患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は人工呼吸器を装着する患者さんの体験・心理についての研究です。

患者さんがコミュニケーションで抱えている困難は?

人工呼吸器を装着する患者さん

コミュニケーションの困難さが与える身体的・心理的影響は大きい

 気管挿管のもと人工呼吸器を装着する患者さんは、「声」を使ってコミュニケーションを行うことができません。そのため、患者さんは、身振り、文字盤、筆談などの代替手段を使って、コミュニケーションを行います。 しかしこのことは、患者さんにとって簡単なことではありません。患者さんは思いや考え、要望を的確に伝えることが難しくなります。

 近年ではコミュニケーションの困難さは、患者さんへもたらす身体的・心理的影響が大きいことから、痛みや呼吸困難感などと並ぶ苦痛症状として理解しマネジメントしていくことの重要性が指摘されています1

 しかし、コミュニケーションの困難さへの看護援助を考えるには、患者さんがコミュニケーションの過程でどのような困難さを体験しているのかを知る必要があります。 そこで、ICUの人工呼吸器装着患者さんが体験したコミュニケーションの困難さを明らかにすることを目的に研究を行い、コミュニケーションの困難さを軽減する看護援助を検討しました。

本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接は、身体的・心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。

研究の方法

疑問(調べたこと)
●人工呼吸器を装着している患者さんはコミュニケーションのどの点に困難を感じている?

研究対象
●ICU で気管挿管のもと人工呼吸器を装着した患者3名(男性2名、女性1名)
●人工呼吸器装着中のコミュニケーションの体験を想起できた人

研究方法
●患者-看護師間のコミュニケーション場面を参加観察
●患者がICUを退出したのち、観察場面をもとに半構造化面接を実施
●質的帰納的分析の手法を用い、面接内容を分析

発見:患者さんは意思を伝えることだけでなく、伝わったかどうかも不安

看護師にメッセージを伝えることだけでなく、メッセージが理解されたかどうかも重要

 人工呼吸器装着患者さんと看護師間のコミュニケーションの過程では、情報の伝達、情報の理解、応答がうまく機能しないことがわかりました(下記)2

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