4 治療

 外傷による腱板断裂は、早期手術で機能回復を得られる場合が多く、手術を積極的に行います。
 年齢的な変性による断裂においては保存療法を行い、保存療法に抵抗性の場合は手術療法を検討します。

①保存療法

 保存療法としては炎症の鎮静化と運動療法を主に行います。
 痛みが強い時期は局所の安静を保ち、薬物療法として非ステロイド抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)の内服や、ヒアルロン酸またはステロイドの関節内注射を行います。

 運動療法としては、関節可動域の改善や断裂した腱以外の腱板に対する運動とともに、肩甲骨の機能に影響を与える他部位の運動機能訓練も行い、肩甲上腕関節のよいバランスを獲得させることが重要です。

②手術療法

 手術療法は、主に関節鏡下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)を行います。自動挙上が困難で肩関節の関節症性変化や広範囲の腱板断裂を認める、原則65歳以上の高齢者ではリバース型人工肩関節置換術(reverse shoulder arthroplasty:RSA)を行うこともあります。

関節鏡下腱板修復術(ARCR)

 断裂した腱板を上腕骨付着部に縫い付け、肩関節を元の状態に戻す手術です。
 腱板の断裂サイズが大きい場合は、補強処置として大腿筋膜を移植する場合があります。

リバース型人工肩関節置換術(RSA)

 肩関節の関節面(肩甲骨側と上腕骨側)を金属のインプラントに取り換える手術です。通常の人工関節と違い、肩甲骨側と上腕骨側の構造を真逆にすることで、腱板の力がなくとも肩外側の三角筋の力で上肢の挙上が可能となり、関節の安定化と挙上動作の改善が期待できます。

「解剖」+「はたらき」とリンクする 整形外科の疾患と治療
石島旨章 監修
内藤聖人、吉田圭一 編集
B5・200ページ、定価:3,300円(税込)
照林社

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