便秘には、ときには重篤化する病態が潜んでいることも。重篤な便秘の見きわめ方を知りましょう。今回は「糞便塞栓」と「糞便性イレウス」について。結腸における糞便塞栓・糞便性イレウスの症状、検査・診断、治療を解説します。

【参考】重篤な便秘のはじまり「糞便塞栓」とは?

結腸における糞便塞栓・糞便性イレウスの症状は?

初発症状:初期の症状は見逃されやすい

 初期では、便秘、食欲低下、腹部膨満に限られた症状であり、他の症状は出現しません。このため慢性便秘症にあっては、この時期は見過ごされてしまいます

遅発症状:症状出現期には、多様な症状が出現

 症状出現期においては腹痛、下血が出現し、腸閉塞(イレウス)症状として腹部膨満、嘔気・嘔吐、食欲低下が出現します。 腸閉塞症状があるものは、糞便性イレウスと呼びます。全身症状としての発熱があります。

遅発症状:全身性炎症反応症候群や、ショックが起きることも

 進行期においては、前述の症状に加えて、頻呼吸、頻脈などの全身性炎症反応症候群(SIRS) による症状やショック症状を呈します。

図1 糞便塞栓(結腸)

糞便塞栓(結腸)

結腸における糞便塞栓・糞便性イレウスの診断

腹膜炎の症状と便の観察を行う

 直腸の糞便塞栓に比べて、診断(表1)が遅れるぶん、重症化します。腹部所見として、宿便部に圧痛を認めます。反跳痛筋性防御を認めるものは、腹膜炎が疑われます。

表1 診断
自覚症状
便秘→腹部膨満→腹痛、嘔気・嘔吐
腹部所見
●圧痛
糞便塞栓・腸管拡張、虚血性腸炎、壁内気腫、潰瘍、腸壊死
●筋性防御
穿孔・腹膜炎 ※著明な腹部膨満例では鑑別が難しい

結腸における糞便塞栓・糞便性イレウスの検査方法は?

大腸内視鏡検査で器質的原因や宿便の位置を見る

 直腸には便が下降しておらず、直腸指診では診断できません。代わりに大腸内視鏡検査が有用となります。
 最初に大腸がんやS状結腸軸捻転などの器質的原因を調べます。特に便の下降を妨げるものはないのに、肛門縁から約10~40cm離れた部位(直腸S状部―S状結腸―下行結腸)に宿便が存在するものが結腸の糞便塞栓と呼ばれるものです。

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