患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は、小児がんの患者さんの心理についての研究です。

小児がん患者さんはどのように病気に適応している?

小児がん患者さん

病気体験を必ずしもつらいものと捉えていない

 子どもの生活環境には、将来のネガティブな、あるいは望ましくない転機をもたらす確率を高める多くのリスクが存在します。
 このリスクとは、以下のように多岐に渡ります。

●家庭内・外環境:虐待や貧困、いじめや不登校
●個人内要因:エリクソンの発達段階における発達課題*1(例えば、基本的信頼vs.不信)など
●ライフイベント:受験・学業生活や就職など
●ネガティブイベント:予期できない事故、災害など

*1【エリクソンの発達段階における発達課題とは】自我の発達段階についての理論。人生を8段階に区分して、「乗り越えるべき課題(発達課題)」と「危機(社会心理的危機)」が設定されている。

 これらのリスクに対して、同じようなネガティブな体験をしても、うまく適応するプロセスを「レジリエンス」と呼びます。
 小児がんの子どもたちは、病気体験のなかでさまざまなつらい体験を強いられますが、病気という逆境のなかで、レジリエンスを発展させていることがわかってきています。

 今回、小児がん患者さんの病気体験におけるレジリエンスの構造を明らかにすることを目的とし、レジリエンス発展のための看護介入を検討するため、研究に取り組みました。

本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接は、身体的・心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。

研究の方法

疑問(調べたこと)
●小児がん患者さんの病気体験におけるレジリエンスの構造は?

研究対象
●5歳以上で小児がんの診断を受けた15~25歳の患者さん11名

研究方法
●病気や治療の受け止めや、病気になって変化したことなど、気持ちや考え方の変化に焦点を当ててインタビュー調査
●グラウンデッド・セオリー・アプローチ*2にて分析
*2【グラウンデッド・セオリー・アプローチ】質的な分析方法の1つ。現象を記述・分析し、核となる概念を見いだすために用いられる。

発見:病気体験を自分の人生の一部として取り込んでいる

この記事は会員限定記事です。