せん妄のメカニズムを知り、効果的な対応・ケアについて学びませんか。症状・原因のアセスメント、薬剤投与、看護ケアの、3つの観点から見ていきます。

【第1回】せん妄を理解するためのポイント①せん妄を「急性脳不全」と捉える

 せん妄は端的に言えば「急性脳不全」と表現できます。あまり使われない「脳不全」という用語ですが、せん妄と密接にかかわっている認知症は「“慢性”脳不全」に該当します。

●せん妄=急性脳不全と考えてみる
●せん妄は、脳不全が起こるほどの重篤な急変・悪化のサイン

【第2回】せん妄を理解するためのポイント②せん妄の診断基準や観察ポイントは曖昧。多職種・家族で評価

 せん妄は主観に頼った診断や評価法に頼らざるを得ないのが難しいところ。多職種・家族で協力して情報を集め、評価することが大切です。

●せん妄は医療機器で測定できず、評価のしかたが主観的
●せん妄を1人で判断・対応できる医療職は、基本的にいない

【第3回】せん妄を理解するためのポイント③メカニズムを知ることで、早期発見・対応が行いやすくなる

 せん妄は、看護ケアで対応できる原因が他の臓器不全と比べて多いのも特徴。メカニズムやリスクを把握し、症状を的確にアセスメントして必要なケアにつなげていきましょう。

●看護師の違和感が、せん妄の早期発見・見落とし回避に重要
●せん妄は、看護師主導のケアで改善が期待できる

【第4回】せん妄の背景因子①神経伝達物質の異常

 せん妄が原因の1つとして、神経伝達物質の異常が考えられます。神経伝達物質の変化・症状と、関連する薬剤・病態についてみていきます。

●せん妄の背景因子①神経伝達物質の異常
アセチルコリン
②ドーパミン、グルタミン酸
GABA
④その他

【第5回】せん妄の背景因子②神経炎症・サイトカイン

 引き続き、せん妄の背景因子を確認します。取り上げるのは神経炎症・サイトカイン。なぜせん妄が発症しやすくなるのか、おさえておきましょう。

【第6回】せん妄の背景因子➂概日リズム障害・メラトニン

 せん妄で典型的なのが、夜間に悪化する「夜間せん妄」。昼夜逆転など、概日リズムと関連しているとされています。

【第7回】せん妄の背景因子④加齢による神経の変性

 高齢もせん妄に関係すると指摘されています。せん妄を誘発しやすくなる、加齢による変化とは?

【第8回】せん妄の背景因子⑤脳血流、血糖、酸素、代謝物異常

 脳血流、血糖、酸素、代謝物異常も、せん妄の背景因子。どのようなせん妄を引き起こしやすいのか、確認します。

【第9回】せん妄のアセスメントのコツ①せん妄のリスクを複数もつ患者に注意する

 まずはせん妄の診断基準をチェック。メカニズムとリスク因子についても知っておくことが、スクリーニングに役立ちます。

●せん妄のアセスメントのコツ①せん妄のリスクを複数もつ患者に注意する
・せん妄の診断基準
・せん妄のサブタイプ
・せん妄のスクリーニングのコツ

【第10回】せん妄のアセスメントのコツ②せん妄症状の有無の変化

 日常の看護の場面でも、患者さんの様子からせん妄の症状の有無を評価できます。気をつけるべきポイントを紹介しています。

1)注意力障害は、視線が合わず、会話が成り立たない
2)意識障害は、起こしてもなかなか覚醒しない
3)見当識障害は、日時や場所が認識できない
4)“アパシー”では、うつでみられる苦痛の訴えがない

【第11回】せん妄のアセスメントのコツ➂せん妄の原因の評価

 せん妄の原因を探るには、発症パターンに注目を。それぞれのパターンによって、手術侵襲、薬剤など想定される原因が変わってきます。

●発症パターンを評価し、原因を想定する

【第12回】せん妄の原因として特に注意したい薬剤

 投与されてあまり期間が経っていない薬剤は、せん妄の原因となっていないか注意。メカニズムやせん妄での特徴を一覧にしています。

●抗コリン、ドーパミン増加、GABAに作用する薬剤はせん妄を引き起こす
●せん妄の原因となる代表的な薬剤
睡眠薬・抗不安薬
抗ヒスタミン薬
抗菌薬
パーキンソン病
ステロイド
オピオイド
過活動膀胱治療薬(抗コリン作用薬)

