日々の看護業務のなかで感じるさまざまな悩み。内容によっては他職種に相談することで、すぐに解決するかもしれません。どんな状況で、どんな職種の人が頼りになるか、現場の声から考えます!
猫兄貴ねこあにき
薬剤師(Ph)
病院薬剤師。混合外科病棟で1年間ほど過ごしたときに、外科におけるよく使う薬の使い方をいろいろと模索していた。今は治験部門にいるので、今回、久しぶりに当時のメモを引っ張り出した。
S.O.えすおー
薬剤師(Ph)
病院薬剤師。過去に整形外科病棟の担当経験あり。現在は療養病棟を担当。感覚に頼りすぎないよう、定期的にデータをガサゴソする系薬剤師。今回もガサゴソした。
●薬剤師(Ph:Pharmacist)
院内のさまざまな場面で使用される医薬品に関する業務を担当する。最近は、病棟で見かけることも多くなっている、はず。ナースが普段感じている薬の使用感を裏づけるような、小話のネタをたくさんもっていることがある。
患者さんから、鎮痛薬の要望がありました。どの職種に、どのように相談すると効果的?
外科系の混合病棟で働いています。術後の患者さんから、「痛みがなくならないので薬が欲しい」と言われることがよくあります。
術後の疼痛が離床に影響することはわかるので、緩和する必要性も理解できるのですが、PCA*1(自己調節鎮痛法)を実施している患者さんに、追加で内服や坐薬の鎮痛薬を使用することで、身体にどのような影響があるのか、薬剤師さんに教えてもらいたいです。
もちろん医師の指示範囲内での投与ですが、たくさんの鎮痛薬を重ねて使用するときに、ナースとしてどんなところに注意しておけばよいでしょうか?
鎮痛薬の投与時にナースが見ておきたいこと
患者さんの要望を聞きつつも、薬剤につきものの副作用などには細心の注意を払う必要があります。普段は治験部門、療養病棟に勤務するお2人に、術後の患者さんの状態をイメージしてもらいながら、投与時~投与後の注意点を解説してもらいました。
鎮痛薬併用のメリット・併用時の観察ポイント
そもそもなぜ、さまざまな鎮痛薬を使用するのかご存じでしょうか?
海外のガイドライン¹には、「マルチモーダル鎮痛(multimodal analgesia)」という考え方が掲載されています。これは、さまざまな術式に対して、複数の鎮痛薬や非薬物療法を組み合わせて痛みを取り除く考え方です。
確かに、PCAで使用されるオピオイド系の鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニルなど)は非常に効果が強いのですが、嘔気などの副作用がNSAIDs*²やアセトアミノフェンに比べて多く発生してしまいます。
じつは、異なる作用機序の鎮痛薬を併用することにより、オピオイドの使用量が減らせることが過去に示されています²‚³。利益と害のバランスをよくするために、マルチモーダル鎮痛の考え方があることを知っておいてほしいです。
小ネタですが、アセリオ静注液1000mgバッグは、成人の場合、1回300~1000mgを15分かけて静脈内投与すると記載されています⁴。マルチモーダル鎮痛でよく使われているアセトアミノフェンは安全性が高い薬剤として有名ですが、血圧低下の副作用があります。リハビリテーションを控えているときなどは、注意して観察しましょう。
PCAの注意点
術後疼痛に対する鎮痛方法として、PCAは一般的です。PCAは、最近では硬膜外につけるものも増えているようですね。PCAで使う薬剤といえば、局所麻酔薬(アナペイン®、マーカイン®など)とオピオイドの併用が主流です。それぞれの使用時の注意点を見てみましょう。
局所麻酔薬
局所麻酔薬には、知覚神経と運動神経をブロックする作用があります。濃度が高くなると運動神経がブロックされてしまうため、特に筋肉量が少ない女性では注意が必要です。四肢のしびれが出ていないか、よく観察してください。
オピオイド
オピオイドとしては、フェンタニルが使われることが多いようです。特に、フェンタニルは副作用が少ないといわれがちですが、圧倒的に呼吸抑制が起こりやすいです(鎮痛用量に対してモルヒネは約1,000倍量、フェンタニルは約50倍量で呼吸抑制が起こります)⁵‚⁶。
オピオイドの使用中は、必ず呼吸数をチェックしてください。
術後は、皆さん「痛い、痛い」と言いますので、ついつい増量しすぎてしまいがちです。徐呼吸が起きていない範囲で呼吸数が落ち着いていれば、オピオイドはきちんと効いています。訴えだけを鵜呑みにせず、総合的に判断することが重要です。