褥瘡・創傷ケアのコツを豊富な症例写真とともに解説。今回は失禁により周囲皮膚が浸軟している場合の、ポリウレタンフォーム材や撥水クリーム、皮膚被膜剤を活用したケアについて紹介します。

この記事は『エキスパートナース』2018年6月号特集を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。

失禁により皮膚が浸軟した尾骨部d2褥瘡のケア方法は?

〈症例〉
d2-e1s6i0g0n0p0:7(点)

●尾骨に形成され、皮膚のたるみにより不整形な形となったd2褥瘡。
●創面はぬめりがあり、バイオフィルム*1様の膜で覆われている。
●ハイドロコロイドドレッシング使用により、滲出液のアンバランスとなり、創縁が過剰な滲出液による浸軟を引き起こした。

*1【バイオフィルム】=生物膜のことで、細菌が産生したムコ多糖類などからなるぬるぬるしたスライム状の物質と細菌の集合体である。放置すると感染に移行することもある

失禁により皮膚が浸軟した尾骨部d2褥瘡の症例写真

改定 DESIGN-R® 2020を用いた褥瘡の評価についてはこちら

 創縁の浸軟の原因には、過剰な創からの滲出液、滲出液に見合っていないドレッシング材の使用、失禁の影響などが考えられます。

 創縁の浸軟によって表皮化が遅れ、創傷治癒遅延を引き起こしかねないため、浸軟予防が重要です。創面だけでなく、創縁のアセスメントをする必要があります。

 創傷の部位によっては、失禁の影響を受けている場合もあり、尿や便の影響を受けないような保護も必要となります。

ドレッシング材の選び方は?

 ドレッシング材は、適度な湿潤バランスにより、創傷治癒を促進します。滲出液の量に見合ったドレッシング材の選択が必要であるため、この症例ではハイドロコロイド材よりも吸収能の高いポリウレタンフォーム材図1)を使用しました。

図1 吸収能の高いドレッシング材の例(ポリウレタンフォーム材)

メピレックス®ボーダー フレックス ライトの製品写真
メピレックス®ボーダー フレックス ライト(画像提供:メンリッケヘルスケア株式会社)

 このようなドレッシング材は、特定保険医療材料に区分され、使用期間は2週間となります。 また、①真皮用(下記参照)、②皮下組織用、③筋・骨に至る創傷用があり、保険上の制約があることを理解する必要があります。

特定保険医療材料(真皮用)の一部

ハイドロコロイド
・デュオアクティブ® ET(コンバテック ジャパン株式会社)
・アブソキュア® -サジカル(株式会社ニトムズ)
ポリウレタンフォーム
・ハイドロサイト® 薄型(スミス・アンド・ネフュー株式会社)
・メピレックス® ボーダー フレックス ライト(メンリッケヘルスケア株式会社)

 保険適用外の製品まで視野を広げると、この症例はバイオフィルムが考えられるため、銀含有のメピレックス®Ag(メンリッケヘルスケア株式会社)も推奨できます。DPCや在宅看護など、保険償還のある特定保険医療材料が使用できない場合、一般医療機器扱いの創傷被覆保護材も選択できます。

排泄物で浸軟した尾骨部D3褥瘡へのケア方法

創周囲皮膚を撥水クリームや皮膚被膜剤で保護する

 滲出液が多く、軟膏とガーゼなどで対応する場合は、周囲皮膚に撥水クリーム(図2)や皮膚被膜剤(図3)を使用し、浸軟を予防するとともに軟膏などの影響から皮膚を保護します。
 特に、ゲーベン®クリーム(スルファジアジン銀)など水分の多い親水軟膏を使用する場合は、創縁の浸軟予防に注意します。

図2 撥水クリームの例

3M TM キャビロン TM ポリマーコーティング クリームの製品写真
3M TM キャビロン TM ポリマーコーティング クリーム(画像提供:スリーエム ジャパン株式会社)

図3 皮膚被膜剤の例

リモイス®コートの製品写真
リモイス®コート(画像提供:アルケア株式会社)

 図2図3のものがない場合は、ワセリンなど油脂性軟膏を使用する場合もあります。この場合は、長期使用で二次的皮膚障害の可能性もあるため、一時的使用とします。

この記事は会員限定記事です。