20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

薬にも、医療機器にも何にも頼らず
患者の自然治癒力を引き出し促しながら、
治癒に向けて援助していった看護は
とても高度で素晴らしいものだ

 1940年代半ばから1950年代頃までのペニシリンとかストレプトマイシンといった抗生物質が広く普及する前までに行われていた看護は、今思うとかなり本質的なものではなかったでしょうか。この時期の看護は、「大気」「安静」「栄養」「保温」の4点が、あらゆる病気の治療方針でした。

 看護師は、訪室するたびに病室の換気を図り、食事内容に心を砕いて栄養状態を整え、患者の状態を見極めて安静と病床から起こすタイミングを見計らいながら、患者の活動を促していきました。

 こうして薬にも、医療機器にも、何にも頼らず、患者の自然治癒力を引き出し、促しながら、治癒に向けて援助していった看護は、とても高度で素晴らしいものだと思いませんか? もちろん程度の差はあるでしょうが、たいがいの胃潰瘍だって、手術をすることなく食事療法だけで治していったのですから。

(出典:『看護技術の基礎理論』20~21ページ、ライフサポート社)

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