食物アレルギー即時型症状の治療ポイント
「医療・看護の知っておきたいトピック」シリーズの記事はこちら

おさえておきたいこと

食物アレルギーの基本
●食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起(じゃっき)される現象」1
●患者管理の原則は「必要最小限の原因食物の除去」であり、 患者の生活の質向上につながるよう取り組む

 2016年以来の改訂となる『食物アレルギー診療ガイドライン 2021』1が公開されました。
 この改訂により、Evidence-based medicine(EBM)、総論、各論、社会生活支援の4部構成となり、小児だけでなく、成人を含んだ幅広い領域がカバーされました。

 この新しいガイドラインに基づき、ナースが知っておくとよいことを説明します。

食物アレルギーの基礎知識

①疫学

 わが国におけるIgE依存性の食物アレルギーの有症率は、保育所児が4.0%2、学童以降が1.3~4.5%3,4とされ、全年齢を通して、1~2%程度であると推定されます5

②定義・診断・管理

 食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」です。
 食物アレルギーは、以下の2点により診断されます1

特定の食物の摂取により症状が誘発されること
②症状誘発が特異的IgE抗体など免疫学的機序を介する可能性があること

 具体的には、詳しい問診や医療機関にて実際に食品を摂取する食物経口負荷試験で①を証明し、かつ、特異的IgE抗体価の測定や皮膚テストにより②を証明します。

 食物アレルギー患者の管理の原則は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去1であり、必要最小限の除去とは、「原因食物だけを除去し、原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べること」です。

 経口負荷試験などで摂取可能な抗原量を確認し相当量以下の加工品を提示することは、患者の生活の質の向上につながります。例えば、牛乳25mLが摂取できれば、パンやクッキーの一部が摂取可能です。

③分類

 免疫学的機序から、大きくIgE依存性と非IgE依存性に分けられ、IgE依存性は表1のように分類されます5

表1 lgE依存性食物アレルギーの臨床型分類
(文献5より引用、一部改変)

 IgE依存性のなかに、食物アレルギーの最も典型的なタイプである即時型症状が含まれます。抗原に暴露してから2時間以内に症状が誘発されるもので、ときにはアナフィラキシーに至るため、注意して管理する必要があります。

 口腔アレルギー症候群は、学童期から成人でよく見られる食物アレルギーで、花粉関連食物アレルギー症候群で起こしやすい症状です。

 花粉関連食物アレルギー症候群とは、ある特定の花粉抗原に感作されたあと、似た構造の抗原をもつ生野菜や果物、豆乳などで新たに症状をきたすものです。多くの患者が、摂取直後の口の中のイガイガといった口腔咽頭症状で治まり、加熱調理された原因食物は摂取できます。

 食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、原因食物を摂取後(多くは2時間以内)に運動することでアナフィラキシーが誘発される病態です。 感冒、睡眠不足や疲労などのストレス、月経前、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアルコール摂取、入浴なども発症の誘発因子となります。誘発因子を避ければ、原因食物を症状なく摂取できます。

おさえておきたいこと

食物アレルギー即時型症状の治療ポイント
●急激に増悪する場合があるため、 症状改善後もモニター管理とし、 注意する
●症状が出ている際の排泄はショックをきたす恐れがあるため、 症状の重症度に合わせて付き添いや床上排泄を検討する

1.日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画,東京,2021.
2.柳田紀之,海老澤元宏,勝沼俊雄,他:厚生労働省「平成27年度子ども・子育て支援推進調査研究事業」保育所入所児童のアレルギー疾患罹患状況と保育所におけるアレルギー対策に関する実態調査結果報告.アレルギー 2018;67(3):202-210.
3.今井孝成,板橋家頭夫:学校給食における食物アレルギーの実態.日本小児科学会雑誌 2005;109(9):1117-1122.
4.日本学校保健会:平成25年度学校生活における健康管理に関する調査事業報告書.2014:93.
https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H260030/H260030.pdf(2024.7.30アクセス)
5.食物アレルギー研究会「食物アレルギーの診療の手引き2020」検討委員会ホームページ:食物アレルギーの診療の手引き2020.
https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/cg2020-1/(2024.7.30アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2022年9月号の記事を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。