患者さんの終末期に現れうる悩みや、ACPにかかわる悩みに、看護師はどう答えればよいのでしょうか。看護師FPⓇが詳しく解説します。

患者さん
(状態が)本当に悪くなったときに、今後のことは考えます

看護師
わかりました。では、今の生活でご不安なことはありませんか?
終末期にかかわる話題はタイミングが重要
制度やお金の相談の際も、緩和ケア病棟に入るためのお金の準備や介護保険、遺産相続など、終末期を想像させる内容については、上記のような言葉が聞かれることがあります。そこには、言葉に発することで現実味を帯びてしまうため、あまり言いたくないという気持ちも含まれており、できるだけ患者さん本人の気持ちの揺らぎに合わせて話を進めていきたいところではあります。
一方で、進行が速い疾患だと話ができる期間に限りがあり、検討していくタイミングを逃してしまうこともあります。
やりたいことや過ごしたい場所の選択・実行にあたっては、体と心とお金の状態がそろっていないとなかなか進められないということは、看護師の皆さんもご経験があるでしょう。家族がいる場合には代わりに動いてもらうことも可能ですが、最近増えているひとり暮らしの患者さんでは、自身で決断して手続きすることが難しいならば、代行してもらえる人を決めていかなくてはならない場合があります。例えば、契約や制度の手続き、財産の現金化などの場面で必要になります。
ひとり暮らしのがん患者さんの事例
50代のがん患者さんで、ひとり暮らしの方の例をご紹介します。この患者さんは、主治医より「いったん抗がん剤治療はお休みし、今後のことを考えていきましょう」と説明を受けていましたが、「今はまだそんな時期じゃない。体も動くし」という考えでした。
そこで、無理に話を進めずに、今までの治療のことや家族のことを伺うと、県外に住んでいる高齢の親の介護のことや、「本当だったら自分が親を見送ってからなのに順番が違う」「自分に万が一のことがあったら親に後々のことを任せるのは難しい」といったことなどを話されました。
お話を通して、体がつらくなったときの金銭管理と緩和ケア病棟に入るための資産づくり、そして亡くなったときの手続きを気にされていたことがわかったので、「今後どのようなことを考えて準備していけばよいか」といった具体的なお話に進むことができました。
1.資産(自宅)の現金化
現時点での預金額では心配であることや、相続人は両親しかいないことから、自宅を売却し、現金化の準備を検討することになりました。
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