日々進化する治療・ケアにかかわる用品がもたらした変化、活用する際の注意点などを紹介!今回は術後疼痛管理におけるディスポーザブルPCAを取り上げます。

鎮痛薬の静脈内投与を患者自身のタイミングで行えるように

 創部痛は術後合併症として頻発しますが、「手術だから仕方ない」という認識や、鎮痛薬に対しての誤った情報により、患者が我慢してしまうこともあります。

 急性痛に対する治療として、従来のオピオイドの筋肉内注射に比べ、静脈内への少量投与のほうが有効とされます1。そこで、鎮痛薬の種類で調節するのではなく、比較的容易な静脈内投与を患者自身のタイミングで行ってもらうという発想で、PCA(patient controlledanalgesia、自己調節鎮痛法)装置(図 1)は生まれました。

図1 ディスポーザブル PCA(自己調節鎮痛法装置)の例

●いずれも患者が痛みを感じたときにボタンを押すことで、設定した一定量の鎮痛薬が硬膜外・静脈内に投与できる

楽々フューザー™

楽々フューザー™(画像提供:スミスメディカル・ジャパン株式会社)

クーデック®シリンジェクター®PCAセット

クーデック®シリンジェクター®PCAセット(画像提供:大研医器株式会社)

 創部痛は呼吸や咳嗽の抑制や、体動を制限してしまうため、さらなる合併症を引き起こしかねません。そこで、個々で閾値の異なる創部痛に対して柔軟に対応でき、過量投与による弊害を避けることも目的として、各施設でPCAが検討、採用されてきました。

 PCAは術後、呼吸運動により安静時にも創部痛が出現しうる場合や、咳嗽や体動による著明な増強が考えられる対象に、鎮痛薬の持続投与を目的として用いられます。

 投与方法はそれぞれの術式や状態に合わせて選択されます。頭頸部のみの手術患者、硬膜外血腫のリスクが高い患者、内視鏡下手術などの侵襲の少ない手術患者以外には、主に硬膜外持続投与が行われます。また、手術操作部位に限局した鎮痛を行う傍脊椎ブロックや、これらの適応以外の対象には静注が選択されることもあります。

 投与する鎮痛薬は、硬膜外投与では局所麻酔薬とオピオイドを混注して使用することが多く、静注ではオピオイドを使用します。

この記事は会員限定記事です。