がん治療・ケアの最新知識を紹介。今回は高齢がん患者のACP支援を取り上げます。ACPの概要や、高齢がん患者へのACPにおける課題、意思決定支援のポイントを解説します。
ACPの基礎知識
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、厚生労働省の『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』において、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」と定義されています1。
● ACPは人生の最終段階の医療・ケアについて、本人の意思決定に向けて話し合うプロセスである。
● 話し合いは1回のみでなく、繰り返し行って修正・更新していくことが重要である。
同ガイドラインでは、本人と医療・ケアチームの合意形成に向けた十分な話し合いを行い、本人が意思決定することを基本としています。
また、家族など信頼できる者を含めて話し合いを繰り返すことで、自らの意思を伝えられなくなった場合でも、その推定意思を尊重し、本人にとって最善の方法をとっていくことが可能となります。
本人・家族と医療・ケアチームの間で合意に至らない場合、例外として、複数の専門家からなる話し合いの場を設置し、方針の検討や助言を行っていく(図1)としています2。すなわち、ACPは本人の意思を尊重した医療・ケアを実現することが目的となります。
図1 ACPのポイント

ACPでは、以下の内容などについて話し合います1,2,3。
●患者さん本人が有すること:価値観、信念、思想、信条、人生観、死生観、気がかり、願い、人生の目標、医療・ケアに関する意向、療養の場や最後の場に関する意向
●代弁者
リビング-ウィルなどの事前指示書(advance directive)の作成も含みますが、“話し合うプロセス”を重視するACPは、書面や一時的な意向の確認にとどまらず、修正・更新していくことが重要です。
特に、診断時、治療変更時、病状転換時、終末期といったタイミングでは、患者さん・家族の意思が変わることがあります。
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