この記事は『がんになった外科医 元ちゃんが伝えたかったこと』(西村元一著、照林社、2017年)を再構成したものです。
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いったい「何喜何憂」すればいいのでしょうか?

 5月の連休明けから2コース目の治療の予定でしたが、骨髄抑制が遷延し白血球(好中球)が低下しているため抗がん剤投与は延期、そして1コース終了後のCTの所見で増悪は認められないが期待通りの効果も認められない(SD:stable disease〈腫瘍の大きさに変化なし〉)ということで、「予定通りもう1コース抗がん剤治療を行うか、この時点で手術に行くか決めてほしい」と担当医より選択が問われました。

 さらに追い打ちをかけるように、次のステップとしてDCS療法(ドセタキセル+シスプラチン+S‒1併用療法)に免疫療法を併用する予定でしたが、培養中に異物が混入したとのことで最初に予定した日の治療は不可能との連絡が入り、ここにきてのBad news 三連発。

 自分自身が患者さんと相対しているときには、「がんが見つかった!」「がんが転移した!」「治療はもう難しい!」というような、どちらかというと大きなイベントが起きたときが主なBad newsと考えていましたが、いざ患者の立場になると、治療の延期や予想通りの効果が得られなかったなど医療者にとってはある程度想定内のささいなことでも、患者さんにとってはかなりの精神的なダメージになるということを改めて実感しました。

 やはり医療者側は、自分たちと患者さんとは精神状態や置かれた環境が異なるということ、ちょっとした結果や現象の持つことの重みがまったく異なることを認識しておく必要があると強く思いました。

 このような「Bad newsのトリプルパンチ」を受けての週末の外泊は、家内と2人、この先のことを考えて暗い気持ちで過ごしたのは言うまでもありません。ただ、翌週に担当医から「PET検査で効果が認められたため、予定通り2コース目の治療に入る」と聞いたときには安堵し、前の週のBad newsをほとんど頭の片隅に追いやることができました。 

 今回は「一喜三憂?」でしたが、おそらく今後もたくさんのBad newsが待ち構えているはずです。それをときどきはGood newsがちょっとでも打ち消してくれるように祈るばかりです。