「3日間、排便がないと下剤」といわれている理由は?便秘の定義や診断基準をはじめ、適切な個別対応や重篤な合併症を予防するためのポイントについても解説しています。
●ガイドラインには日数に関する明確な定義はない。
●便秘という状態は個人差が大きいため、日数だけでは判断できないことを確認しよう。
「3日間、便が出ないと下剤」といわれる理由は?
「排便が3日間ないと下剤」という考えは多くの医療機関などで慣習的に行われていることです。ヒトの解剖生理に基づくと、「大腸の停滞が24~72時間」とされているため、標準値からの逸脱といった視点からも、3日間という判断は妥当かと思われます1。
また、便が出ないときに用いられる下剤は刺激性下剤であることが多く、ある一定の間隔をあけて投与するといった観点からも、3日間が選択されているのかもしれません。
便秘の定義とは?
2017年に日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会が、『慢性便秘症診療ガイドライン2017』を発行した際、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しました2。このガイドラインは、成人の便秘症診療のガイドラインとしてわが国で初めて発表されたものになります。
しかしながら、この定義には、数字などの明確な表現は含まれていません。定義からも読み取れるように、便秘とは「症状名」や「疾患名」でもなく、「状態名」です2。「状態名」での表現になっている理由は、個人差が大きいため、基準が個人それぞれになってしまうことが挙げられます。
表13は国際的にコンセンサスが得られた「RomeⅣ」の機能性便秘の定義です。排便間隔に関しては週に3回未満とありますが、主に便の性状や自覚症状が基準となっています。
表1 機能性便秘の診断基準

このように、ガイドラインの定義には日数に関する明確な表現は含まれていません。3日間以上排便がなくても、定期的に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出すれば、便秘とは該当しないということにもなります。 排便の頻度には個人差があるため、排便日数間隔だけでは便秘か否か判断できないことを認識する必要があります。
便秘の個別対応の方法は?
前述のとおり、便秘とは個人差が基準となる状態であり、個別対応が原則といっても過言ではないでしょう。そのため、便秘か否かを簡単には判断しにくいのです。
しかしながら、医療者はこれまでの経験をもとに安易に判断してしまうことがあります。例えば、3日間排便がなかったから便秘と判断し、下剤を投与して対処するなどです。このように、判断基準が患者さんではなく、医療者の経験となってしまうことは絶対に避けなければいけません。
便秘でおさえなくてはいけないポイントを、小林3は以下のように挙げています。ここではこのポイントに沿って解説します。
①便秘の陰に隠れた重大疾患の徴候を見逃さない
②排便回数の減少は便秘の一要素でしかない
③慢性便秘では「排便日誌」が役に立つ
④機能性便秘はタイプを分けて治療する
⑤刺激性下剤の乱用からの離脱を図る
①便秘の陰に隠れた重大疾患の徴候を見逃さない
『慢性便秘症診療ガイドライン2017』では、慢性便秘(症)を原因や症状によって分類しています(表2)4。そのなかには、悪性疾患や指定難病など、さまざまな疾患が便秘の原因として挙げられています。
また、既往疾患の治療に使用している薬剤による副作用もあります。代表的なものとして抗うつ薬や向精神薬、麻酔系鎮痛薬などがあります。
まずは、便秘が認められた場合、便秘薬の投与を第1選択する前に、その原因を突き止め、その原因に対応することが望ましいです。
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