睡眠薬を使うことについての母親との打ち合わせ
当初、母親は睡眠薬に関して、「薬を使うことで悪影響はないか、癖にならないか」と心配していましたが、癖性はないこと、2~3日使用して睡眠が得られたらAくんのストレスが軽減する可能性があり、その際には使用を中止してもよいことを説明し、投与に同意されました。
睡眠薬は、母親と使用時間を決めて、同日の夜から開始しました。翌朝、Aくんは早くから目覚めたため、15分ほどプレイルームで遊びました。
2日目には母親からAくんについて、「長時間寝ることはなかったけれど、短い時間でも、おむつ交換でも起きずに寝ていました」と話がありました。
昼もよく遊ぶようになったこと、ベッド以外の畳の空間がお気に入りであること、1人遊びもできて抱っこの時間が少なくなったことが告げられ、また、「今日は笑ってくれて、元に戻ってうれしいです。私も眠れてぐっと楽になりました」と言われました。
3日目には薬剤を使用しなくても、夜間の入眠が図れました。
ケースカンファレンスでの振り返り
この事例を、看護師や医師と共有するために私たちはケースカンファレンスを実施しました。
目的は、看護師や医師と、長期間に個室管理が必要な幼児に対するケアについて検討することと、本事例のように非言語的な幼児期のストレスと対応について、スタッフの気づきがあったから解決できたことを評価し、フィードバックすることです。
医師からは、「ベッド以外に個室に畳敷きの空間をつくることに最初は反対だったけど、一緒に少し遊ぶことで診察にも協力的になった。空間づくりの大切さを感じました」という意見がありました。
また看護師からは、「子どもが寝ないことでお母さんの不眠の訴えに捉われてしまったけど、本当の問題が隠されていることに気がつきました」「言葉で発せないからこそ、体全体で表現している子どもたちのサインをしっかりみていきたい」と言い、この事例をもとに、“子どものストレスとストレスコーピング”について学習会を開催することになりました。
看護師は日常的に、子どものケアや遊びを通して、さまざまな子どものサインを観察しています。それらが重要な子どものサインであることを結びつけられれば、問題が焦点化され具体的なケアにつながることを実感した事例でした。
眠れない2歳6か月の患者さんに“睡眠薬を使うこと”の検討をめぐるQ&A【共有したいケア実践事例:第36回】(12月11日配信予定)
この記事は『エキスパートナース』2016年12月号特集を再構成したものです。
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