こんにちは、精神科医・産業医の西井重超です。今回はメンタルヘルスのことから派生して、産業保健の話をしたいと思います。
50人以上の従業員を雇う企業は、産業医を選任しなければならない
学生のころは、産業医なんて見たことも聞いたこともない人がほとんどだったと思います。会社員を経て学生になった人はあまりいないですもんね。僕も学生のころに授業で教わりましたが、当時はまったく産業医に関してイメージがつかず、興味が湧きませんでした。
産業医についての基本的な話は、皆さんが国家試験で勉強した内容の復習にはなりますが、覚えていない人は思い出してみてください。労働安全衛生法で産業医の選任が定められています。アルバイトなども含め50人以上の従業員を雇う企業は、産業医を選任しなければなりません。
ほとんどの病院では、規模的に50人以上の従業員の方がいると思いますので、産業医がいるということになります。
従業員1,000人以上の事業所では産業医が専属になり、週の数日は事業所にいます。1,000人未満の事業所では月に1~数回、事業所訪問をするケースが多いです。
法改正により、2017年4月から職場の代表者(院長)が産業医を兼任することができなくなったので、院長以外の先生のどなたかが産業医になっていることがほとんどのケースだと思われます。兼任できなくなったのは、労働環境に問題があると指摘する先生と、指摘される側の病院の責任者が一緒なのは問題があるというのが主な理由です。
産業医は従業員の就業のために、さまざまなサポートをしている
産業医が何をしているかというと、会社の内外から従業員が健康かつ安全に就業できるように産業医学の観点からサポートをしています。例えば、職場巡視、健康診断の実施、産業医面談などです。すべて書き出すことはスペースが限られているため難しいので、知りたい方は「産業医の職務」でweb検索してみてください。
僕のいた産業医科大学でも、病棟以外にも精神科の医局まで産業医の先生が来て、職場の安全に関して指導をしていました。皆さんの職場の巡視ですので休憩場所などの巡視は行いますが、マンホールの中など皆さんの仕事場ではないところは巡視をしていません。病院でのストレスチェック後の面接を行うのもほとんどが産業医です。
産業医に関しては講習を受けるだけでテストもなく資格をもらえるため、実力の差が激しいのが現状です。上位の資格というと誤解があるという先生もいらっしゃるかもしれませんが、日本産業衛生学会専門医や労働衛生コンサルタントをおもちの先生方は、産業医学に関しては厳しい試験を受けて合格された先生になります。
近年の精神医学では、「発達障害」は「神経発達症」というなど、呼び方が変わってきている疾患もありますが、この連載では、あえてみなさんになじみのあるであろう名前で呼んでいます。
この記事は『エキスパートナース』2021年4月号連載記事を再構成したものです。
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