【第13回】せん妄は、急変のサインやバイタルサイン悪化の指標となる

 「せん妄=急変のサイン」と考えることもできます。関連性の高い病態や、適切な対応について知っておくことが大切です。

【第14回】せん妄の薬物療法①薬物療法の原則

 薬物療法は漫然と使用しないことが重要。紹介している原則に則って行うように行うようにしましょう。

●漸減・中止を視野に、補助的に使用
せん妄の薬物療法のポイント

【第15回】せん妄の薬物療法②幻覚・興奮・妄想に対する薬剤

 薬剤は症状に応じて受容体、半減期、投与経路、禁忌などを考慮して使い分けますが、重複した作用などには注意が必要。各薬剤が関与する神経伝達物質と症状を図で示しました。

●症状に応じて、抗精神病薬や抗うつ薬、睡眠薬を使い分ける
●幻覚・興奮・妄想(ドーパミン、グルタミン酸)に対する薬剤
①抗精神病薬(ドーパミンD2受容体遮断)
②グルタミン酸系に作用する薬剤

【第16回】せん妄の薬物療法➂睡眠障害に対する薬剤

 睡眠障害には、GABAやセロトニン(5-HT)、ヒスタミン、メラトニンに作用し、せん妄を改善する薬剤を選択。また、新規睡眠薬も使用されています。

①ヒスタミン受容体遮断、セロトニン(5-HT)受容体・α2受容体に作用する薬剤
②抗うつ薬
➂新規睡眠薬

【第17回】せん妄の薬物療法④さまざまな状況でのせん妄に対する薬剤選択

 がん終末期、術後といった状況でのせん妄には、どの薬剤を投与すればよいのでしょうか。それぞれのケースについて考えていきます。

1)がん終末期のせん妄
2)術後せん妄
3)集中治療中のせん妄患者を含む鎮静
4)難治性せん妄

【第18回】せん妄へのケア①看護ケアの効果

 看護ケアにより、せん妄を予防し、転倒を軽減することができます。非薬物療法のプログラムを紹介しているので、参考にしてみては。

●看護ケアで、せん妄の発症を防ぎ、転倒を軽減することができる
・非薬物療法のプログラム例

【第19回】せん妄へのケア②せん妄の予防

 せん妄を予防するためには?食事、就寝、起床時間のリズムの維持、皮膚のケアなど、実践したい予防方法を取り上げました。

●せん妄の原因となる睡眠覚醒リズムの障害や、不快な症状を取り除く
1)睡眠・覚醒リズムの障害の予防
2)疼痛と排泄(便秘・尿閉)の不快感の予防
3)かゆみや口腔内、点滴刺入部などの不快感の予防

【第20回】せん妄へのケア➂注意力障害へのケア

 インシデント・アクシデントが起こりやすくなる注意力障害。どのようにケアを行えばよいのか、具体的に解説しています。

●注意力障害で生じること
●ケアのしかた

【第21回】せん妄へのケア④見当識障害へのケア

 見当識障害への対策として知られているのがReality orientation(現実見当識訓練)。患者さんの状態に応じて、効果的なケアを考えていきましょう。

●見当識障害で生じること
●ケアのしかた
・Reality orientationを踏まえたケア
・周囲の環境の調整

【第22回】せん妄へのケア⑤妄想などの精神症状へのケア

 せん妄でよくみられる妄想。興奮を伴うと、妄想の修正・説得が難しい場合もあります。そんなとき、行うべきケアのしかたとは?

●精神症状で生じること
●ケアのしかた

【最終回】せん妄へのケア⑥患者・家族への教育

 せん妄による不可思議な言動や幻覚・妄想は、家族やせん妄から回復した患者さんにとって心理的な苦痛に。患者さんや家族に理解してもらうための説明が大事です。

●せん妄が心理的な問題ではないことを、患者・家族に理解してもらう
●家族に説明しておくとよいこと
1)せん妄になりやすい要因(主なリスク)
2)せん妄の主な症状(わかりやすく伝える)
3)せん妄の原因・経過
4)せん妄予防として家族ができること(指導する)