失禁によるスキントラブルのメカニズムを解説。おむつによる影響や、スキンケアのポイント、洗浄剤の例についても詳しく紹介しています。

「排泄ケアのなぜ?&どうする?」の連載まとめ

POINT

●便・尿失禁で皮膚が荒れる原因は、便や尿がある一定時間以上皮膚に付着するから。
●会陰部から殿部に排泄物を接触させず、皮膚を清潔に保ち、排泄物の刺激から保護することが大切。

便・尿失禁で皮膚が荒れる要因とは?

 失禁とは、無意識に便・尿が排泄される状態をいい、失禁した状態で放置されることにより、皮膚トラブルにつながります。皮膚が荒れる原因は、便や尿の成分に着目して考えます。

 便は食べ物が消化吸収された後の残渣物で、腸内細菌や胆汁が含まれています。そのpHは食事内容や腸内環境に影響されますが、通常6.9~7.2とされています1。消化管の機能や腸の炎症などが影響し、下痢になった場合には腸内細菌を多く含んだアルカリ性に傾きます。

 また、尿は体液調整として電解質を含み、pH5.0~8.0と正常域が広い液体です。食事や薬剤などがpHに影響しますが、排尿後時間が経過すると尿素がアンモニアに分解され、アルカリ性に傾きます。

 こうした排泄物(特に液状の場合)が広範囲に皮膚に接触することでスキントラブルにつながります(図1)。

図1 失禁によるスキントラブルのメカニズム

失禁によるスキントラブルのメカニズム
(文献3より一部改変して引用)

皮膚炎が起こるメカニズムは?

 排泄物が皮膚に付着して生じる皮膚炎を、失禁関連皮膚炎(IAD)と呼びます(図2)。IADの観点から皮膚の変化については、次のようにいわれています。

排泄物が皮膚に付着すると皮膚は浸軟状態となり、皮膚の防御機能は低下する。また、浸軟状態は摩擦やずれといった機械的刺激を受けやすく、皮膚損傷が生じやすい2

 つまり、便や尿を長時間皮膚に付着させないことで、皮膚の浸軟を防ぐことが可能となるため、私たちは排泄物の皮膚への接触を避けるようなケアを提供する必要があります。

図2 IADの発生メカニズム

IADの発生メカニズム
(文献4より一部引用)

IAD(失禁関連皮膚炎)の鑑別方法についてはこちら

おむつによる皮膚トラブルに注意

 おむつは、高分子吸収ポリマーによって水分を吸収し、逆戻りさせないような保水性をもっています。尿や装着している皮膚からの汗の水分を吸収することで、おむつ内は高温多湿の環境になっています。

 そのため、通常よりも皮膚が浸軟しやすく、皮膚トラブルが起こりやすいといえます。おむつ内環境は、梅雨から夏場の季節に影響します。

おむつによる褥瘡・IAD予防のための実践ケアについてはこちら

便・尿失禁に対するスキンケア方法は?

 便・尿失禁に対するスキンケアの基本は、会陰部から殿部に排泄物を接触させず、皮膚を清潔に保ち、排泄物の刺激から保護することです。そのためには、排泄物の量や性状に合わせた排泄ケア用品の選択が不可欠です。

スキンケアの意義・目的

●皮膚の健康な生理機能を正常に保つこと
●皮膚の最外層である角質層を、乾燥・浸軟・外的刺激から守ること
●皮膚に影響を与える刺激を取り除き、皮膚障害を予防・改善させる環境を整えること

スキンケアのポイント

清潔の保持
<皮膚の洗浄方法と洗浄剤の選び方>
●健康な皮膚は、排泄物でアルカリ性に傾いても、やがて弱酸性に戻る。失禁で汚染・浸軟した皮膚に頻繁に洗浄を行うと、皮脂が除去され、バリア機能は低下する
●おむつ着用時に便による汚染度が強い場合には、皮脂の過剰な除去を防ぐため弱酸性石けんを使用した洗浄を1~2回/日実施し、石けんを使用した洗浄は毎回実施しない
●洗浄方法は、愛護的な泡を基本とした洗浄が好ましい
●洗浄剤は、泡立て不要なものや拭き取りタイプなど多数の用品が存在するため、使用目的によって選択する(図3)
●洗浄後は、皮膚を押さえながら摩擦や力を入れないように拭き取る

