精神疾患を判断するには、まず身体疾患を除外する必要があります。精神症状による身体疾患を見きわめるポイント、精神症状を引き起こす身体疾患の例を紹介します。
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精神疾患、特にうつ病は身体疾患に多く合併し、うつ病そのものの改善が身体疾患の予後をよくしてくれる可能性が指摘されています1,2。「心身一如(しんしんいちにょ)」とは言いますが、身体疾患の患者さんの精神症状をきちんと把握して対処することが重要です。
でも大事なことは、“精神症状がある=精神疾患”ではないということです。精神疾患と判断する前に、必ず身体疾患を考えてみましょう。
抑うつはがんの脳転移かもしれません。不安は電解質異常かもしれません。身体疾患をまず除外する意識をもつのは、医療者なら誰だって同じ。その目線を大切にしましょう。
身体疾患を疑う12のポイント
あくまでも私見ですが、身体疾患を疑うポイントを紹介しておきます。
~身体疾患を疑う12ヵ条~3-5
- 初回エピソードの精神症状。精神疾患の多くは若年発症であり、中高年であればなおさら身体疾患を疑う。
- 産後。産後は精神疾患が発症しやすいものの、下垂体機能低下なども来たす。
- 身体疾患の併存や薬剤・アルコール・ドラッグなどの使用。
- 神経症状の存在。例えば不随意運動や増悪してくる頭痛、歩行障害など。
- 体重減少や食事の嗜好変化。ビタミンや微量元素の不足を考慮するが、嗜好変化は認知症、特に前頭側頭型認知症やアルツハイマー病のbehavior variantタイプに見られやすい。
- 頭部外傷やコンタクトスポーツの既往。種々の精神症状に関係している。
- ハンチントン舞踏病など遺伝疾患の家族歴。大いに参考になる。
- 意識レベルの変動や幻視。幻視は身体疾患に多く見られる。脳波の律動異常もヒントになる。
- 適切な治療のはずなのに精神症状が改善しない時。安易に“治療抵抗性”としない。
- 認知機能低下。ごくわずかな低下を見落とさない。
- 併存の身体疾患で説明できない血液検査の異常値。
- 因果関係が綺麗過ぎる時。身体疾患による精神症状は環境の揺れに脆くなることを忘れない。
(文献3,4,5を参考に作成)
これらに目を光らせて、眼の前の精神症状が身体疾患っぽいかどうかを考えてみましょう。これを突破しても身体疾患を完全に否定できるわけではなく、折に触れて再確認が必要ではあります。
精神症状を引き起こす身体疾患の例
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