インスリン療法中の患者さんについての研究結果をもとに、実践したいケアを紹介しています。

【第37回】インスリン療法中の患者さん[前編]研究から明らかになったこと

正しい知識を得られる場を設け、治療の肯定的な面を振り返ることができるようにする

ケアのポイント

●“インスリンを一生打つことになる”といった誤った知識をもたないよう、実際の患者さんの声を伝えるなどして正しい知識を提供する
●インスリン療法を、食事療法や運動療法の遵守のための脅しの道具に使わない
●患者さんのインスリン注射の技術だけでなく、患者さんが治療全体を振り返ることができるような声かけをする

インスリン導入の予定がなくても、インスリン療法の知識を早期から伝える

1)正しい知識の普及のために、 糖尿病教室や患者会を活用する

 心理的抵抗が高い上位の項目に「一生打つことになる」がありました。しかし、インスリン注射は、手術やステロイド治療など血糖コントロールに影響を及ぼす処置を行う際に一時的に導入する場合や、入院中の一定期間のみ導入するインスリン強化療法の場合もあり、必ずしも一生打つことになるとは限りません

 また、心理的抵抗と知識の相関関係の結果からは、インスリン注射により生活が制限され、人付き合いや旅行ができなくなるといった誤った認識から心理的抵抗が現れていることが考えられますが、実際にインスリン療法を継続している患者さんは、インスリン療法に効果を感じ、安心して生活を送っていることが先行調査1からも明らかになっています。

 そこで、糖尿病教室や患者会等を活用して、インスリン注射薬に関する情報や実際にインスリン療法をしている患者さんから具体的な生活がイメージできるような情報、体験談を聞ける場面を設けるとよいでしょう。外食時はどうしてるのか、旅行の際に注意する点は何か、実際に困った際の対応等々、医療者からの情報よりも実際に同じ疾患をもっている人からの声のほうが、患者さんの心に響きます。

 また、そういった場面で、練習用の注射器や仮腹(模型)を用いて実演体験もしてみることで、インスリン療法への心理的抵抗が低くなると考えられます。

この記事は会員限定記事です。