意識障害の原因にもなる「循環異常」を急変未満で見抜くため、看護師が知っておきたいポイントを解説します。緊急性の高い胸痛や心筋梗塞対応の流れについても紹介します。

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爪・皮膚の色で循環異常を急変未満で見抜く

 前回は、「意識」についてポイントを紹介しましたが、意識障害の一部は「循環」が原因となっているものもあります。例えば患者さんがボーっとしているのは心機能の低下が原因だったり、動悸や意識低下は不整脈が原因だったりします。
 低循環を示唆する症状としては、手・足・体幹の冷汗・冷感があります。意識障害をみる際には念頭に置いておきましょう。

 「循環」でもっとも気をつけなくてはならないのは、ショック状態になってしまうことです。敗血症をスクリーニングするqSOFA*1には「収縮期血圧100mmHg以下」が入っていますが、ショックが血圧に現れるまでは時間がかかります。また、有名な「ショックの5徴候」はすでに明らかな異変のサインといえます。

 “急変未満”の段階で異変に気づくためには、ラウンド時にCRT(capillary refilling time:毛細血管再充満時間)で末梢の循環をみるのがお勧めです(図1)。患者さんの爪を5秒程度圧迫後、白くなった爪に赤みが戻る時間を計測するものです。3秒以上赤みが戻らなければ、末梢循環が悪くなっていると判断します。

*1:qSOFAは、『日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG2024)』では初期スクリーニングには推奨されていません。ただし、重症化のリスクを見積もる参考としては活用されることがあります。

図1 CRT(毛細血管再充満時間)でのチェック

CRT(毛細血管再充満時間)でのチェックの様子
爪を5秒程度圧迫した後、3秒以上赤みが戻らなければ末梢循環が悪いと判断する

 CRTで「なんかヘン」と感じたものの、他の徴候に乏しい場合は、皮膚の斑状変化(まだらになる)がないか確認します。この評価で代表的なものが「Mottling score」(斑状皮膚スコア)で、膝を中心に斑点領域を評価します(図21

 このような斑状所見がみられるのは、血液の灌流状態が悪いときです。スコアが陽性(1以上)なら、ショック状態になってきていると判断し、輸液負荷や血管作動薬の準備を急ぎます。

図2 「Mottling score」(斑状皮膚スコア)

「Mottling score」(斑状皮膚スコア)
(文献1を参考に作成)

ショックを疑ったら血ガスで“乳酸値”をみる

 循環障害を示す徴候は少なくても、いきなりショックが疑われる場面に遭遇することもあります。その際はドクターコールをしつつ、乳酸値(Lac)をみるために動脈血ガス分析の準備をします。

 乳酸値の測定は敗血症性ショックの診断のために必須の項目です。乳酸は、ショックなどで酸素供給が不十分な場合に産生され、酸素に代わってエネルギーがつくられるように働きます(嫌気性代謝)。そのため、乳酸値の上昇は組織の酸素が低下しているサインです。

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