20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら

看護の物語は
看護の受け手である
患者とともに創られていく

 現代病のがんは、決して寿命とは言えない年齢での死を彼女にも与えてしまいましたが、8カ月間の入院中の最後に近い1日の、ともに過ごしたひとときの間の彼女の語りは、その後、折に触れて看護を考える上で多くの示唆を与えてくれました。

 看護の物語は、看護の受け手である患者とともに創られていくのだとしみじみ思いました。客観的に助かる見込みのない場合でも、彼女のように最後まで生きる望みを失わず、“生き続けよう”と願い続ける患者は決して少なくないのではないでしょうか。

(出典:『看護を語ることの意味“ナラティブ”に生きて』35ページ、看護の科学社)

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