褥瘡・創傷ケアのコツを豊富な症例写真とともに解説。今回は仙骨部の評価スケールd2褥瘡における、軟膏やガーゼ、テープの選択、ドレッシング材の貼付について紹介します。

この記事は『エキスパートナース』2018年6月号特集を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。

ドライスキンの場合の仙骨部d2褥瘡へのケア方法は?

〈症例①ドライスキンの場合〉
d2-e1s6i0g0n0p0:7(点)※足側の褥瘡

●60歳代、男性、身長170㎝、体重58kg。
●難治性腹水、糖尿病(維持透析)、左下肢壊壊疽切断。
●日常生活自立度C1、ブレーデンスケール10点、高機能エアマットレス使用中。
●仙骨部に2か所、びらんはあるが感想している。滲出液も少ない。
●右側害、仰臥位を好み、ポジショニングしても自分で戻ってしまう。

仙骨部d2褥瘡(ドライスキンの場合)の症例写真

改定 DESIGN-R® 2020を用いた褥瘡の評価についてはこちら

湿潤の保持を目的とした軟膏を選ぶ

 全身ドライスキンの状態で、創周囲も創面も乾燥しています。創面を保護して湿潤環境にすることで治癒を促進します。 油脂性基剤の軟膏は湿潤を保持するため、滲出液の少ない創に適しています。抗炎症作用のある油脂性基剤であるアズノール®軟膏を使用します。
 塗布する前には石けんで皮膚を洗浄し、余分な軟膏や垢を皮膚から落としましょう。

ガーゼとテープの選び方

 アズノール®軟膏を塗布したあとは、メロリンガーゼ(非固着性のガーゼ)を患部に当ててテープで固定します。メロリンガーゼは創に固着しにくいため、出血をさせずにガーゼを剥がすことができ、剥がすときの痛みを緩和します。

 また、油脂性基剤とメロリンガーゼによって、創表面の摩擦を最小限にし、剥離刺激を緩和します。

 ガーゼは、創サイズよりも2cm程度大きなサイズのものを貼付することがポイントです。ガーゼが小さいと、体動などでガーゼがずれた場合に、創が露出しておむつと擦れてしまい、褥瘡が悪化する可能性があるためです。 テープは、固定による二次損傷が起こらないよう、角質剥離の少ない優肌絆®を用いました。

ケアの頻度

 褥瘡部の洗浄と軟膏処置は毎日行い、感染を予防します。褥瘡に感染や悪化があれば、すみやかにケア変更します。

 その他にワセリン、亜鉛華軟膏(創部保護目的)、プロスタンディン軟膏0.003%(上皮形成促進目的)なども効果が期待できます。

(執筆:松本 忍)

水疱が破れ、皮弁がある場合の仙骨部d2褥瘡のケア方法は?

〈症例②水疱が破れ、皮弁がある場合〉
d2-e1s6i0g0n0p0:7(点)

●70歳代、女性、脳梗塞。
●自力体位変換困難、おむつ内で排泄。
●褥瘡の辺縁が比較的整形で、仰臥位での圧迫が原因で発生したと考えられる。

水疱が破れ皮弁がある場合の仙骨部d2褥瘡の症例写真

ドレッシング材での皮弁の固定方法は?

 水疱が破れて皮弁が残っている場合には、皮弁をもとの位置に戻します。皮膚が薄く、容易に破綻するため、やさしく伸ばします(図1-①)。

 皮弁があると、毛根の周囲に表皮基底細胞が残存しているので、毛根周囲から表皮が再生し治癒に至ります。しかし、滲出液が残ると、伸ばした皮膚がずれやすくなるため、破疱した皮弁と創面との間に滲出液が残留するのを防ぎます(図1-②)。

図1 水疱が破れ、皮弁がある場合のケア

この記事は会員限定記事です。