患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は、がん疼痛のある進行肺がん患者さんの体験についての研究です。

がん疼痛のある進行肺がん患者さんの情動体験は?

がん疼痛のある進行肺がん患者さん

痛みにより引き起こされた不眠や不安が互いに増幅して痛みの悪循環に

 がん患者さんの多くが経験する症状の1つに“痛み”があります。WHO方式がん疼痛治療法が公表されて30年以上が経過しましたが、進行がん患者さんの60%ががん疼痛を有しており1、がん疼痛は看護においてもいまだに重要課題です。

 痛みは不快な感覚体験および情動体験であると言われています。つまり、痛みには身体的側面のみならず心理的側面が存在し、それらは複雑に影響し合うことで痛みの体験を形成しているのです。何かの作業に集中しているときや楽しいときに痛みがやわらいでいるように感じるのがその例です。

 反対に、痛みが不眠や不安、怒り、抑うつ状態を引き起こし、それらが互いを増強させて痛みの悪循環を形成することがあります。したがって、看護師には、がんの病態がもたらす痛みを管理するだけでなく、心理面にも着目した看護実践が求められています。

 そこで本研究2では、がん疼痛のある進行肺がん患者さんはどのような情動体験をしているのか、その論理構造を明らかにすることで、患者さんに対する心理社会的介入を含めた看護実践のあり方を検討しました。

本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接は、身体的・心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。

研究の方法

疑問(調べたこと)
●がん疼痛のある進行肺がん患者さんはどのような情動体験をしている?

研究対象
●都市部の呼吸器専門病院に入院中で、がん疼痛のある手術不能または再発肺がん患者さん12名(男性6名、女性6名、平均68.1歳)
●全員が麻薬性鎮痛薬を使用

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