クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎で下痢が生じるメカニズムを詳しく解説!治療方法やトイレ、おむつ、手洗いに着目した、院内感染予防のポイントも紹介しています。

「排泄ケアのなぜ?&どうする?」の連載まとめ

POINT

●抗菌薬によって正常な腸内細菌叢(そう)が損なわれ、クロストリディオイデス・ディフィシルによって毒素が発生し、下痢の原因になる。
●院内感染が感染の原因となることもあるため、標準予防策を実施する。

クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎とは?

 クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)は嫌気性グラム陽性桿菌で、大腸の常在菌の一種です。芽胞を形成し、環境に長期存在します。クロストリディオイデス・ディフィシルに感染することによって生じるのが、クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎です。

 クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎は、入院患者に最も多くみられる下痢症の原因です。抗菌薬使用に伴う下痢の20~30%、腸炎の50~75%、偽膜性腸炎の90%の原因菌とされています。

 なぜ下痢が生じるかというと、抗菌薬が大きく関係しています。

 抗菌薬の全身投与により、腸内細菌の量と種類のバランスを崩してしまい、腸内の正常細菌叢は乱れます。正常な腸内細菌叢が損なわれ、クロストリディオイデス・ディフィシルがA毒素(TOX in A)、B毒素(TOX in B)などの毒素を産生します。
 これらの毒素により、炭水化物の分解が障害され、腸内の浸透圧が上昇し、水の再吸収が阻害され、下痢を生じるといわれています(図1)。

図1 クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎で下痢が生じるしくみ

クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎で下痢が生じるしくみ

クロストリディオイデス・ディフィシル感染の原因は?

 クロストリディオイデス・ディフィシルの感染源には、内因性外因性(環境)があります。内因性では、健康成人の毒素産生型の保菌者は3~ 8%であり、抗菌薬の使用で20%まで上昇して症状が出現します。
 外因性の場合は、院内感染で発症し、感染者の排泄物の処理時に医療従事者が手指を汚染し、それが拡散して起こります。

 危険因子には、長期入院、高齢、基礎疾患、外科手術(消化管の手術歴)、腸管の蠕動運動障害などが挙げられます。

 クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎の原因となりやすい抗菌薬は、第3世代のセファロスポリン系(セフトリアキソンナトリウムなど)が最も多くかかわっています。

 そのほかに、クリンダマイシン、ペニシリン系(アンピシリンやアモキシシリンなど)、フルオロキノロン系(シプロフロキサシンなど)です。また、胃液酸性度を低下させる薬や病気、特にプロトンポンプ阻害薬が投与された場合でも生じやすくなります。

クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎の治療は?

 クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎は、抗菌薬の使用から5~10日後に発症し、腹痛、発熱、下痢、白血球数上昇がみられます。そのほかに、悪心、倦怠感、大腸出血、大腸穿孔なども報告されています。

 診断には、便サンプル内の毒素の特定を行います(CDチェック)。場合によっては、S状結腸鏡検査や大腸内視鏡を実施します。

 治療において、止痢剤は使用しません。可能であれば、抗菌薬を中止します。抗菌薬の中止により、10~20%程度は症状が改善します。抗菌薬を中止できない場合は、クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎に有効なメトロニダゾール(フラジール®)と塩酸バンコマイシン散を用います。

 重症(白血球数>15,000/μL以上、治療開始時にクレアチニン≧50%増加)の場合は、塩酸バンコマイシン散を10日間内服します。中軽症(重症値未満)は、メトロニダゾール(フラジール®(250mg×4/日)を10日間内服します。
 重症でなければ、治療の効果に差はないため、安価なメトロニダゾールを推奨している施設もあります。

クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎へのケア方法は?

この記事は会員限定記事です。