雨の日に傘を差して道を歩いているとします。こんな日、皆さんの視線はどこにありますか？
私は地面を見ています。私は東京に住んでいるので、地面といってもアスファルトです。でも、雨の日の地面はまた普段とは違う顔を見せてくれます。
例えばアスファルトは色が違って見えます。少し濃くなるし、ネイビーの色味が風合いとして出て来ます。あと、視野に入る世界の辺縁が滲んで輪郭が少しぼやけているかのように感じます。
雨の日の地面には濡れた葉っぱが落ちています。もちろん木などに生い繁っている葉も美しいですが、雨に濡れアスファルトの上でしんみり草臥れて横たわっている葉っぱも、昼間の平常にはない趣があります。繁ってよし、散ってよし、落ちてよし、濡れてよし、朽ちてよし。葉っぱにもいろいろな態様があって素敵ですね。
ただ、私の一番好きな葉はこのどれでもないです。「言葉」っていうんですけれどね。
この記事は『エキスパートナース』2021年5月号連載のコラムを再構成したものです。
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