認知症の人のBPSDの理解を深め、日常生活をアセスメントするには?作業療法士が行うBPSDを伴う認知症の人の生活アセスメントを中心にお伝えします。今回はまず、定義と類型について解説します。
DSM-5-TRによる認知症の定義
認知症の人の生活をよりよいものにするために、私たちは最初に認知症の定義と類型ごとの症状に着目することが多いように思います。
米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR、2023)1によると、認知症とは、せん妄とうつや統合失調症などを除外したうえで、①複雑性注意(complex attention)、②実行機能(executive function)、③ 学習および記憶(learning and memory)、④言語(language)、⑤知覚-運動(perceptualmotor)、⑥社会的認知(social cognition)のなかから1つ以上の認知領域が障害され、手段的日常生活の自立を阻害するものと定義されています。
つまり、認知機能の低下が何らかの日常生活に影響を及ぼすことであるといわれています。
認知症の4つの類型ごとの特徴
認知症の類型については、血管性認知症、アルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症の4つが主なものとなります。
血管性認知症
血管性認知症は、脳出血よりも脳梗塞によるものが多く、急激な発症とともに、まだら状の認知機能障害を呈したり、多発性脳梗塞によって徐々に認知機能や身体機能の低下が目立ってきたり、初期より高次脳機能障害を呈する場合があります2。
また、感情失禁や認知機能における能力(capacity)の減少から、日常生活においてがんこさや柔軟性の低下が目立ち、混乱することも多いと思われます3。
そのため、身体機能や高次脳機能障害による日常生活のやりにくさと、認知機能低下による困難性の両面からアセスメントをします。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、緩徐な発症と持続的な知的機能低下を特徴とします。即時記憶や近時記憶の障害が強く、血管性認知症とは異なり、進行すると高次脳機能障害などがみられます2。
記憶障害が必ず認められるため、日常生活そのものを忘れたり、動作が途中で止まると、その先の動作ができなくなる場合があります。
しかし、手続き記憶(体で覚えたこと)は比較的保たれるため、慣れ親しんだ日常生活を何なくやり遂げる場合もあります。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、緩慢に発症し、性格の変化や社会的対人行動の障害、脱抑制(わが道をゆく行動)や常同行動、自発性の低下(無関心)などがみられます。手続き記憶、エピソード記憶(個人的経験の記憶)、視空間認知能力は保たれることが多いといわれています2。
しかし、自発性の低下によって日常生活が進まなかったり、脱抑制によって周囲に認められないような様式で日常生活を行う場合もあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、記憶障害は軽度の場合もありますが、注意や明瞭さの著明な変化を伴う認知機能の変動があり、ありありとした幻視を訴えます。幻視により、不安や焦燥感、興奮などがみられることもあるため、日常生活がスムーズに行えないこともあります。
また、パーキンソン症候群を呈します2。パーキンソン症候群による身体機能低下が日常生活の障害を引き起こす場合もみられます。
このように私たちは、認知症の類型による症状の特徴から、日常生活の可能性をアセスメントします。
中核症状とそれに伴う認知症の行動・心理症状
よく知られているように、認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。中核症状は、記憶障害、見当識障害、判断力の障害、実行機能障害、失行・失認・失語などであり、多くの認知症の人に認められる認知機能障害です。
一方、それを取り巻く周辺症状は、認知症の行動・心理症状(BPSD)と呼ばれます。例えばそれは、幻覚、妄想、睡眠障害、多弁、多動、依存、異食・過食、介護者への抵抗、不潔行為、徘徊、暴言・暴力、抑うつ、焦燥感、不安、取り繕いなどがあります2。
BPSDは、認知症の人の日常生活やQOLを低下させる要因です。中核症状から二次的に出現するさまざまな精神症状や行動としてのBPSDを知ることにより、認知症の人の日常生活をリーズニングすることができます。
- 1.American Psychiatric Association原著,日本精神神経学会日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他訳:DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,東京,2023.
2.山田孝監修,小林法一,竹原敦,鎌田樹寛編:高齢期領域の作業療法 第2版 プログラム立案のポイント.中央法規出版,東京,2016.
3.竹原敦,繁田雅弘:脳血管性認知症への作業療法士の関わり~その文脈性、理論的意義、対象者の役割再獲得~.作業療法ジャーナル 2007;41(10):921-927.
この記事は『エキスパートナース』2020年1月号特集を再構成したものです。
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