がん治療・ケアの最新知識を紹介。今回はがんサバイバーの生命予後に影響を及ぼす最も重要な合併症である、二次がんと晩期心血管毒性について解説します。
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がんにおける「がんサバイバーシップ」とはがんサバイバーは、米国ではすでに1,500万人以上に増加しており、わが国でも500〜700万人が存在していると考えられています1。
ここでは、がんサバイバーが直面する問題点のなかで、生命予後に大きくかかわる晩期合併症について解説します。
がんサバイバーと晩期合併症
●がんサバイバーの晩期合併症として「二次がん」「晩期心血管毒性」がある。
●小児・AYA世代発症がんサバイバーでは、特有の合併症や社会的問題点、がん治療への知識不足が指摘されている。
晩期合併症は、がん治療が終了したあと数年から10年以上経過して出現する疾患群です。
このうち、がんサバイバーの生命予後に影響を及ぼす最も重要な合併症として二次がんと晩期心血管毒性が挙げられます。
二次がん
がんサバイバーは、がん治療後に再び新たながん(二次がん)を発症するリスクを有しています。
Odaniらの報告では、がん治療後10年間において5.8%のがんサバイバーに二次がんが認められました2。二次がんを発症しやすいがんサバイバーの特徴として以下のものが挙げられています2。
●喫煙・飲酒・肥満などのがん発症リスクが高い生活習慣を有する
●遺伝性感受性(遺伝性腫瘍の家族歴)を有する
● アントラサイクリン・放射線療法などの心血管毒性を伴うがん治療の既往
さらに、70歳以上で男性24.0%、女性11.8%と二次がん発症の頻度が増加しており、加齢ならびに後天的遺伝子変異の関与なども重要な危険因子と考えられています2。
晩期心血管毒性
心機能障害/心不全、心臓弁膜症、心筋梗塞や末梢動脈閉塞症といった晩期心血管毒性の多くは潜在的に経過し、数年から10年以上経過したのちに発症します。
いったん発症すると重篤化し、治療が困難な症例が少なくありません。
がんサバイバーにおいて、がん死亡が全体の38%を占めるなか、晩期心血管毒性により死亡した症例は11.3%と高率を示すことが報告されています3,4。特にアントラサイクリン系抗がん薬などの化学療法ならびに胸部・縦隔領域への放射線療法施行例を中心に出現することが知られています5,6,7。
成人発症がんサバイバーと小児・AYA世代発症がんサバイバーの違い
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