患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回はインスリン療法中の患者さんの心理についての研究です。
インスリン療法中の患者さんは治療を正しく理解している?

心理的抵抗により、治療が遅れてしまうことがある
2型糖尿病において、食事・運動療法・経口血糖降下薬で血糖コントロールが不十分な場合、または手術前後やステロイド治療の際の血糖コントロール、インスリン分泌機能が枯渇している場合などはインスリン療法が導入されます。しかし、インスリンを導入することへの心理的抵抗をもつ患者さんが多いことがこれまでの先行調査1で報告されています。
患者さんがインスリン療法に対して消極的な姿勢を示すと、適切な時期のインスリン導入が遅れてしまうため、インスリン療法への心理的抵抗を軽減することが重要であると考えました。
また、このインスリン療法に対する心理的抵抗は、糖尿病発症以前からインスリン療法に関する正しい知識が普及されておらず、誤った認識が浸透していることが原因ではないかと考えました。
以上より、糖尿病罹患者および非罹患者を対象に、インスリン療法に対する心理的抵抗とその関連要因を探索することを目的に調査2を行いました。
本研究は以下の倫理的配慮をもとに実施されたものです。
●金沢大学医学倫理審査委員会の承認を得て実施しました。
●対象者には、研究の趣旨、方法、自由意志での参加、匿名性、個人情報の厳守、本研究以外にデータを使用しないこと、研究終了後にデータを破棄することを説明し同意を得ました。
研究の方法
疑問(調べたこと)
●インスリン療法に対して心理的抵抗を抱く要因は?
研究対象
●糖尿病非罹患者601名(男性302名、女性299名)、糖尿病患者さん(インスリン注射なし)42名(男性30名、女性11名、不明1名)、糖尿病患者さん(インスリン注射あり)6名(男性3名、女性2名、不明1名)
研究方法
●以下の方法でインスリン療法への心理的抵抗と知識、その相関*を評価
●インスリン療法への心理的抵抗:文献3ならびに「DAWNTM JAPAN調査」4を参考に16項目の質問を作成し、それぞれを5段階で表現し、点数が高いほど心理的抵抗が高いと評価
●インスリン療法の知識:文献5、6を参考に17項目の質問を作成し、それぞれを3段階で表現し、点数が高いほど知識があると評価
*【相関】2つのことがらの関連で、相関係数により関連の強さが示される。相関係数は、一方が増えれば他方も増える場合は正の値、一方が増えれば他方が減る場合は負の値となる。-1~1の値をとり、-1もしくは1のとき相関が最も大きい(0の場合は2つのことがらに関連はない)。
発見:正しい知識によって、心理的抵抗を緩和
1)糖尿病の罹患者・非罹患者にかかわらず同じ心理的抵抗を感じている
表1 糖尿病患者さんのもつ心理的抵抗(1~5点で評価)

心理的抵抗が高い上位4項目は、「一生打つことになる(表1-⑩)」「経済的負担が増えるのではないか(表1-⑨)」「自分がインスリン注射を打つことになったら抵抗感をもつ(表1-⑭)」「注射を打つことは面倒だ(表1-③)」でした。
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