この記事は『がんになった外科医 元ちゃんが伝えたかったこと』(西村元一著、照林社、2017年)を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。

「選択」と「選択」の繰り返し

 がんの治療を受けるうえでは、何回も意思決定をする必要があります。

 まず診断がついたら「治療を受けるか?」「治療を受けないか?」を選択しないといけません。

 最近はいろいろな書籍やインターネットで「がんと闘うな!」「抗がん剤治療は受けるな!」などの情報が発信されたり、またマスコミの影響で「がん=闘病死」というイメージをもってしまうために、治療を躊躇される患者さんも少なからずおられます。

 しかし、いわゆるがん難民をなくすためにも、医療者はもっとオンタイムに正しい情報を発信していく必要があります。

 さて治療をすると決めたら、次は「どこで」治療を受けるかを決めないといけません。患者さんはここでも大きな、ある意味「命をかけた選択」をする必要があります。

 病院のランキングやスーパードクターなどいろいろ情報は飛び交っていますが、少なくとも進行したがんの治療の場合は、信頼できる医師とメディカルスタッフとのチームで行われるのがベストと考えると、よほどその病院のことを知っていないと正しい選択は難しいでしょう。そのようななかでどのように選択をすればいいのか?――今後は、単に選択権を患者さん側に与えて自己責任化するのではなく、身近にいる医療者がその選択でよいかどうかを公平に助言できるようなシステムが必要であると思います。

 自分自身も、「抗がん剤治療と手術のどちらを先行するか?」「一次治療を継続するか二次治療に進むか?」もしくは「手術を選択するか?」など、入院後3か月余りのなかでも、3回ほど大きな選択を迫られました。今後もさまざまな局面での選択が必要であり、そしていずれは「どこまで徹底抗戦をするのか?」「どの時点でBSC(ベスト・サポーティブ・ケア、いわゆる緩和ケア)を選択するのか?」……やり直しや後戻りのきかない「人生ゲーム」が続きます。