了後の情報発信や社会実装に至る一連の過程で、「この研究テーマのほうがよいかもしれない」「この手法は患者さんへの負担が大きい」「この表現は誤解を招く」といった意見交換を重ね、よりよい形をめざします。

 患者・社会への一方的な情報発信や、研究開発にいわゆる被験者として協力することは、PPIと密接にかかわる重要な事柄ですが、PPIそのものではありません。 患者・市民から「PPIってなんですか?」と聞かれた際には、治験や臨床研究への参加ではないということを伝えてください

患者・市民の価値観や視点、 経験を活かす

 世界各国でPPIが広がる背景には、現場を知る人々や当事者の意見を活かすことで、よりよい医療・研究開発をつくろうという理念、そしてさらにシンプルに、自分(たち)に関する事柄なので自分(たち)がかかわるという考え方があります。
  医療を提供する側や研究する側の価値観に偏向せず患者・市民の価値観や視点、経験を活かすことで、例えば図1のような可能性が高まるかもしれません。

図1 PPIが可能とする、医療の新しいかたち
より多くの人々にわかりやすく必要な情報が届く
個人の価値観を尊重した選択が可能になる
負担が少なく、科学的にも社会的にも有意義な研究開発が実現する
1.PPI Japan ホームページ.https://www.ppijapan.org(2024.7.30アクセス)

医療分野における「患者・市民参画(PPI)」②看護とPPIのかかわり

この記事は『エキスパートナース』2023年1月号の記事を再構成したものです。
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