溢流性便失禁、漏出性便失禁など、さまざまな便失禁の原因を紹介。直腸肛門反射の生理作用を利用した便失禁への対策についても看護師に向けて解説しています。
●便失禁には肛門括約筋の衰え以外にもさまざまな原因がある。
●便失禁をもたらす便秘を排除することも考えよう。
便失禁の原因とは?
便失禁を主訴に来院される患者さんの多くは、「お尻のしまりが悪くなった」と言われます。しかし、失禁の原因は、必ずしも肛門括約筋機能の低下によるものだけではなく、他の理由であることも多いです。主な原因は下記の通りです1。
肛門括約筋不全
・突発性…加齢
・外傷性…分娩、肛門手術、直腸がん手術、肛門外傷
・神経原性…陰部神経障害、自律神経障害、脊髄障害
直腸肛門疾患
・先天性…鎖肛術後、ヒルシュスプルング病術後など
・後天性…直腸脱、直腸瘤、直腸重積など
便意感覚異常
多発性硬化症、認知症、脳梗塞、糖尿病など
直腸リザーバー機能不全
直腸手術、潰瘍性大腸炎手術、放射線照射、炎症性腸疾患
便通異常
過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胆嚢摘出術後、コラーゲン性腸炎、下痢症など
溢流性便失禁
糞便栓塞、小児遺糞症
溢流性便失禁とは?
臨床現場で注意したほうがよい状態として、直腸に便がたまり、その脇から液状便が漏れる溢流性(いつりゅうせい)便失禁があります。便が腸管内に停滞することで、直腸に便塊が形成され、肛門に栓がされた状態となります。
そのため、わずかな隙間から液状便(水様便や軟便)のみが排泄され、失禁状態となります。このときの肛門は、直腸肛門反射によって肛門管は開大した状態で、肛門括約筋機能とは関係なくみられる現象です(図1)2。
図1 溢流性便失禁のしくみ

漏出性便失禁とは?
また、直腸に液状便(泥状便)が貯留しても失禁するような場合があります。このような失禁は漏出性便失禁に分類され、直腸の適応性弛緩が生じ、直腸肛門反射が起こりにくく、肛門管が閉まっています。
失禁は便が直腸容量を超えることで、漏れている状態となり、起こります(図2)3。つまり、肛門括約筋機能が正常範囲内であっても失禁します。
図2 漏出性便失禁のしくみ

直腸への便貯留は、寝たきりで腹圧をかけにくいこと、経管栄養で便が液状化しやすいことが関連しています。いずれの状態からもわかるように、便失禁を引き起こすきっかけとして便の貯留、つまり便秘が潜んでいることがあります。
便失禁への対策は?
便失禁には便秘が潜んでいるため、便失禁を解決するためには、貯留した便を排除することが優先されます。硬い便が貯留しているときには、摘便として看護技術が提供されます。
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