刺激物の除去
<皮膚の保護(便・尿の付着を避けるために、排泄物に接触する部位の皮膚に保護を行う)>
●皮膚保護剤はストーマケアに用いられる物が多い(図 4)
●皮膚被膜剤、撥水性軟膏、皮膚保護保湿クリームなどを塗布する
●これらを使用することで、皮膚に対して薄い油性の保護膜をつくり、排泄物が皮膚に直接付着することを避けることができる。また、付着しても微温湯で軽く洗い流すことで、おむつ交換が容易にできる

<失禁ケア用品の選び方>
●患者さんの体格や排泄物の量・性状などに適したおむつや失禁ケア用品を選択することが望ましい
●排泄物の水分を濾過し、おむつ側に移行させる用品として、ポリエステル繊維綿(商品名:スキンクリーンコットンSCC ®)があり、肛門周囲・会陰部の下痢便の付着範囲を最小限にできる場合もある
●水様便の吸収に限界があり、便中の不純物を吸収できず目詰まりを起こして肛門周囲炎が発生した場合には、軟便対応パッド(商品名:アテント Sケア 軟便安心パッド・軟便モレを防ぐシート)が水様便の拡大予防につながる

図3 洗浄剤の例

ベーテル®F 清拭・洗浄料(画像提供:株式会社ベーテル・プラス)

ベーテル®F 清拭・洗浄料
保湿成分セラミド配合、弱酸性、泡タイプ。主な用途は顔面など微温湯で流しにくい部
位の洗浄。拭き取りだけでも使用できる

ソフティ 泡洗浄料(画像提供:花王プロフェッショナル・サービス株式会社)

ソフティ 泡洗浄料
保湿成分セラミド機能成分配合、弱酸性。主な用途は殿部、陰部など微温湯で流せる部位の洗浄。最初から泡で出てくるので手間がかからない。きめこまかな泡で汚れを落とす。すすぎが早く、手早く洗浄できる

セキューラ®CL(画像提供:スミス・アンド・ネフュー株式会社)

セキューラ®CL
弱酸性。主な用途は顔面など微温湯で流しにくい部位の洗浄。泡立たず、汚れをすばやく落とす。アロエベラ葉配合で乾燥を防ぐ。汚れに直接スプレーし、洗い流すか濡れたタオルで拭き取る

コラージュフルフル泡石鹸(画像提供:持田ヘルスケア株式会社)

コラージュフルフル泡石鹸
泡石けんは石けん成分をすばやく洗い流せる。液体石けんは全身洗浄に用いる。ミコナゾール硝酸塩配合。真菌の増殖を抑える。細菌の増殖を抑制する殺菌成分配合

図4 撥水性皮膚保護剤の例

セキューラ®PO(画像提供:スミス・アンド・ネフュー株式会社)

セキューラ®PO
皮膚の保湿、ワセリン含有成分による撥水効果で皮膚の保護。全身の保湿、殿部に使用することで失禁から皮膚を保護

ソフティ 保護オイル(画像提供:花王プロフェッショナル・サービス株式会社)

ソフティ 保護オイル
保湿成分スクワラン配合。オイルのバリア機能が持続し、肌をまもる(ポリエーテル変性シリコーン配合)。臀部に使用することで失禁や摩擦などの外的刺激や乾燥から皮膚を保護。油性であるが肌表面からの水蒸気は通すので蒸れを防ぐ

3M™ キャビロン ™ ポリマーコーティング クリーム(画像提供:スリーエム ヘルスケア ジャパン合同会社)

3M™ キャビロン ™ ポリマーコーティング クリーム

失禁に伴う皮膚障害への対応は?

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