医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回は、ハイリスク薬を投与した後に行うべき、呼吸・循環・意識レベルの観察について。アナフィラキシーには特に注意が必要です。
薬剤投与中・投与後の、患者さんの変化を見逃さないようにする
投薬業務には多職種によるいくつものプロセスがあり、それぞれに事故の発生要因が多数ありますが、ともすると患者さんに投薬後、投薬業務は終わったと安心しがちです。しかし、実際には体内に入ってから薬が作用するため、投与中や投与後の観察が最も重要です。
ハイリスク薬のなかでも、特に心停止や呼吸停止に注意が必要な薬を使用する際は、生体モニターを装着して管理する必要があります。また、バイタルサイン(特に呼吸状態)は生体の変化を表す重要な徴候であるため、平常時から測定し変化を察知することが大切です。
特定の背景を有する患者(合併症、既往歴等のある患者、腎機能障害患者、肝機能障害患者、妊婦など)に禁忌の薬もあります。患者さんの基礎疾患や併存疾患に薬剤がどう影響しているのかを考えながら、病状を観察しましょう。
アナフィラキシーは短時間で死亡にいたるため、特に注意
投与後に特に注意したいのは、注射薬によるアナフィラキシーです。アナフィラキシーは、症状が急速に出現し進行することがあり、対処が遅れると患者さんが死亡する場合もあります。十分な知識、観察、判断、対処が必要です。下記にアナフィラキシーの特徴を示します。
日本医療安全調査機構の報告によると、報告されたアナフィラキシーによる死亡例12例のうち、薬剤投与中もしくは薬剤投与開始後5分以内に症状が出現した事例は10例でした。また、20分以内には全事例で不可逆的な状態に陥っていました1。
アナフィラキシーの初期対応であるアドレナリン0.5mg(成人)筋肉内注射の早急な実施が非常に重要です。そのためには、薬剤投与開始から少なくとも5分間は注意深く患者さんを観察すること、発症を予測して準備をしておくこと、患者さんに発症時の症状を説明しすみやかに伝えてもらうこと、薬剤による過敏症歴の問診を十分に行うことも大切です。
アナフィラキシーの特徴1
●発症すると、急変までが速い。
●投与から5分以内に症状が出現する(5分間は観察を行う)。 ※図1の場合。
アナフィラキシーの主な症状1
●ふらつき
●のどの痒み
●しびれ
●嘔気
●息苦しさ
●くしゃみ
●体熱感
●静脈注射後の血管に沿った発赤
●両手背から前腕や顔から頸部にかけての紅潮
●眼球上転、痙攣
●急速な換気困難 ※図1のうちの筋弛緩薬投与例の場合。
●薬剤投与後に皮膚が赤黒く変化 ※図1のうちの筋弛緩薬投与例の場合。
●心電図上STの上昇 ※図1のうちの筋弛緩薬投与例の場合。
●血圧の低下
薬剤ごとの注意点
1)免疫抑制薬は感染徴候に注意する
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