がん治療・ケアの最新知識を紹介。今回は腫瘍循環器リハビリテーション(CORE)を取り上げます。COREの概要や必要性、実践方法を詳しく解説します。
腫瘍循環器リハビリテーション(CORE)とは
最近、腫瘍循環器リハビリテーション(CORE)が注目されています。COREとは、がんリハビリテーションと心臓リハビリテーションが互いに補完しながらケアを進める、患者中心の個別化医療です1。
超高齢社会を迎え、がん罹患者数は増加しましたが、がん医療の進歩による年齢調整死亡率の低下と合わせて、結果的にがんサバイバー数が急増しつつあります。
そのなかで、がん治療の完遂とがんサバイバーの長期予後向上を目的とする、腫瘍循環器学という新しい学際領域が誕生しました2。
腫瘍循環器学では、従来から知られる放射線療法や抗がん薬の心毒性に加え、近年登場した分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新薬で顕在化した、多彩な心血管疾患(CVD)、すなわちがん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)に対応します。
さらに、CVDリスクを有する患者さんに対するがん治療や、あるいはCTR-CVTを合併したがんサバイバーに対する長期フォローアップも、腫瘍循環器学の課題です。
最近公表された腫瘍循環器の診療ガイドラインでは、がん治療前、治療中、治療後のリスクに基づいてCTR-CVTの予防・診断・治療を計画することが推奨されています3。
●近年登場した抗がん薬で顕在化したがん治療関連心血管毒性(CTR-CVT)に対し、従来の「がんリハ」に「心リハ」の要素を加えた新しい概念である。
●がん治療前・治療中・治療後のリスク評価をもとに、心肺機能の維持やQOL向上をめざした個別化医療として注目されている。
COREは、2019年に米国心臓協会(AHA)が提唱した新概念で、従来のがんリハビリテーション(がんリハ)に心臓リハビリテーション(心リハ)の要素を加えた個別化医療です4。
いわゆる「がんリハ」とは、患者さんが受ける身体的・認知的・心理的な障害に対し、がん患者の自立度とQOLの向上を目的に診断・治療する医学的ケアです5。
一方「心リハ」とは、CVDの治療と再発予防、CVRFの低減を目的とした診察や運動処方、さらに患者教育・カウンセリングによる生活習慣改善を含む包括的かつ長期的な医療です6。
しかしながら、がん治療の完遂率や患者アウトカムに影響を与える心肺機能の低下には、患者関連因子、がん関連因子、がん治療関連因子など多彩な要因が関与しているため、がんリハと心リハの両方が必要となります4。
したがって、がん治療前・治療中・治療後のリスク評価をもとに、がんリハと心リハを組み合わせた個別化医療として、心肺機能の維持、CVDリスクの軽減、および生活の質(QOL)や生命予後の向上への貢献をめざす、COREへの期待が高まっています。
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