医療分野における「患者・市民参画(PPI)」①PPIとは

おさえておきたいこと

看護とPPIのかかわり
●すでに、 ガイドラインづくりや製薬などでPPIを意識した取り組みが行われている
●患者との行動調整など、 看護実践においてはPPIの取り組みがすでに実践されている場面も多い
●医療チーム全体でPPIを実践していくことが、 患者の闘病意欲向上や「その人らしさ」を支えることにつながる

PPIの動きは、 “産患官学”のそれぞれから出ている

 PPIやPPIを支援する取り組み例は、枚挙にいとまがありません。例えば国立がん研究センターでは、がん情報づくりや情報発信活動に参加してもらう「患者・市民パネル1を続けています。

 日本医療機能評価機構の診療ガイドラインづくり2 や、科学的根拠に基づく医療を支える世界的ネットワークとして系統的レビューを発表し続けるコクラン3 にも患者・市民が参画しています。

 研究助成機関の日本医療研究開発機構は、PPIの理念や実践手法を示した「患者・市民参画(PPI)ガイドブック4を、医薬品の承認審査や安全対策を司る医薬品医療機器総合機構は、患者等から得た情報の利活用と適切な情報提供の基本方針を定めた「患者参画ガイダンス」5をそれぞれウェブ公開しています。

 研究開発志向の製薬企業団体である日本製薬工業協会でも「患者の声を活かした医薬品開発」をテーマとしたガイドブックを公表するなど取り組みを続けています6。 その他、公的機関等のPPI関連情報は、STEP LEARNINGの患者協働/PPIのウェブサイト7にまとまっているのでご参照ください。

協力者に必要な知識・経験は目的によって異なる

 実施主体によらず、各PPIの目的に応じてPPIに協力する側の患者・市民に必要な知識や経験、そして協働の度合いは異なります。

 医療制度や研究開発に詳しい人の参画が望まれることも、そうでないこともあります。専門知識が必要なPPIに関心をもつ人向けの講座も出てきています。

 例えばがん領域の大型学会では、学術総会時に(元)患者・家族向けの講座が開講され、医療や研究開発、それぞれの疾患に関する知識提供が行われる例が増えています。 また、ささえあい医療人権センターCOMLの「医療をささえる市民養成講座」などで知識やスキルを習得してから参加する形も考えられます8

日々の看護業務がPPIにつながる

 医療分野におけるPPIについて、臨床看護師がその意義を理解し、積極的に関与していくことは、これからの医療者と患者のパートナーシップのあり方を構築するためにとても大切なことです。
 看護実践におけるPPIにつながる例では、図1のようなことが挙げられます。

図1 看護実践におけるPPIにつながる例
看護計画立案や評価をするときに、患者の意向や意見を確認する
ウォーキングカンファレンス等で、患者とその日のスケジュールを共有・調整する

 これらは普段、あまり意識せずともすでに実践していることもあるかと思います。

 日々の看護のなかで、患者の治療やケアに対する思いや考えを聴く機会が多い看護師だからこそ、それぞれの方針や内容について、「もっと患者の意見を反映できないか」と考える機会も少なくありません。

 患者を取り巻くさまざまな医療チームがPPIの意義を知り、患者の経験値や知見を活かしながら実践していくことは、患者の闘病意欲を高めるだけでなく、「その人らしさ」を支えることにもつながると、筆者らは考えています。

1.国立がん研究センターがん対策研究所ホームページ:患者・市民パネル.https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/panel/index.html(2024.7.30アクセス)
2.日本医療機能評価機構ホームページ:Minds ガイドラインライブラリ 患者・市民向け情報のご案内.https://minds.jcqhc.or.jp/s/public_infomaiton_guide(2024.7.30アクセス)
3.Cochrane Consumer Networkホームページ:The Statement of Principles for Consumer Involvement in Cochrane.2015.
https://consumers.cochrane.org/news/statement-principles-consumer-involvement-cochrane(2024.7.30アクセス)
4.日本医療研究開発機構ホームページ:患者・市民参画(PPI)ガイドブック~患者と研究者の協働を目指す第一歩として~.
https://www.amed.go.jp/ppi/guidebook.html(2024.7.30アクセス)
5.医薬品医療機器総合機構:患者参画ガイダンス.https://www.pmda.go.jp/files/000242830.pdf(2024.7.30アクセス)
6.日本製薬工業協会 医薬品評価委員会ホームページ:患者の声を活かした医薬品開発.
https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/patient_centricity2.html(2024.7.30アクセス)
7.STEP LEARNINGホームページ:患者協働/PPI.https://www.step-rd.info/learning/ppi(2024.7.30アクセス)
8.ささえあい医療人権センターCOMLホームページ:講座・セミナー.https://www.coml.gr.jp/katsudo-naiyo-ippan/koza.html(2024.7.30アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2023年1月号の記事を再構成したものです。
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