知っておきたい、食物アレルギーの基礎知識
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食物アレルギー・即時型の症状と治療
①症状
食物アレルギーの即時型症状は、急速に全身のさまざまな臓器で症状が進行することが特徴です。誘発症状は皮膚症状が最も多く、呼吸器症状がそれに続きますが、表1に示すように、さまざまな症状が出現しえます。
症状の重症度は臓器ごとにグレード1(軽症)〜3(重症)に分類され、重症度に合わせた治療を行います。図1の2項目のうち、いずれかに該当すればアナ フィラキシーと診断します1。
②治療
まずはバイタルサインを確認し、重症度を評価します1。患者の体位は仰臥位・両足挙上を基本とし、呼吸器症状や嘔吐がある際は適時、頭部挙上または側臥位とします。
以下の場合は、アドレナリンをすみやかに筋肉注射3し、点滴補液、酸素投与を行います(図2)。
●表1のグレード3の症状が1つでもある場合
●表1のグレード2の症状でも
・過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合
・症状の進行が激烈な場合
・循環器症状を認める場合
・呼吸器症状で気管支拡張薬の吸入でも改善しない場合
アドレナリンの早期の投与は、入院率や死亡率を低下させる3ため、迅速に判断し、投与することが重要です。
上記にあてはまらない場合は、各臓器の治療を行います。皮膚症状に対しては抗ヒスタミン薬(クラリチン®など)の内服や点滴静注、呼吸器症状に対してβ2アドレナリン受容体刺激薬(ベネトリン®など)の吸入を行いますが、いずれも効果が不十分な場合はアドレナリンの投与を考慮します。
アレルギー症状は急に増悪することがあるため、5〜15分ごとに再評価を行います。アドレナリン投与で症状が改善しても再燃することがあるため4、症状が改善したあともモニターを装着して注意深く観察しましょう。
また、症状が出現している際にトイレへ行くと、体位変化や自律神経系の変調によりショックをきたすことがあります。アレルギー症状出現時には、トイレに付き添うようにし、重症の症状を認めているときは、ベッド上で用を足してもらいましょう。
アナフィラキシーのリスクが高いと判断された患者は、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)が処方されます。 患者が投与する際は大腿外側広筋(大腿のつけ根と膝の中央のやや外側)に注射するよう指導します(図3)。
- 1.日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン.2022.
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2023_0301.pdf(2024.9.25アクセス)
2.日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2021.協和企画,東京,2021.
3.Fleming JT,Clark S,Camargo CA Jr,et al.:Early treatment of food-induced anaphylaxis with epinephrine is associated with a lower risk of hospitalization.J Allergy Clin Immunol Pract 2015;3(1):57-62.
4.Lee S,Bellolio MF,Hess EP,et al.:Time of Onset and Predictors of Biphasic Anaphylactic Reactions: A Systematic Review and Meta-analysis.J Allergy Clin Immunol Pract 2015;3(3):408-416.e1-2.
この記事は『エキスパートナース』2022年9月号の記事を再構成したものです。
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