代表的な不整脈の波形が読めるように、波形の読み方の要点をコンパクトに解説!今回は「右脚ブロック」「左脚ブロック」を見るために必要な、電気軸の考え方を紹介します。

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 右脚・左脚ブロック=心室の刺激が一部遮断される状態では、来るはずの刺激が来なかったり、別の方向を経由して来たりして、いつもと違う電気の動きが生まれます。
 その動きを見るために必要なのが、軸偏位12誘導心電図の知識です。

軸偏位とは?

①心室の筋肉が収縮(興奮)するときには、一定方向の大きさをもつ電流が生じます。
正常時、心室興奮の電流のベクトルは右上から左下方向となります。

心室の筋肉が収縮(興奮)するとき

②しかし、心筋のさまざまな障害により、電流のベクトルは変わってしまいます。これが「軸偏位」です。
軸偏位の向きを知りたいときは、12誘導心電図のⅠ・Ⅱ・Ⅲ誘導を見てみましょう。

心室の筋肉が収縮(興奮)するとき2

③Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ誘導は、心臓をそれぞれ下の図のような方向から見ています。
正常時、刺激はどの誘導から見ても、距離が近づいてくるように見えます。

心室の筋肉が収縮(興奮)するとき3

④しかし、軸偏位が起こると、「刺激が離れていく」誘導が出てきます。
離れていくと、波形は陰性化します。
この変化から、心臓のどこに異常があるかを推察できるのです。

心室の筋肉が収縮(興奮)するとき4

軸偏位の原因となる疾患

 軸偏位の方向と、原因として考えられる疾患をまとめました(図1)。

右軸偏位
心室興奮の全体のベクトルが+90°~+180°の状態。
〈考えられる原因〉
●右室肥大 ●右脚ブロック
●左脚後枝ブロック
●肺性心  ●右胸心

左軸偏位
心室興奮の全体のベクトルが0°~-90°の状態。
〈考えられる原因〉
●左室肥大 ●左脚前枝ブロック
●下壁梗塞 ●肺気腫

図1 軸偏位の方向と考えられる疾患

軸偏位の方向と考えられる疾患

12誘導心電図で確認すること

 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ誘導も含め、12誘導心電図では、それぞれの誘導で、どの方向から心臓を見ているかを確認しましょう。

手足につけた電極で、心臓の動きを見ると…

手足につけた電極で、心臓の動きを見ると

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