20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら

時間の推移は
悲しみの質を変えても
決して軽くするものでは
ありません

 2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故では、二万数千名のいのちが奪われました。(中略) その刻々の人々の悲しみの変化を肌で感じてきました。一貫して、専門職としてどのように向き合うべきかを問われ続けてきた感じがしています。もとより悲しみの大きさを比べることなどはできず、そのもととなった事実もそれを受け入れる段階やプロセスも人それぞれです。時間の推 移は悲しみの質を変
えても、決して軽くするものではありません。(中略)

 取り巻く人間関係の中で自ら回復してゆく方もあれば、年月を経るごとに喪失感が増して苦しむ方たちも多くいました。いずれにしても、その過程を見守り、必要に応じてサポートしなければと言い聞かせながら、心の奥底の見えない手でその方の肩を支える思いで想像力を研ぎ澄ますのでした。

(出典:『いのちをつなぐ 移りし刻を生きた人とともに』40~41ページ、看護の科学社)

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